「おもちゃなどの片付けを嫌がり、毎回叱るのに疲れます」【保育経験41年・元園長先生の相談室16】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

 

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

3歳の息子ですが、遊んだおもちゃを片づけるように言うと、毎回「嫌だ」と拒みます。叱ると、最後には泣きながら片づけるのですが、毎日叱るのも、さすがに疲れてまいっています。

新潟県 T・Rさん

 

子どもの遊びにつきあいながら片づけを教えましょう

2~3歳ぐらいの子どもの遊びには「区切り」がありません。ある遊びをしているときに、ふとほかのことを思いつき、自然に新しい遊びに移行する。それが延々と続いていきます。だから、その年齢の子どもが遊んでいる周囲には、モノが散らかりやすいのです。

けれども、仕方のないこととしてあきらめず、片づけるということを根気よく教えていくことが大切です。幼児期から教えていくことで、片づけが「しなければいけない面倒くさいこと」ではなく、「当たり前のこと」として、感覚的に体にすりこまれていくからです。

幼児に片づけを教えるときに、まず重要なのは言葉のかけ方です。おとなは片づけというのは、モノを整理整頓することだとわかっているので、簡単に「片づけなさい」とだけ言ってしまいがちです。しかし、子どもは片づけるということをまだ理解しておらず、その重要性もわかっていません。そして、自分の描いた物語の世界の中で遊んだおもちゃや絵本のことを、モノだとは思っておらず、愛情を抱いています。

だから、片づけを促すときには、「おうちに帰してあげましょう」とか、「迷子になったらかわいそうだよ」などと言って、おとなが子どもと同じ世界の中に入って、言葉かけをしてあげることが必要です。

幼稚園では、ほかに、「だれがいちばん最初に片づけられるか競争しよう」とか、「ショベルカーになって荷物運びをしよう」などと言って、片づけを遊びのひとつにして行うこともあります。これも、幼児に片づけを教える際には有効だと思います。

大事なのは、片づけが子どもにとって気持ちのいいことで、楽しいものだと思わせること。これを毎日繰り返していくことで、自然に片づけができるようになります。

片づけやすい環境を整えて、お母さんも一緒に片付ける!

子どもに片づけをさせるときには、環境を整えてあげることも必要です。「人形は棚の上」、「車は箱の中」というように、片づける場所を決め、絵を描いて貼るなど、わかりやすいように工夫してあげましょう。幼児でも簡単に片づけることができます。

また、言葉をかけるだけでなく、お母さんが、子どもといっしょに片づけをすることも、幼児の場合は大切です。子どもにいくらやる気があっても、最初からひとりで全部を片づけるのは難しく、なかなか片づけられないと、片づけを嫌なものと感じてしまいます。そうならないよう、子どもの能力に応じて、お母さんが手伝ってあげましょう。

片づけをいっしょにしていくうちに、日々の子どもの気持ちの変化や成長がわかるようになり、手伝いの加減もわかるようになると思います。手伝いながら「力持ちだね」「運ぶのが上手だね」などと、子どもをほめることも忘れずに。そして、片づけが終わったら、「きれいになって気持ちいいね」と必ず言ってあげましょう。これを繰り返していくことで、子どもは片づける意味を少しずつ理解していきます。

仕事や家事など忙しい中で、このように子どもにつきあっていくことは、大変なことだと思います。でも、こうしたことの積み重ねが、子育てではとても重要なことなんです。お母さんの小さな頑張りが、子どもの健全な育ちを促して、やがて、かけがえのない喜びとなると思います。

回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2015年5月号

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