「どうして2学期の最初は、毎年引き取り訓練をするの?」
これは、筆者が小学校で教員をしていた際に、子どもたちから聞かれたことです。
お子さんに質問されたときに答えられるように、まずは「防災の日」について確認しておきましょう。
9月1日は防災の日
日本は、その地形や気候から、台風・地震・豪雨・洪水・津波などの天災・災害が発生しやすい国と言われています。
そんな災害・天災について理解を深め、備えや心構えをするための日として、毎年9月1日は「防災の日」と定められました。
由来は関東大震災・伊勢湾台風
防災の日がこの日に制定された由来は、1923年9月1日に関東大震災が起きたことにあると言われています。また、1959年の伊勢湾台風では、水害で多くの被害があったことから、防災対策を見直そうという動きが強まりました。
引き取り訓練を行う学校が多い
そんな経緯から、9月1日には引き取り訓練を実施する学校が多いです。
9月1日と言えば、新学期の初日にあたる学校も多いでしょう。とはいえ、平日ではなかなかおうちの方が日中に引き取りに来るのも難しいですよね。そこで最近では、9月1日に最も近い、“土曜授業日”に引き取り訓練を行う学校も増えてきています。
教員の立場で震災を経験し、わかったことは・・・
筆者は、関東地方で東日本大震災を経験しました。その時の様子、子どもたち・保護者の方からの声の中で特徴的だったものをご紹介します。
経験のない事態に直面し、下校したけれど学校に戻って来た子も。
地震発生時、もう帰りの会は終わっていて、教室に残っていたのは、5名ほどの子どもと筆者だけでした。
急いで机の下にもぐらせ、揺れがおさまるのを待ちました。両手でおさえていても、机が倒れそうなくらいの揺れでした。
揺れが収まったら、子どもたちを連れて急いで校庭に出ました。
校舎に残っていた子ども、敷地内の学童にいた子ども、合わせて200人ほどが校庭に集まりました。
少しすると、下校した子どもたちが、学校に戻ってきました。下校途中や家で一人のときに地震に遭った子でした。
お家の方が迎えに来たご家庭から、お子さんを引き渡していきました。電車が動かない中、保護者の方も徒歩や自転車でなんとかお迎えに来てくださいました。夜は、学校に備蓄していた非常食を夕飯にし、残っていた子どもたちを和室で寝かせました。
最後のお子さんを引き渡したのは、深夜2時でした。
子どもたちからの声「家で地震が来たから、どうしたらいいかわからなかった」
・学校では避難訓練をしていたけど、家で地震が来たから、どうしたらいいかわからなかった。
・親が仕事だったので、一人で過ごしていたときに地震がきてすごく怖かった。学校に戻ってきたら、少しホッとできた。
・余震が来ると、「また大きな揺れがあるんじゃないか」と不安になった。
・家の棚にある物がたくさん落ちてきた。家の中の、安全対策をしなきゃいけないと思った。
子どもだけでいた場合、不安な気持ちも大きいようです。
お家の方からの声「子どもがひとりでいるときの対策は考えていなかった」
・とにかく子どもの無事を考えていた。子どもがひとりでいるときの対策は考えたことがなかった。
・家の中のことについて、親しか把握していないことが多いと実感した。安全面に関することは、もっと子どもにも伝えておくべきだと感じた。
・食料の備蓄や家具の転倒防止対策はしていたが、職場からの帰るときの方法まで考えていなかった。
親しか把握していないことが多く、家族で共有しきれていないことも。
子どもといっしょに確認しておきたいこと3点
日本は、天災が起こりやすい地形・天候です。いつ起こるか分からない事態に備えて、できるだけの備えをしておきましょう。
子どもが小学生ともなると、放課後や習い事に行くときなど、子どもだけで行動する機会も増えてきます。
親と子どもが一緒にいないときに災害に遭う可能性もあることを想定して、子どもと共有しておきたい情報について、紹介します。
どうやって連絡をとる?どこに集まる?
ご家庭ごとに、緊急時の連絡手段や避難場所を確認しておきましょう。
緊急時には、回線が込み合うので、携帯電話での電話連絡は難しくなるおそれがあります。
また、インターネット回線も同様に、つながりにくくなることが予測されます。
そんな状況を予測して、
「留守電にメッセージを残すよう決めておく」
「LINEだけではなく、メールでもメッセージを送る」
「災害伝言ダイヤルの使い方を確認しておく」
「安否確認・位置共有アプリを入れておく」
など、家族内でのルールを確認しておきましょう。
お子さんが小さい場合は、まだ自分の携帯端末を持っていないことが多いですよね。
家の固定電話からおうちの方の携帯電話に電話ができるよう、日ごろから練習しておくと良いですね。
また、ご家庭ごとに避難場所を明確にしておきましょう。
基本的には、近所の学校や公民館、高台や広い敷地の公園などが割り当てられていると思います。
お子さんと確認するときには、お子さんがよく行く場所を想定しましょう。例えば、学校・習い事・いつも行く公園などです。
登下校中に災害に遭ったら学校に戻る、スイミングスクールに行く途中なら公民館へ逃げるなど、状況に合った避難場所を親子で把握しておくと良いでしょう。
お子さんは防災グッズの使い方、置き場所を知っていますか?
非常用の持ち出し袋や備蓄品を準備しているご家庭は多いですよね。しかし、お子さんはその使い方・保管場所を知っていますか?
非常食については、水やお湯を注ぐもの・開けたらそのまま食べられるものなど、お子さんでも扱いやすいものが多いです。また、学校や幼稚園・保育園でも、消費期限の近いものが配布されることがあり、その食べ方を知っている子が多いようです。
子どもたちにとって、特に使い方が分からないものが、「ラジオ」と「携帯用トイレ」です。
「ラジオ」は今の子どもにとってなじみのないアイテムということもあり、それが情報を得るアイテムということすら知らない子が多いです。
また、災害時でも必要になるトイレの代わりとなるのが「携帯用トイレ」です。
いざというときには、普段と違うトイレに抵抗感を感じることが予測されます。一度練習させてみると使い方がよくわかると思いますが、広げて組み立ててみるだけでもイメージがわくでしょう。
家の周りには、どんなリスクがあるの?
東日本大震災のときには、震源からは大きく離れた千葉県で「液状化」現象が多数起こり、話題となりました。
お住まいの地域によって、様々な危険が予測されますので、お子さんにも伝えておきましょう。
「ハザードマップ」を見ると、洪水・土砂災害・津波などのリスクがどれくらいあるのか、知ることができます。
また、近所やお子さんがよく行く場所に、危険なものがないか、日ごろからチェックしておくと良いでしょう。例えば、崩れてきそうなブロック塀、古い住宅が密集していて倒壊のリスクがあるところ、水量が増えると危ない用水路や田んぼ、上から物が落ちてくるとあぶない高層ビルや高層マンションなどです。一緒に出掛けるとき・習い事の帰りなどに、一緒に見てチェックしましょう。
地域によっては、小学校2~4年生くらいで、学区域内の危険個所を地図上にまとめた「ヒヤリハットマップ」を作る学習を取り入れているところもありますよ。
お子さんもいっしょに 防災対策を!
災害時に親子が一緒にいるとは限りません。家族一人ひとりが、「我が家の防災対策」を知っていることが大切です。また、「こんなときはどうするの?」と、子どもならではの視点で新たな発見が得られることもあります。
いつ起きるか分からない災害。いざというときのために、備えをしておくと安心です。その時には、お子さんも一緒に、情報を共有しておきましょう。
【NHK】ハザードマップ|洪水・浸水・土砂災害
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文・構成/yurinako