ほめず叱らず“勇気づけ”を【アドラー式子育て術「パセージ」】に学ぶ

どんな親でも、子どもの幸せを願っています。しかし、どのような育児をすればよいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、今話題となっている「アドラー心理学」の考え方に基づいた育児プログラム「パセージ」から、子どもをしかったり、ほめたりしない「勇気づけ」という方法をご紹介します。

「勇気づけ」とはどういうものなのか、3歳からを目安にした子どもの発達段階に応じた「勇気づけ」について、日本アドラー心理学会カウンセラーの清野雅子さんと岡山恵実さんに教えて頂きました。「勇気づけ」を、ぜひ、ご家庭で実践してみてください。

勇気づけとは?│アドラー式子育て術「パセージ」

家族は仲間
勇気づけとは?│褒めない・叱らない子育てメソッド、アドラー式子育て術「パセージ」

「勇気づけ」を始めましょう

「パセージ」では、「心理面」「行動面」の2種類の子育ての目標をもって子育てをします。この2種類の目標に向かって援助することを、「アドラー心理学」では「勇気づけ」といいます。

✔勇気づけとは?

まず、子どもが自立するのを援助することから考えてみましょう。自立するためには、子どもが「自分には能力がある」と感じていないといけません。そのために、親は工夫しなければいけないのです。工夫とは、すなわち子どもへの関わり方です。また、子どもが自立するためには、自分で問題を解決した経験をたくさんもっているほうがいいでしょう。「自分でやって、自分でできた」という経験の積み重ねで、子どもは「自分には能力がある」と信じられるようになります。これも「勇気づけ」です。

✔くつろげる家庭を作るのも「勇気づけ」

そして、社会と調和して生きられるようになるためには、人を信じられる心が育まれていなければなりません。子どもが人生で最初に出会う人=親を信じられないと、他人を信じるのも難しくなります。そのためにはまず、親子関係がよくないといけません。

親が子どもの欠点ばかり探して、叱ったり罰したりしていると、親子関係が悪くなり、子どもが親のことを信じなくなります。社会と調和して生きるためには、「みんなが仲間」と思える心が育ってほしいのです。子どもが「家族はみんな仲間だ」と感じることがそのための土台です。家族はみんな自分の仲間だと思える、くつろげる家庭を作る。それもまた、「勇気づけ」なのです。

「勇気くじき」をしていませんか?

たとえば、こんな場面で考えてみましょう。学校から帰ってきた子どもが、消しゴムを忘れて友だちに借りたことをお母さんに話したところ、お母さんの対応は、このようなものでした。

A. 「なんで、ちゃんと前の晩に準備しておかないの。忘れ物ばっかりしてるとみんなに嫌われるわよ」
B. 「あら、そうだったんだ。優しいお友だちね。忘れ物をしないようにするにはどうしたらいいかしら」

Aは、つい感情的になってしまったようです。これでは子どもは「自分は能力がある」「人々は自分の仲間だ」と感じられません。Bの対応はどうでしょう?「学校へ持っていくものをしっかり確認しよう」「今度友だちが困っているときはお返しがしたい」と考えるようになるかもしれません。

いずれも、行動面の目標「自立する」「社会と調和して暮らせる」と、心理面の目標「私は能力がある」「人々は私の仲間だ」に向けての関わりができているように感じます。

Aのような「勇気づけ」に反する関わりを「勇気くじき」と言います。あなたは、今までお子さんに「勇気くじき」をしたことがありませんでしたか? 親が子どものためと思って関わっても、親の対応によって勇気づけられたか、勇気をくじかれたかは、子どもの側が決めることです。勇気をくじかれると、自分自身について「自分のことが嫌い・自分はダメな人間だ・ひとりぼっち」と感じるようになり、周囲の人々に対しても「信頼できない・自分を攻撃する敵だ・自分のことをわかってくれない」と考えるようになります。

ところが、勇気づけられると、「自分のことが好き・自分で問題を解決できる・人の役に立てる」と感じ、周囲の人々に対しては「自分のことをわかってくれている・信頼できる・協力し合う仲間」と感じられるようになるのです。

子どもの発達段階に応じた勇気づけ│アドラー式子育て術「パセージ」

子どもの発達に応じた「勇気づけ」を

アドラー心理学では、子どもも大人も対等だと考えます。よって、子どもが何歳であっても考え方は同じです。子育ての目標を達成していきやすいように発達の段階に応じた「勇気づけ」を知っておきましょう。

年齢はあくまで目安です。大切なのは目の前の子どもの発達に応じた「勇気づけ」をすることです。

3歳まで│二語文が話せるようになるまで

二語文とは意味のある単語が2つある文で、「おもちゃ貸して」「いちご食べる」といったものです。子どもによってかなり違いますが、およそ二語文が話せるようになるのが3歳です。この時期の乳幼児は、大人がいろいろ話してあげるとちゃんとわかります。とても興味をもって聞いています。ただ、言葉に出して言えないだけなのです。そして、長い間覚えておくことができず、何度でも忘れてしまいます。

覚えておいてほしいことを忘れても、怒らないで、何回でも教えてあげるようにしましょう。たくさん話しかけられて育った子どもは賢くなります。また、スキンシップも心がけてください。

3歳から│二語文が話せるようになったら

おおよそ3歳からは、言葉も通じるようになり、言葉で表現できるようになり、記憶する力ができてきます。しかし、予測する力がまだないので、親が教えてあげなければいけません。このときも怒らないで教えてあげましょう。彼らはおとぎ話のような世界に住んでいて、大人とは違う論理で考えています。この時期も、たくさん話しかけ、遊んであげてください。

ただし、先回りして、子どもが頼んでいないことを何でもやってあげるのはやめましょう。何もかもやってあげていると、周囲の人が推しはかってくれて、自分の代わりに解決してくれて当然と思うようになってしまうからです。

5歳から小学校1年生│友だちができたら

大人が手を貸さないでも自分たちだけで遊べるようになるのが、5歳くらいから小学校1年生くらいです。宿題をする、お風呂に入る、決まった時間に寝るなどは、どんどん子どもに任せていきましょう。

ただ、この時期も、予測する力が十分ではありません。「宿題をやっていないと、どんなことが起こるかな?」と聞くと、「学校で叱られる」とか「宿題がたまる」などと言って考え始めるでしょう。予測を手伝うだけで、子どもは十分学んでいきます。

10歳から│親密な友人ができたら

だいたい10歳くらいになると、いつも一緒にいて、同じ遊びやテーマをもっている特定の友人ができてきます。多くの時間をともに過ごして、お互いの考えや気持ちを分かち合ったり、協力し合いながら、相手のことを自分のことのように大切に感じる親密性を体験します。

この時期は、人間の発達の中でとても大事なので、友人との時間を尊重してあげてください。この時期になると、彼らに足りないのは経験と知識だけです。経験と知識は自分の力で獲得していく以外の方法がないのです。大人の役割は、子どもたちが自分で学ぶのを邪魔しないことだけです。

参考書籍『ほめない、しからない、勇気づける 3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」』

書影
ほめない、しからない、勇気づける 3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」

 

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『ほめない、しからない、勇気づける 3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」』について

『嫌われる勇気』の大ヒットで空前の大ブームとなったアドラー心理学は、元来「教育と子育て」に根ざしたものです。本書は、30年以上支持されてきた、アドラーの考え方に基づいた子育て学習プログラム「パセージ」を紹介する初めての書籍。「パセージ」を学ぶお母さんのいる家庭をモデルにして、日々の子育てのお悩みエピソードをマンガで提示し、アドラーの思想に則った解決策を学びます。自立し、社会と調和して生きていく大人に育てるための、21世紀型「問題解決能力」を育む子育てメソッドです。

著者・清野雅子、岡山恵実プロフィール

清野雅子(せいの・まさこ)

日本アドラー心理学会カウンセラー。野田俊作氏による育児勉強会を経て、草創期から『パセージ』を学ぶ。家族コンサルタントとして「パセージ」のリーダーを務める。2女の母。

岡山恵実(おかやま・えみ)

日本アドラー心理学会カウンセラー。家族コンサルタントとして「パセージ」のリーダーを務める。自助的学習グループ「アドラー銀杏の会」主宰。1女の母。

アドラー銀杏の会

 

文・構成/HugKum編集部

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