「ゲームに人生を救われた」小幡和輝さんだから伝えられる、ゲームのメリット。親の関わり方の注意点は。

子どもがゲームをしていると、パパママは眉をひそめ、「ゲームばっかりしていないで勉強しなさい!」と言いたくなるかもしれません。これに異を唱えるのが、小幡和輝さんです。小幡さんは小学校2年生から不登校になり、18歳で起業家デビューしました。その間、「ゲームで人生を救われた」と感じ、今はゲームを使った教育事業を手掛ける(株)ゲムトレを運営しています。小幡さんが語る「ゲームは」のあり方とは? 自身が主宰するオンライントークイベント『親子で学ぶゲームとの正しい付き合い方』での意見からひもといてみましょう。

ゲームは悪者!? メリットもデメリットも伝えたい

僕は、ゲームに人生を救われました。小2で不登校になり、そこからゲームにハマり、学校には行かなかったけれど、ゲームのおかげで友達ができ、国語力や計算能力を養い、大会に出て自分に自信が持て、それが仕事につながりました。

しかし、世の中ではゲームは悪者にされがちです。香川県では、令和2年に「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」をさせました。その182では、

 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用(家族との連絡及び学習に必要な検索等を除く。)に当たっては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを目安とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。

と、利用時間まで規定されています。そこで僕は四国新聞に広告を出しました。

「勉強ばかりしてないでゲームしなさい」というキャッチコピーの広告です。ゲームを勉強をはばむ悪者ととらえるのではなく、よい面も伝えていきたいと思うからです。

もちろん、ゲームにはデメリットもあります。メリット、デメリット両方を伝え、今のこの時代の中でのゲームを考えて行きたいと思います。

小説家が認められたように、プロゲーマーもいずれ社会の地位が高くなる!

昔、夏目漱石の時代には、小説家なんて低俗だと言われていました。漱石は勉強もできたしエリートでしたが、小説家になって批判されました。今は小説家は素敵な仕事だし、尊敬される仕事です。

 

漱石の頃の小説家にあたるのが、今のYouTuberやプロゲーマーなのではないでしょうか。僕ら若者が持っているあたりまえの価値観や文化と、大人の価値観や文化に違いがあるんじゃないか、そこを学んでいきたいと思っています。

 

僕が主宰する会社「ゲムトレ」では、ゲームを「楽しく脳を鍛える習い事」と捉え、子ども向けのゲームのオンライン講座を提供しています。この習い事を通して、「ゲームをがんばってよかった」と思える社会を作るのが企業理念です。囲碁とか将棋とかいった昔ながらのゲームと同じにとらえられ社会的に認められるように、努力していきます。

ゲームはeスポーツという「競技」でもある

オンラインゲームは競技として世界じゅうに広がり、「eスポーツ」と言われるようになりました。賞金金額も1億円を超えるような競技も出てきていて、今や娯楽を超えています。男子中学生がなりたい職業の2位が「プロeスポーツプレイヤー」(*)に。eスポーツは憧れでもあります。

eスポーツなんてスポーツじゃない」という大人もいますが、そもそもスポーツとは一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする「身体活動」などの総称。野球とかサッカーなどはフィジカルスポーツ、将棋やチェスはマインドスポーツと呼ばれています。電子機器を使って競技や楽しみを求める「身体活動」はeスポーツというわけです。

*ソニー生命保険「中高生が思い描く将来についての意識調査2021」(ソニー生命)。インターネット上でアンケートを実施、中学生200人、高校生800人が回答。

ゲームは脳を鍛える「習い事」。ひとりでやりすぎないこが大事

でも、ゲームの「悪いやり方」あります。

いつもひとりでゲームばかりをするのは、どうでしょうか。それは野球の素振りのようなものです。友達とゲームをし、切磋琢磨して競い、その中から様々なことを学び取るような遊び方をするのがよいのではないかと思います。

 

ひとりでやり続けるのはゲーム依存症になりやすく、僕自身もあまりよくないと思っています。競技としてのゲームのおもしろさ、トレーニングを積んで勝利を勝ち取っていく達成感を味わってもらえると、お子さんも成長すると思います。

 

親は、「実況をする人の口調」には目を光らせよう

ただ、競技という点でも、課題はあります。

ゲーム実況をするYouTubeなどのチャンネルはとても人気です。チャンネルは無数にあるので、TVのチャンネルのように把握しにくく、パパママが心配するのはよくわかります。

また、強すぎる言葉、「kill」などの使いたくない言葉を頻発する実況者もいます。テレビ番組と違って、お茶の間でお子さんと同じ実況を見られるわけではないので、パパママがやきもきするのは当然だと思います。

 

どんな実況を見ているのか、そのあたりはお子さんと確認するようにしましょう。そして、「こういう実況はいただけない」と思ったら、お子さんと話し合うといいでしょう。YouTube自体を「見ないようにする」というのでは可能性を狭めてしまうので、どういう実況ならいいのかを、大人とお子さんとで話し合うことが大切です。

小学生の間などではHikakinGamesが人気のようです。Hikakinさんは言葉使いなども含め素敵なやり方をしていると僕は思っています。

では、このあとはパパママが気になっていることに答えていきます。

パパママからのQ&A ゲームにまつわるお悩みに答えます!

Qゲームの課金制度に困っています

A強さに直結しない課金かどうかを確認。小学生ならひとりで買わない

いわゆる昔のテレビゲームは、ソフトを買うのに何千円もかかっていました。今のオンラインゲームは、ゲームをすること自体は無料なわけで、そうなるとゲームを作っている会社はまったく利益が出ません。その分を課金で補うわけなので、課金があること自体はしかたがないと思います。

ただ、強くなるための何かを得るために課金をするような仕組みだと、際限なく課金をしなければならなくなります。そういう課金の仕組みになっているゲームは避けましょう。

たとえば、大人気のオンラインゲーム「FORTNITE」(フォートナイト)では、衣装にお金を使うのですが、その衣装は強さに関係していません。パパママと相談しながら、どういう衣装を買うのかを考えていくのもひとつの学びかもしれません。

 

Q仲間内の暴力的な発言が気になります。いじめにつながっていませんか?

Aそういうゲーム仲間からは離れましょう

オンラインゲームは、一緒に遊んでいるメンバーのやり方や口調に影響されます。どういう人と遊ぶかは、とても大事です。口調がひどい、マナーがよくない人とは離れるようにお子さんを促しましょう。

お子さんたちも、顔出し、実名でプレイするようにします。相手も顔出し、実名の人としかプレイしない、と決めましょう。オンライン上でのマナー指導も、大人がチェックすべきだと僕は思います。また、深夜までゲームをするような仲間とは遊ばないほうがいいです。深夜にゲームをするのはなし、昼間やる(朝ゲー)など、ゲームを取り上げるのではなくて、ゲームをプレイするためのルールを親子で確立していくといいでしょう。

 

Qゲームばかりしていると学校の成績が下がりますよね?

A下がります。時間を決めてゲームしましょう

学校の勉強ができるかどうかは勉強時間と比例しやすいので、ゲームばかりしていたら、それは成績が下がります。一般的には2時間くらいが多いようですね。

そして、学校の勉強と同様、ゲームはやれば上手になります。じゃあ、やればやるほどいいのか、ということを考えないといけません。

息抜きとか暇つぶしというのなら、一定時間の範囲内でプレイすべきです。競技としてやるなら、野球の選手が夜遅くまで素振りをするように、ゲームも長時間やることになるでしょう。どんなふうにゲームと向き合うのか、向き合う時間や姿勢をどうしていきたいのか。本人にもよく考えてもらうといいですね。

ゲームを通して自分で考えられるようになる子どもに

一方的に大人が「ダメ」「この時間にやりなさい」等というのではなく、ゲームを通して自分で考えられるようになる子どもになるのがよいですよね。そして自分で決めたルールに自分で従うようになれれば、ゲームによって成長していけるようになります。

 

子どもは周囲の人に影響されやすいものです。だから僕は、きちんとしたゲーム指導者をつけることも大切だと思っています。ゲムトレで指導をお願いしている東 佑丞くんは、18歳ですが、非常にきちんとした言葉で、ゲームの楽しさと技術を伝えています。ビジネス誌「フォーブスジャパン」が日本発「世界を変える30歳未満」の30人のひとりに選出しました。こういう指導者のもとでしっかりとした言葉遣いでゲームを学んでいくことが、将来、ビジネスをする大人になるためにも、必要なことなんじゃないかなと思っています。

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記事監修

小幡和輝|
1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。不登校中のゲームトータルのプレイ時間は30000時間を超える。定時制高校3年で起業。SNSのプロモーション企画やイベント事業などを行う。ダボス会議を運営する世界経済フォーラムより、世界の若手リーダー『GlobalShapers』に選出。201910月より、日本初、ゲームのオンライン家庭教師『ゲムトレ』を立ち上げ代表に。また、不登校の保護者・当人のコミュニティ、#不登校は不幸じゃない 発起人。著書に 『学校は行かなくてもいい 親子で読みたい「正しい不登校のやり方」』『ゲームは人生の役に立つ 生かすも殺すもあなた次第』(以上エッセンシャル出版社)『学校では教えてくれない 稼ぐ力の身につけ方』(小学館)など

 

取材・文/三輪 泉

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