【ベテラン小学校講師が教える裏技】子どものやる気の出させ方、ほめ方、叱り方

小学生の我が子に「なぜ宿題をしないといけないの?」と聞かれたら、親として・大人として、子どもにどう答えますか? 小学校の6年間は、子どもの成長が著しい時期。小学生の子育ては、保護者の頭を悩ませるものです。そこで今回は、子どもをほめる・叱る方法や、子どもの話を聞く・書く力をつけさせるやり方、子どもを落ち着かせる・やる気にさせるテクニックや、家庭学習時の教え方など、小学生の子育てに役立つ小学校の教育現場の裏技を大公開! 教えて頂くのは、小学校教師として30年以上勤務され、保護者の育児相談に乗る『親塾』を主宰する多賀一郎先生です。小学生の子どもを持つ親の不安や悩みに対して、具体的な解決方法を伝授していただきました。

先生が小学校でやっている教育現場の裏技を大公開!

小学校の先生方は、子どもをほめたり叱ったり、やる気を出させたりするために、どのような裏技を持っていらっしゃるのでしょうか?多賀一郎先生に教えていただきました。

子どものほめ方

子どもをほめる父親
子どもをほめるとき、“認める言葉”が子どものやる気を引き起こす

ほめるときは適度&TPOが不可欠

子どもにはほめてほしい時期があります。そのタイミングがぴったりいくと、ほめたことが生きてきます。子どもは、自分で充実感を得ているときにほめられても、心には響きません。しかし、自分ではがんばったけれど、ちょっと不安なときがあります。そんなときは「あなたのがんばりはすごかったね。誇りに思うわ」などと言えば、ぐっと子どもの力になります。

しかしながら、なんでもほめれば良いというものではありません。大したことではないことをほめられると、子どもは逆に気分を悪くすることも。中学年以上の子どもにとって、おおげさにほめられることはうれしいことではありません。適度なほめ方、ほめ方のTPOがあると心得てください。

ほめることよりも笑顔が大事

ほめるよりも大事なことがあります。それは”笑顔”です。子どもたちは、ほめられることよりも保護者の笑顔が大きなモチベーションになります。「こうしたことが、お母さんの笑顔につながる」と思うと、がんばれる子どもは多いのです。決して、怖い顔で「〜しなさい」と言うのは避けるようにしましょう。逆効果です。

“認める言葉”がやる気を引き出す

子どもたちは認めてもらいたくて仕方がありません。例えば、こんな一言を遣ってみてください。子どものやる気をなお一層引き起こします。

✔「いいね」

例)「その絵、なかなかいいね」、「いいね、そのやり方」、「そんなおもしろいことを考えたんだね」など。

✔「なるほど」

例)「うんうん、なるほど。あなたの言う通りだね」、「なるほどなあ、そこまで考えていたんだ」など。

✔「努力しているよね」

努力は報いられないこともあります。だからこそ、努力しているという事実を認めてあげることが大事です。

どんなときに子どもをほめるか

ほめるときは、自分で考えたり、自分から何かをしたときにほめるようにします。そうしないと、ほめられて当たり前という感覚に陥りますし、少々ほめられてもうれしくなくなります。また、ほめないとしなくなるということもあるので注意してください。

子どもをほめる中身が大事

結果ばかりほめていると、結果が伴わなかったときにほめることができません。がんばったけれどできなかったということは、人生にはたくさんあります。ですが、がんばったという努力の事実は認められます。そこをほめてあげればいいのです。結果ではなく、経過や努力をほめるようにしましょう。

子どもの叱り方

叱るときは全力で

少しずつ小さな「叱り」を繰り返すことを「小言」と言います。小言は子どもにはほとんど響きません。子どもにとってただうっといしいだけなのです。力を入れて思いっきり叱ると、本気度も伝わります。しかも疲れるので、何度も繰り返しにくいのもいいところです。そして、叱った後はすっきりさせて後にひきづらないようにしてください。注意したいのは、全力の叱りをたくさん繰り返すこと。これをやってしまうとDVになってしまいます。全力で叱るのは、1週間に1回までにしましょう。

叱るときの言葉

子どもを叱るときは自分主語で叱るようにしてください。「あなたが悪いんでしょ」ではなく、「私はそういうことは嫌いなんだ」、「私はそういうことを見ると嫌な気持ちになる」などのように叱ることで、子どもの人格を否定しないですみます。そうすることで子どもは傷つきません。
また、叱りっぱなしではいけません。叱ったあとは、子どもを嫌っているわけではないこともちゃんと伝えます。「あなたが大事だから叱るんだよ」、「あなたを大事にしているよ」と、心があたたまる言葉がけをしてあげるようにしましょう。
また、叱るときは自分自身が普段どういう姿を子どもに見せているかを踏まえておきましょう。親ができていないことを自分だけ叱られても、子どもは納得いきません。叱る前に自分のことを振り返ることも大切です。

子どもの話の聞き方

親と対話する小学生
子どもの話は丸ごと全部聞くようにして

話は丸ごと全部聞く

子どもの思いを全部聞いてあげていますか。自分の気になるところだけを切り取って聞いていませんか。子どもの話は丸ごと全部聞くようにしてください。そうすることにより、子どもは安心します。だいたい、子どもの悩みごとの半分以上は、聞いてもらえるだけでほぼ解決しまうことがよくあります。

子どもは忙しいときに限っていろいろ話してきます。つい、「あとでね」と言ってしまったときは、「さっきは何の話だったの? ごめんね、聞けなくて」と言い、子どもの思いを受け止めてあげてください。

話の聞き方

子どもの話を聞くことは、子どもの心を受け止めることです。それには聞き方が大事になってきます。あまり問い詰めるような聞き方はよくありません。傾聴三動作を参考にしてください。

✔傾聴三動作とは?

・うなずきながら聞く
・相槌を打ちながら聞く
・ほめたり認めたりしながら聞く

こういう聞き方をしていると、子どもの話は聞きやすくなります。また、聞くときは笑顔を意識してください。そうすることで、子どもが話しやすくなります。

思春期の子どもの話の聞き方

思春期になってくると学校のことをあまり話さなくなります。このときも傾聴三動作と笑顔を心がけると、しっかり聞くことができます。また、あらたまって聞くのではなく、横から独り言のように、また用事をしながらたずねると答えてくれます。本来は何かしながら聞くのはよくないことですが、思春期にはその方が聞きやすいでしょう。

 

子どもの落ち着かせ方

子どもの視野に入って動いてみせると静かになる

騒ぐ子どもを落ち着かせるときに、大声をだして静まらせることはよくあります。しかし、何度も大声を出してしまうと効果はありません。では、大声のほかに、どんな手立てがあるのでしょうか。
例えば、英語を使うのも一つです。「シャラップ!」、「フリーズ!」などの言葉を使うと、子どもたちはきょとんとします。また、一番目立つ子どもの肩に手をおいて、「ちょっと静かにしようか」と言うと、不思議なほど子どもたちがおとなしくなることがあります。
このように、子どもたちに聞こえるように、できれば子どもたちの視野に入って動いてみせるとよいでしょう。

子どもにやる気を出させる方法

「内発的動機づけ」でやる気を促す

子ども自身で「さあ、やるぞ」という気持ちにさせるには「内発的動機づけ」をさせましょう。例えば、「ぼくはこうなりたい。だから勉強をするぞ!」という目標を立てれば、内発的動機づけができたということになります。子どもにやる気が出かけたときに気をつけたいのが、親が手出しをすることです。手取り足取りしないほうが子どもは伸びます。
また、自分がコントロールしているんだという意識を持つことが意欲に通じます。内発的動機であれば、次のモチベーションにも必ずつながりますし、自己選択できるということが、プライドや自信を生みます。

自らやる気を出させるには

気をつけたいのは「外発的動機づけ」です。自分から進んで物事をするように、親が外部から促した瞬間、外発的動機づけになってしまいます。そうならないためには、「内容関与的動機づけ」という方法を試してみてください。
「内容関与的動機づけ」とは、なぜそうすることが必要なのかということに納得して活動することです。「この内容だからこそ、やる気になる!」、それが内容関与的動機づけになります。

子どものやる気を奪う言葉、やる気にさせる言葉があります。「〜しなさい」という命令口調は、子どものやる気をなくします。反対に、いいところをモデリングして「こうしたらどうかな」と言うようにしましょう。子どものやる気が違ってきますよ。

家庭学習時の教え方

宿題をする理由を聞かれたら?

子どもは「宿題をなぜしないといけないの」と聞いてきます。そんなときは、「世の中に出たらね、したくなくてもしなければならないことがたくさんあるんだよ。そのときにね、嫌なんだけど宿題をしていた経験があると、がまんしてがんばれるんだ」などと言って、子どもたちを理屈で説得して、納得させてください。
大リーグのイチロー選手は、宿題をすることについてこんな発言をしています。
「なんでぼくが宿題をやることを重要だと思っているか。それは大人になると、必ず上司という人が現れて、何かをやれ、と言われるときが来ると思うのです」
野球好きの子どもになら、こういう言い方でもいいですね。

家庭学習は時間を区切ってユニット型学習に

効果的に学習させるには、長時間同じことをさせるのは避けたほうがよいでしょう。それぞれの課題を15分程度の時間で区切り、いろいろな学習を組み入れて行うようにします。
例えば、計算のトレーニングを10分、メインの宿題に20分、漢字の練習に10分、というようにします。こういうユニット型の学習が現代の子どもには合っているようです。頭を常にリフレッシュさせて学習に取り組めるので、効果が倍増します。

家庭学習が早めに終わったら?

つい、「これもやってみたら」と家庭学習の時間を増やしたくなるのが親の心情。しかし、これは絶対にやめたほうがいいです。子どもは、がんばって早く終わらせたら自分の時間が増えると思っています。そのためにピッチを上げます。それを、早くできたら勉強が増えるとなると、モチベーションがまったく上がりません。宿題が終わったらフリーにしていいと言うことが、子どもの生活時間もつくりますし、ストレスも減ります。

参考書籍「小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本」

小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本
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「小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本」について

30年以上の現場経験を経て、全国で教員育成&保護者相談にあたる著者が、現代の小学生保護者が幸せな子育てをするために必要な知恵を伝授。読めば読むほど、子育ては「学校と一緒にできる」ということに気がつき、子育てに閉塞感を感じている人はそこから解放されていきます。新一年生の保護者はもちろん、どの学年であっても、いま心の中にある不安を解消する手立てが見つかる本です。

「小学生保護者の心得 学校と一緒に安心して子どもを育てる本」著者・多賀一郎プロフィール

多賀一郎(たが・いちろう)
追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校で指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。
多賀マークの教室日記

 

文・構成/HugKum編集部

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