赤ちゃんの眠りのプロ、愛波あやさん
愛波さんは日本人初の乳幼児睡眠コンサルタントで、国際資格認定機関IPHIの日本代表を務められています。「ママと赤ちゃんのぐっすり本」(講談社)「マンガで読む ぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方」(主婦の友社)などの著書もあり、講演や執筆を含め幅広く活動されています。
ねんトレが必要な人とは
Q.まず「ねんトレ」はどのような人に必要なのでしょうか?
愛波さん ねんねトレーニングをすると子どもが一人で寝られるようになりますが、一人で寝かせることを必ずみんながしなければならないわけではありません。
添い寝をしていて親も子どももお互いぐっすり眠れていて幸せかどうか、というのが判断条件の一つになってきます。親が我慢をして添い寝をしているなら、それは幸せではないので、ねんトレをしてみるのがよいと思います。
また、子どもが1時間おきに起きてしまうような状況では成長にも影響するので、睡眠改善をする必要があります。
子育ては、親のメンタル面も重要ですし、ママが疲弊してまで添い寝をするのは違いますよね。ねんトレをすることでぐっすりお互い眠れるようになるなら、その方がいいですよね。
ネントレのメリット
Q. 「ねんトレ」をするメリットを教えてください。
愛波さん ねんトレをして一人で寝る「セルフねんね」ができるようになるメリットはたくさんあります。
ひとつは子どもの寝かしつけの時間がなくなるので、自分の時間ができることです。自分の好きなことをする時間、自分をケアする時間を作ることは子育てではすごく大事です。
また、私たち親自身もぐっすり眠れるようになります。夜になると子どもが寝てくれるとわかっていることで、日中、子どもに対しても余裕が生まれます。
また、子どももしっかりと眠れることによって日中の機嫌がよくなったり、集中力が高まったり、ケガも少なくなったりします。
一人で寝る力をつけた子どもは、祖父母やシッターさんに預けやすいので、緊急なことが何かあった時にも安心です。
ねんトレを始めるタイミング
Q. ねんトレはどの年齢からでも始めることはできますか?
愛波さん いつからでも始められますが、2~3歳児は分離不安があったり、自我が出てきて感情を上手くコントロールできずイライラしがちな時期なので、経験上一番時間がかかります。ただそれでもやり方はありますし、しっかりやれば必ず改善します。
やはり0歳児の小さな頃の方が習慣を変えやすいので取り組みやすいです。今、睡眠のことで悩んでいなくても、「今後このままでいいのか」というのは少し考えてほしいです。
だからといって今すぐにねんトレをする必要はないと思っているなら、「ねんトレをやろう」と思った時にやるのが一番効果が出ます。自分がどうしたいのか考えて納得して取り組むことですね。
ねんトレの方法
Q. ねんトレの具体的な方法を教えてください。
愛波さん 科学的にも効果があると言われている「フェイドアウトメソッド」と「タイムメソッド」の二つの方法があります。
●「フェイドアウトメソッド」は徐々にママ・パパ・保育者の存在を部屋から消していって一人で寝る力をつけていく方法です。
●「タイムメソッド」はベビーベッドのある部屋に親が入って、ベビーベッドでお子さんを寝かし、時間を計り、部屋を出入りする方法です。
タイムメソッドの方が効果が出るのが早いと言われていますが、個々の状況によってもおすすめは変わります。
タイムメソッドでは6、7か月の赤ちゃんだと4日ほどで徐々に効果が出ることもありますし、1歳以降になると1~2週間強ほど。少し時間はかかりますが、必ず一人で寝るようになります。「何でもっと早くやらなかったのだろう」とほとんどの方が言います。
Q. やってみたい気持ちはあっても、トレーニング中が大変そうでなかなか踏み切れないという声も聞きます。
愛波さん 確かに短期間ですけど泣いてしまうこともありますし、つらい気持ちになるかもしれません。でも、毎日のように一日の最後の寝かしつけで怒ってしまったり、お子さんが1時間2時間おきに泣いて起きたり、お互いつらい思いをし続けるのは幸せではないですよね。どうしたいのかということを天秤にかけてみてくださいと伝えています。
いきなり「今日からやる」というのではなくて、睡眠の土台を整えることも大切です。
幼児の場合はカレンダーを作って「この日からひとりでねんねするんだよ」と伝えて、好きなキャラクターの寝具にしたり、一緒に寝るぬいぐるみを一緒に買いに行ったり、お子さんに決めさせてあげてください。
部屋を涼しくしたり、暗いのが苦手なお子さんには足元をうっすら照らす暖色系のナイトライトを置いたりといったことも必要です。睡眠環境をお子さんと一緒に作ってほしいと思います。
他にも、外遊びで身体を疲れさせてあげたり、パパ・ママと1対1の時間をしっかり作ったり、ルーティーンを決めたりした上で、取り組んでみてください。ルーティーンも子供と一緒に考えるといいですね。
Q.ルーティンづくりにおすすめのアイテムはありますか?
愛波さん スリーパーを着たら寝るというルーティンは効果的です。包まれている安心感でぐっすり眠れるようになります。
●新生児から6か月くらい
愛波さん 新生児から6か月くらいまでは、ママの胎内を再現できるようなおくるみのスリーパーがおすすめ。生まれたての赤ちゃんは、ママの胎内にいたときのように腕をギュッと固定してあげることで、安心して寝てくれるようになります。
このスリーパーは足が自由なので、骨折や股関脱臼を防げます。ファスナー式なので、着たままオムツ替えもできますよ。
●6か月~2歳すぎくらい
愛波さん 6か月~2歳すぎくらいまでは、腕が出る設計のスリーパーがおすすめです。赤ちゃんの体温調節ができるからです。赤ちゃんのねんねにとって最適な室温は大人が少し肌寒いと感じるくらいの温度。腕が出ていることで、体温が上がり過ぎてしまうことを防いでくれます。
寝返りを始めたお子さんにもこちらは使っていただけます。おくるみスリーパーを卒業しても、このスリーパーがあれば、いつもの安心する環境を作ってあげられます。
●2歳〜6歳くらいまで
愛波さん 2歳頃からは、とにかく歩くのが楽しい時期です。 こちらの足つきスリーパーは、寝床から立ち上がったり、起きた後に遊ぶときにもそのまま安心して着せられます。着たままお子さんが一人で歩くことができるので、夜のトイレの時もスリーパーを脱がせて連れていく必要はありません。
Q. ねんトレを最後までやり通せるか、自信がない場合はどうしたらいいですか?
愛波さん 「本当にねんトレをやっていいのか」不安に思うのは私自身もそうでしたし、みんな思うところです。私も同じでした。そういった自信がない時には、睡眠の土台を整えていくうちにやり抜く自信がついてきます。
不安な人方は、私の生徒さんのIPHI乳幼児睡眠コンサルタントと一緒に改善をしていくのも1つの方法です。決めたからには一貫してやり抜くことが大切です。
お昼寝での注意点
Q. お昼寝の寝かしつけで気をつけることは?
愛波さん 部屋を暗くすること、涼しくすること、特に低月齢ではしっかりお昼寝をさせてあげることが大事です。
2歳以上は寝すぎないこと、夕方まで寝ないようにすることですね。土日はなかなか難しいかもしれませんが、できればお昼寝は早めにしてから遊びに行くなどするといいですね。
Q. 年齢が上がるとお昼寝しない子も出てきます。必要かどうかはどのように判断すればよいですか?
愛波さん 昼寝をしていて、就寝時間が22時から23時と遅くなってしまう場合は、昼寝をやめて7時から8時のあいだに寝たほうがいいです。夜の睡眠が長く、ぐっすり眠れていることが大切です。
人によって違いますが、5歳くらいでも昼寝が必要な子もいるので、お昼寝をしても8時9時くらいに寝るのであればお昼寝をしても大丈夫です。
添い寝や抱っこ寝について
Q. 病気の時などはかわいそうで、添い寝をしたり抱っこで寝てしまったりする人も多いです。これはクセになってしまいますか?
愛波さん クセになってしまうこともありますが、高熱が出ていたり体調不良の時は仕方がないので一緒にいてくださいと伝えています。一度1人で眠れていたのであれば、体調がよくなってからまたスムーズに1人で寝てくれるようになる子いますし、いつでも睡眠改善はできますので心配する必要はないですよ。ただ添い寝をするときには、安全な状況になるようにしてくださいね。
愛波さんのお話を聞いて、「ねんトレ」を始めてみようと思った方もいるのではないでしょうか。
自分がどうしたいか考えて納得することが大切、というお話もありました。まずは自分と子どもの幸せのためにどうしたいのか、これをきっかけに毎日の睡眠について考えてみませんか。
プロフィール
国際資格認定機関IPHIの日本代表を務め、350名以上の乳幼児睡眠コンサルタントを育成。出産後、自身が夜泣きや子育てに悩んだことから米国で乳幼児の睡眠科学の勉強を始め、現在は日本を代表する乳幼児睡眠コンサルタントとして、講演や執筆を含め幅広く活動。その中でも、ママ・パパ向けの睡眠・子育て・教育について、情報を配信したり質問に答えたりする、『愛波子育てコミュニティ』は、同種のサービスとしては日本最大規模に成長中。 著書に「ママと赤ちゃんのぐっすり本」(講談社)「マンガでよむ ぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方」(主婦の友社)、監修書に「ママにいいこと大全」(主婦の友社)がある。 Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。慶應義塾大学教育学専攻卒業。
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文・構成/酒井千佳