「日常生活の中で、時間を意識しながら行動するようにさせるには?」【保育経験41年・元園長先生の相談室12】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

4歳の娘ですが、食事や身じたくに時間がかかり、ついかしてしまいます。日常生活の中で、時間を意識しながら行動するようにさせるにはどうしたらいいでしょう。(福井県 Y・Mさん)

園では時計を使って時間感覚を身につけます

時間というのは感覚的なもので、各人で表す言葉が異なります。同じ時間を過ごしても、その人の感覚や価値観によって、ある人は「あっという間だった」と言うかもしれませんし、別の人は「こんなに時間がかかってしまった」と言うかもしれません。

しかし、社会生活は時間で管理されていて、人々は一日のうち多くの時間を時計の示す時刻に従って活動しています。家庭で生活していたときには大して必要でなかった時間に対する意識も、園の集団生活では必要になります。

そのため、私たち保育者は「時計」を使って、卒園までには時間を意識するよう少しずつ指導を行っていきます。例えば、黒板に手作りの時計を貼っておき、その時計の示す時刻と、教室にある本当の時計の針とを見比べながら活動をするよう、子どもたちに指示を出していくのです。「この時計と同じように針が示すようになるまでに、ごはんを食べてしまおうね」「長い針が4のところに来るまでに片づけをしてしまいましょう」

このような言葉かけを繰り返し行っていくのです。すると、子どもたちに徐々に時間に対する概念が身について、年長児になるころには、多くの子どもが時計による先生の指示に対して、「あと5分しかない」とか、「まだ1時間もあるんだ」というような時間感覚を持つようになり、ある程度適した行動ができるようになるのです。

このように保育者が時計を利用するのは、園児に「早くしなさい」というような、抽象的でなおかつ厳しい指示を出さないようにするためです。例えば「3の数字のところに来るまで」と具体的な指示を出し、そのうえ「一緒に頑張ろうね」と子どもたちを応援することができます。そして、指示した時間より早くできたなら、「よくできたね」とほめることもできるのです。

つぶやくようにやんわり時間を意識させましょう

相談者のお子さんの場合は、まずおうちの方が時間を意識させる配慮をしていくことが必要です。例えば、外出から帰ったとき「今日は早く着いたね」と言って時計を見る姿を見せる。家庭にある時計の数字の部分にシールを貼っておき、「赤いシールの数字は、お風呂に入る時間。青いシールの数字は寝る時間だよ」などと言って、その時刻の前に行動を促す——。このようなことを少しずつ始めてみてください。当初はお子さんが時間というものをきちんと理解していなくても構いません。重要なのは、お子さんが神経質にならないよう、つぶやくようにやんわり伝えていくことです。

また、時計はお子さんをほめるためのひとつのツールです。指示出しは、お子さんの力量に沿って行いましょう。例えば、もし、お子さんが朝の身じたくを、出かける時間までにできなくて急かしてしまうようなら、早く起こして、時間内にできるようにして、そしてほめてあげてほしいのです。園生活と同様に、家庭でこのようなことを積み重ねていくことで、お子さんに時間感覚が徐々に身について、社会生活をする上で必要な時間に沿った行動が段々とできるようになると思います。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2017年8月号

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