学校司書に聞いた!子供が本好きになる本選びの極意とおすすめ35冊

楽しい! おもしろい! もっと読みたい!本好きになる1冊とは?

本好きな子にするにはどうすればいい? 子ども達と本をつなぐプロの方々に、 1年生の気持ちに寄り添う本選びについて聞きました。 何度も読み返したくなる「宝物」のような1冊に、きっと出合えることでしょう。

だから 本は すばらしい!

絵本作家 かこさとし

本は いっしょに どきどきしたり笑ったり なかよしをます たのしい ともだち。
本は さびしさをなぐさめ つらい心を  いたわってくれる やさしい お母さん。
本は 力のつく栄養と おいしい食物を 上手に つくってくれる コックさん。
本は 昔や 外国の めずらしいことを おしえてくれる すてきな先生。
本は 正しい おこないを はげまし 人の道を 示してくれる しっかり父さん。

 

本を通じて、アジアの子どもに教育支援を行っている シャンティ国際ボランティア会HPより

かこさとしプロフィール
絵本作家、児童文化研究者。1926年福井県生まれ。絵本に『からすのパンやさん』 『だるまちゃんとてんぐちゃん』ほか、多数。

 

子どもの本専門店・ブックハウス神保町にて。
撮影/タナカヨシトモ モデル/もとくらあかり、渡辺 楓 ヘアメイク/岡田美砂

学校司書さんに聞きました!子どもと本のつなぎ方

東京・荒川区では区をあげて学校図書館活用に取り組んでいます。
子どもと本の距離を縮めるには? 同区瑞光小学校の学校司書(小学校の図書館に常駐)、布川さんにお話を聞きました。

親子で一緒に本を楽しむ 「家読(うちどく)」を大切に

瑞光小学校の図書館は新しい本を揃えたり、本棚を低くしたりして、この数年で明るく入りやすい雰囲気に変わりました。学校司書が常駐していて、ほぼ毎日開館していることもあってか、児童は1年に1人あたり平均113冊の本を読むようになりました(2014年度)。
ご家庭では、親子一緒に本を読む時間を持つことがおすすめですね(本校では家読(うちどく)と呼んでいます)。親子で同じ本を読んでも、違う本を読んでもいいのです。読んだ本の感想を話し合ったりするのもいいですね。本を通して家族のコミュニケーションを広げ、会話の糸口になればいいなと思っています。
本を読む習慣があまりない場合は、子どもがどんな本に興味を持つのか、まず子ども本人に本を選ばせるところから始めてみましょう。親の読ませたいものと違っていても、本来読書は楽しい体験なので、「一緒に読もうよ」という姿勢を大事にしてください。読んでほしい本がある場合は、「この本はウサギが◯◯してね…おもしろいよ」と途中までお話を聞かせると、子どもは素直ですから、きっと「読んでみたい!」となりますよ。
お子さんと一緒に公立図書館を活用するのもおすすめです。多くの図書館で蔵書を検索、取り寄せができ、良書コーナーやリストもあるので、興味を持ったものはどんどん借りてみましょう。そのなかで何度もくり返し読みたがる本があれば、「愛読書」として買ってあげるといいでしょう。
1年生の子には、1冊読み切ったという達成感が大事です。はじめは字の少ない絵本でも、まったくかまいません。読み終えたらほめてあげ、感想を聞いたりして、一緒に本を楽しんであげてください。好きな1冊を見つけた子は、「もっと読んでみよう」と思うようになりますよ。

 

布川さんおすすめ! 小学生に人気の本

『ぐりとぐら』

なかがわりえこ/作 おおむらゆりこ/絵(福音館書店)
小学校入学前から親しんでいる絵本だと思うのですが、それでもやっぱり子ども達に人気のシリーズです。

『ありがとう ともだち』

内田麟太郎/作 降矢なな/絵(偕成社)
キツネとオオカミの優しさに満ちた友情を描いたシリーズの1冊。小学生でも友達関係は関心事のようです。

『おさるのジョージ  ハロウィーン・パーティーにいく』


M&H.A.レイ/作 福本友美子/訳(岩波書店)
知りたがりのこざるのジョージがパーティーにお出かけ。読んでいてドキドキワクワクすると評判です。

『そらまめくんのあたらしいベッド』

なかやみわ/作(小学館)
愛らしいそらまめくんがくり広げるお話に親しみがわくのでしょう。図書館でもよく読まれているシリーズです。

『1ねん1くみ1ばんげんき』

後藤竜二/作 長谷川知子/絵(ポプラ社)
1年生後半になると読めるようになってくる児童書。読み始めるとシリーズを通して読んでみたくなるお話です。

『スミス先生ときょうりゅうの国』

マイケル・ガーランド/作 斉藤 規/訳(新日本出版社)
スミス先生が本を読み聞かせしてくれると、みんながお話の世界へ入っていく…という冒険ストーリーです。

『たんぽぽ』

平山和子/文・絵 北村四郎/監修(福音館書店)
たんぽぽの生態を写実的な絵でとらえた科学絵本。地下深く伸びる根を描いたページには驚きの声が上がります。

『だから!  ねずみくんのチョッキ』

なかえよしを/作 上野 紀子/絵(ポプラ社)
文章量が少ないので、1年生でも無理なく読めます。ほのぼのとした絵の感じが気に入っているようです。

『11ぴきのねこ』

馬場のぼる/作(こぐま社)
11ぴきのねこ達がみんなで、楽しいこと、おもしろいことにまっしぐら。子どもが興味を持つ定番人気の本です。

『ももいろのきりん』

中川李枝子/作 中川宗弥/絵(福音館書店)
文字数が多く感じるかもしれませんが、読んだ子からは「おもしろかった!」という感想が返ってきます。

子どもの本のプロに聞いた「本好きの子」に育てる本選びQ&A

「1年生にちょうどいい本は?」「何度もくり返し楽しめる本は?」読書にまつわる素朴な疑問を、子どもと本をつなぐ「かけはし」でもある、子どもの本の専門店の方々に聞いてみました。とっておきのおすすめ本とともにご紹介します!

Q:集中力がない子でも最後まで読めるおもしろい本、ありますか?

A:短いお話がいくつも載っていて、どこから読んでもいい本を、まずおすすめしています。

ほかに、イラストの多い本や文字のない絵本をおすすめすることもあります。〝読みやすい〟といわれている本を、実際にお子さんが何冊か手に取って、そのなかから選ぶのがいいと思います。

答えてくれたのは…

ブックハウス神保町 荒木洋平さん

東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F TEL 03-3261-5691
営業時間 11:00〜18:30/休日 水曜日(祝日は営業)

『スーホの白い馬』

大塚勇三/再話 赤羽末吉/画(福音館書店)
「教科書に載ってるよね」だけで終わらせず、読んでおきたい名作。悲しくなる描写も、本を読むことで心が豊かになることを知るきっかけに。

『これは のみの ぴこ』

谷川俊太郎/作 和田 誠/絵(サンリード)
文章は言葉の積み重ね、とわかってくると長い文章を読むのも楽しくなってきます。シンプルな言葉と絵の積み上げ話です。音読もおすすめ。

『ふたりはともだち』

アーノルド・ローベル/作 三木 卓/訳(文化出版局)
どこからでも読める短編が5話。「がまくんとかえるくん」シリーズはほかの作品もおすすめ。横組みの本に慣れておくと読書の幅が広がります。

『ジャーニー  女の子とまほうのマーカー』

アーロン・ベッカー/作(講談社)
文字のない絵本です。緻密な絵を見ながら、頭の中で物語を完成させていきます。次を想像しながらページをめくる楽しさに読書の醍醐味が。

『ふじさんとおひさま』

たにかわしゅんたろう/詩 さのようこ/絵(童話屋)
すべてひらがな、わずか数行の詩でも、いろいろなことを考えさせられます。選び抜かれた言葉の響きも楽しみながら読むといいでしょう。

『ルルとララのカップケーキ』

あんびるやすこ/作(岩崎書店)
すべてのページがイラスト入りで、初めての読み物がおすすめ。火や包丁を使わないお菓子のつくり方が、きれいなイラストで紹介されています。

Q:子どもが何度も読み返す本を買ってあげたいのですが

A:おうちの方も読んで楽しめたものを選んでみてはいかがでしょうか。

本を手にするきっかけとして、「今の季節に読んでみて」とおすすめの本を選びました。子どもの本には何歳で読んでも楽しめる魅力があります。大好きなお母さん、お父さんから「おもしろいよ!」と手渡されたら、それだけで特別な1冊になりますよ。

答えてくれたのは…

クレヨンハウス東京 大井五月さん


東京都港区北青山3-8-15 TEL 03-3406-6492 営業時間 11:00〜19:00(土日祝は10:30~)
http://www.crayonhouse.co.jp/

『だいじょうぶだいじょうぶ』

いとうひろし/作・絵(講談社)
読み終わると、やさしい気持ちでいっぱいになり、うれしいような少し切ないような気分になる。いつ読んでも新鮮な気持ちで出合える本です。

『どんぐりと山猫』

宮沢賢治/作 田島征三/絵(ミキハウス)
一郎のもとに届いた「めんどうな裁判」への招待状。どのどんぐりがいちばんえらいか、という裁判。不思議な気分でクスッと笑える名作。

『ふくろうくん』

アーノルド・ローベル/作 三木 卓/訳(文化出版局)
寒い季節になると会いたくなる、ふくろうくんのお話が5話入っています。登場人物(?)の魅力もまた、その本の魅力のひとつですね。

『かぼちゃスープ』

ヘレン・クーパー/作 せなあいこ/訳(アスラン書房)
かぼちゃスープのつくり方をめぐって、ネコとリスとアヒルの楽しいやりとりが始まります。かぼちゃスープをつくってみたくなる絵本です。

『わにのニニくんのゆめ』

角野栄子/文 にしかわおさむ/絵(クレヨンハウス)
絵本から読み物へつなぐのにぴったりの「アイウエ動物園」シリーズ。こんな動物園に行きたい! と思う、すてきな園長さんと動物達のお話。

『キュッパのはくぶつかん』

オーシル・カンスタ・ヨンセン/作 ひだにれいこ/訳(福音館書店)
森で拾ったものを分類・整理して自分の博物館をつくっちゃうお話。秋の道ばたや公園で木の葉や実や石を拾って、やってみるといいですね。

Q:寝る前の読み聞かせで、1年生にちょうどいい絵本を教えて

A:そっと耳を傾けて、じっとお話の行く先を考えられるようなものをおすすめしたいと思います。

寝る前なので、部屋は薄暗くお布団の中なのでしょうか? 小さな頃から大好きな本をくり返し読むのもいいと思います。お子さんが安心して夢のなかに入っていけるといいですね。

答えてくれたのは…

子どもの本専門店 メリーゴーランド京都 鈴木潤さん


京都府京都市下京区河原町通 四条下ル市之町251-2寿ビルディング5F TEL 075-352-5408
営業時間 11:00〜19:00/休日 木曜日
https://www.mgr-kyoto2007.com/

『つまさきさん、おやすみ!』

バーバラ・ボットナー/文 マギー・スミス/絵 ふしみみさを/訳(光村教育図書)
1日の出来事をゆっくりと思い出しながら、夢のなかにそっといざなってくれる。1日の終わりにぴったりな1冊です。

『おやすみなさい フランシス』

ラッセル・ホーバン/文 ガース・ウイリアムズ/絵  まつおかきょうこ/訳(福音館書店)
子どもの頃に感じた、眠る前の少しの不安や寂しさを覚えていますか?きっとフランシスを抱きしめたくなりますよ。

『月夜の みみずく』

ヨーレン/絵 ショーエンヘール/絵 工藤直子/訳(偕成社)
冬の夜だけがもつ、神秘的な美しさに満ちあふれた時間があります。女の子が経験した初めての特別な夜の物語です。

『はろるどとむらさきのくれよん』

クロケット・ジョンソン/作 岸田衿子/訳(文化出版局)
はろるどは描けばなんでも本物になる「ふしぎなクレヨン」を持っています。さあ、クレヨンと一緒に冒険を楽しみましょう。

『おはなしトンネル』

中野真典/作(イースト・プレス)
雨の日、ひとりぼっちの帰り道。男の子がトンネルで見たものは? 心ゆくまで想像を楽しめるのも子どもの特権ですよね。

『とき』

谷川俊太郎/文 太田大八/絵(福音館書店)
子どもにとって「時間」はとても不思議なもの。昔むかしから今までを、子どもにもわかる絵と言葉で語る名作です。

Q:小学生に買ってあげるなら、絵本より読み物がいいのでしょうか?

A:〝1年生になったんだから絵本は卒業〟というのはもったいないですね。

本好きな子は、年齢に関係なく、字の多い読み物でもどんどん読んでほしいと思いますが、〝1年生になったんだから絵本は卒業〟というのはもったいないですね。1年生になって経験が増えることで、絵本の読み方、見え方も変わってきます。また、ママやパパに読み聞かせしてもらう〝絵本の時間〟は、ひとり読みの読書とは別物です。親子で一緒に読む絵本タイムを続けてあげれば、本の楽しさがわかり、自然と本好きの子になっていくでしょう。

答えてくれたのは…

絵本ためしよみサイト 絵本ナビ 編集長 磯崎園子さん

http://www.ehonnavi.net/

 

『ともだち』


谷川俊太郎/文 和田 誠/絵(玉川大学出版部)
物語ではないですが、小学生の気持ちに寄り添う内容で、「友達ってなんだろう」「自分ってどうだっけ」と考える機会を与えてくれます。

『としょかんねずみ』

ダニエル・カーク/作 わたなべてつた/訳(瑞雲舎)
図書館にすむネズミのサムは本が大好き。自分で書いた本が子ども達に人気になって……。本好きの子の気持ちを代弁するようなお話です。

『ぼくのかえりみち』

ひがしちから/作(BL出版)
小学校からの帰り道。横断歩道は白いところを踏んで渡る、とか、だれもが一度は経験のある心象風景が絵本になっていて共感できます。

『3びきのかわいいオオカミ』

ユージーン・トリビザス/文 ヘレン・オクセンバリー/絵 こだまともこ/訳(冨山房)
小学校の読み聞かせ会で、子ども達に大人気の絵本。「3匹のこぶた」を読んだことがあるからこそ、パロディーのおもしろさがウケるんですね。

『おはなしきょうしつ』

さいとうしのぶ/作・絵(PHP研究所)
1話読み切りのおもしろいお話が、カラフルな絵柄とともに集められた短編集。読み聞かせからひとり読みへの、まさに橋渡し的な児童書です。

『おこだでませんように』

くすのきしげのり/作 石井聖岳/絵(小学館)
小1くらいの男の子の気持ちに寄り添った感動作。子どもが共感できるだけでなく、男の子のママは泣かずにいられない絵本ですよ。

お話を聞いたのは

東京都荒川区立瑞光小学校 学校司書  布川登子さん

「学校司書」って…?
図書資料に関する専門的な知識・経験があり、学校の図書館で司書業務に専任で従事する職員。文科省の平成26年の調査では、学校司書を配置している小学校の割合は54.3%ですが、少しずつ増えてきています。

 

出典/『小学一年生』別冊HugKum 取材・文/村重真紀、田中明子

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