サントリー美術館が子連れ貸切DAYを開催!即満席の人気イベントに潜入してきました!

子どもと一緒にアートを楽しむためのおすすめスポットを訪ね、スペシャリストにお話を伺う連載「子ども×アート」。連載第3回目です。
これからの混沌とした未来を生き抜くためには、暗記型の学習だけでなく、臨機応変に考える力が必要なのでは? 正解のない美術作品と向き合うことは、そんな学習の入口になるかもしれない。そして、もっと気軽に親子で美術館を楽しんで欲しい。そう考えている「子ども×アート」チームが今回取材先に選んだのは、サントリー美術館です。

※上の写真は「武蔵野図屛風」 (六曲一双 江戸時代 17世紀 サントリー美術館)。

東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館

「ふだん、博物館は行くけど美術館に行くことはあまりない」という美結ちゃん親子が、サントリー美術館初体験!

六本木駅から直結の東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館。「生活の中の美」というコンセプトを掲げ、古い時代につくられた絵画、工芸品など、暮らしの中にある美しいものを収集し展示しています。次世代を担う子どもたちに日本の伝統的な美術を知ってもらい、未来を生きる時にいかして欲しいと考え、子ども向けの活動も積極的に展開しています。中学生以下はいつでも入館無料です。

予約殺到の人気イベント「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」に参加してみた。

サントリー美術館では、2014年から子ども向けの特別イベント「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」を開催しています。この日は美術館全体が子ども連れのために貸し切りになり、和やかな雰囲気のなか展示室を回ることができます。競技かるたの体験会など、日本美術初心者でも楽しめる体験型のプログラムが数種類用意され、なかには予約開始から1時間も経たたないうちに、定員に達してしまうプログラムもあるのだとか。そんな人気イベントを小学4年生の美結(みゆ)ちゃん親子と体験しました。

鑑賞するのは大人向けの展覧会

今回参加したのは「わくわくたんけんシート」というワークシートを使って「歌枕 あなたの知らない心の風景」展を自由に鑑賞するプログラムです。

歌枕とは「吉野」といえば「桜」など、和歌の長い歴史のなかで特定のイメージが浸透した地名のこと。そんな歌枕が伝えるイメージを描いた屏風や掛軸、工芸品などが並んでいます。この展覧会は、子ども向けにつくられたものではなく、普段は大勢の大人が見に来ているもの。美結ちゃん親子は、博物館には時々行くそうですが、日本美術の展覧会を鑑賞するのは初めてです。大人でも難しそうに思えるこちらの展示を、美結ちゃんはどのように見るのでしょうか?

入口でワークシートをゲット

入口でワークシートと鉛筆を受け取ります。ワークシートは、掛軸、絵巻物、屏風、櫛、硯箱といった日本美術の作品の形式が紹介され、空欄部分に気に入った展示作品の絵や文様を描きこんでみるものです。

「よくみーるスコープ」を手作り

つぎに色画用紙とマスキングテープで「よくみーるスコープ」を作ります。昨年から好評のアイテムでこれを目に当てて作品を見ると、まわりの情報が遮断されるため、作品がよく見えるのだそう。

いざ展示室へ!

最初は少し緊張した面持ちだった美結ちゃんも、ワークシートのスケッチに集中する過程で、自然と作品に描かれているものに目が行くようになってきました。

住吉蒔絵硯箱(一合 室町時代 15世紀 京都国立博物館)をスケッチする。

ふと、江戸時代の屛風の前で足を止めた美結ちゃん。

「紅葉が描かれているので秋だね、こっちに描かれている季節は春だ。なんで冬がないのだろう?」

と屏風に複数の季節が描かれていることを発見し、大人顔負けの疑問を提示していました。

「一遍上人縁起絵」の絵巻物もじっくり見入っていました。

「このお坊さんだけ着物がほかと違う。傘をさしてもらっているから偉いお坊さんなのかも」

と、解説を読んでいるわけでもないのに、絵から一遍上人を見つけていました。

展覧会に行くと、大人はどうしても解説パネルを読んで理解しなければいけない、順路通りに見なければいけないという先入観に縛られてしまいますが、そんなことを気にせず、美結ちゃんは気の向くままに作品と向き合っていました。

ワークシート完成!

飽きることなく1時間かけてじっくり展覧会を鑑賞しました。

「ほかの方もお子さん連れなので、気兼ねせずおしゃべりできました。普段だったら正しいことを言わなければと周りを気にしてしまうのですが、そういったこともなく自由に会話を楽しめました」(美結ちゃんのお母さん)

取材中印象的だったのは、大勢の子どもがいるにもかかわらず、叫び声や大きな声をあげている子は誰もいなかったこと。事前にマナーを伝えていれば、通常の開館日でも、十分子どもと展覧会は楽しめそうだと改めて感じました。

知っているようで知らない!? 競技かるたの世界を体験。

慶應かるた会の学生による競技かるたの実演。

別室では小学3年生から中学生を対象にした「百人一首を楽しもう!かるたの世界」も開催されていました。慶應大学の慶應かるた会の学生が指南役となり、小倉百人一首や競技かるたのルールについて説明。競技かるたの実演を見てから最後に子どもたちも体験します。デモンストレーションとはいえ大学生の試合は白熱。取り札が高速で飛ぶ様子に子どもたちも圧倒されていました。

サントリー美術館はいつでも子どもウェルカム! 全展覧会でワークシートを配布。

「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」は年一回のイベントですが、普段から子ども連れを歓迎しているサントリー美術館では、どの企画展でも「わくわくわーくしーと」を配布しています。ロビーにあるので、入館したら展示室に入る前にもらうのがおすすめです。

小さな子どもから楽しめる簡単なものから、小学校高学年以上向けのものまで、難易度別に4枚のカードがあります。「桜や紅葉が描かれた作品を探そう」「何を入れるための箱だろう?」といったお題が書かれ、ミシン目に沿って開くと答えを記入することができます。一見、難しそうに思える日本美術を、自分ごととして見るためのヒントがたくさん詰まっています。

わくわくわーくしーと

 

サントリー美術館の教育普及担当に質問!「子どものうちから日本美術に親しむコツは!?」

さて、ここからはサントリー美術館の教育普及担当・関香澄さんに、日本美術を親子で楽しむポイントを伺いました。

サントリー美術館 教育普及担当 関香澄さん

大人向けの展示でも親子で楽しむことはできるのでしょうか?

関さん:当館では、展覧会づくりにおいて大人向け、子ども向け、と区切ることはほとんどありません。それに子どもたちは、大人が想定しているよりも意外な作品に興味をもったり、こちらが驚くような反応を返してくれることがあります。もし、難しそうに感じたとしても、ワークシートなどを活用し、鑑賞するポイントや発見の面白さが実感できれば、どんな展示でも楽しめるのではないでしょうか。

中高生を対象にした「サン美美術部」。受付で手帳をもらうと入部完了。来館ごとにスタンプが押され、全部貯まるとプレゼントがもらえる。部員限定イベントも開催予定。

日本美術を子どもの頃から鑑賞すると何か良いことがあると思いますか?

関さん:日本美術に限らず、小さな子どもは先入観なく作品を見ることができると思います。大人はつい、有名な作品にばかり注目したり、解説をしっかり読んでから鑑賞したりしがちですよね。それも美術鑑賞のひとつの楽しみ方だとは思いますが、目の前の作品のかたちや色などに対して素直に向き合えるのは、子どもの時期ならではの体験になるのではないでしょうか。小さなころから様々な美術作品と接して、柔軟な感性を育んでほしいです。

日本美術の鑑賞に役立つ豆知識を学べるワークショップも数々開催してきた。扇絵、掛軸、染織、屏風などの工夫を楽しみながら学ぶ。

親子で美術館を巡るときのコツはありますか?

関さん:ぜひたくさん話をしてみてください。作品をきっかけに、「どう思う?」「何が描かれている?」と話してみると、普段のお子様とは違った一面を知るきっかけになるかもしれません。

西洋美術などではなく、日本の古美術を見る良さを教えてください。

関さん:美術館のケースの中の作品は、もしかすると現代の生活とは縁遠いように思われるかもしれませんが、七五三で着る着物、家で使っているお椀、旅館で見かける掛軸など、伝統的な文化を感じる機会は案外あるのではないでしょうか。美術館で、時代をこえて大切に受け継がれてきた作品とその美意識に触れ、今の私たちとの思いがけないつながりを実感できるのが、古美術の魅力のひとつだと思います。

予習動画も活用しよう!

実際にサントリー美術館に行ってみようと思った方は、「動画ライブラリー」で予習するのもオススメです。そのなかの、2020年に制作された動画「サントリー美術館 びじゅつかんのひみツアー」は、展示ケースや美術館の壁に使われている驚きの素材など、既に何度も訪れたことのある方でも知らないような、美術館のひみつを教えてくれます。

芝生広場にオープンテラスのカフェ。子連れで楽しむ東京ミッドタウン

せっかくサントリー美術館に足を運んだのだったら、東京ミッドタウンでランチやショッピングを楽しむのもおすすめです。取材に訪れた時も、大勢のベビーカーを押したお父さんお母さんとすれ違いました。

建物内は廊下も店舗もエレベーターも広々で、小さなお子さんのいる方はベビーカーでの散策にうってつけです。おむつ交換スペースも各所に設置され、ベビールームや授乳室も完備されています。

レストランの中には、テラスのあるレストランやキッズメニューを取り揃えているレストランもあります。

小川の流れるミッドタウン・ガーデンには植物が生い茂り、芝生広場では冬のアイススケートリンクをはじめ、子どもも楽しめるイベントを多数開催しています。

東側に隣接する港区立檜町公園では、アーティストの高須賀昌志さんがのデザインした、ここにしかないアートなブランコとすべり台で遊べます。

アートを柔軟に鑑賞できるのは子ども時代の特権です。東京ミッドタウンでショッピングやランチ。そのついでにふらりとサントリー美術館にも足を伸ばしてみてください。我が子の真剣な表情に驚くかもしれません。

 

◆今回鑑賞した展覧会
歌枕 あなたの知らない心の風景
会場 サントリー美術館
会期 2022年6月29日(水)~8月28日(日)
開館時間 10~18時(金・土は10~20時)
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日 火曜日
※8月23日は18時まで開館
観覧料金 一般1,500円
大学・高校生 1,000円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_3/index.html

◆次回の展覧会
美をつくし―大阪市立美術館コレクション
会期 2022年9月14日(水)~11月13日(日)
開館時間 10~18時(金・土は10~20時)
※9月18日(日)・22日(木)、10月9日(日)、11月2日(水)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日 火曜日
※11月8日は18時まで開館
観覧料金 一般1,500円
大学・高校生 1,000円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_4/index.html

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企画協力/中川ちひろ
撮影/五十嵐美弥
取材・文/藤田麻希
構成/HugKum編集部

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