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山脇百合子さんのあたたかな作品たち
先日お亡くなりになった山脇百合子さんは、「ぐりとぐら」シリーズをはじめ、数々の有名な絵本・児童文学の挿絵を描いた画家です。実姉で児童文学者の中川李枝子さんとともに『ぐりとぐら』以外にも、たくさんの絵本・児童文学を発表しました。それ以外にも、多くの作品の挿絵を担当し、その温かで優しい絵は子どもの心をつかみ、親子2代で大ファンの方も多いと思います。
そんな山脇百合子さんの作品とその魅力を、ご紹介していきます。
まずは、代表作「ぐりとぐら」シリーズから
まずは、山脇百合子さんの初めての絵本であり代表作の「ぐりとぐら」シリーズをご紹介します。
「ぐりとぐら」シリーズは7作あり、「おりょうりすること たべること」が大好きなのねずみの双子“ぐりとぐら”が、おいしそうな食べ物を食べたり仲間たちと遊んだり、伸びやかな毎日をとっても楽しそうに描いたシリーズです。
ちなみに、『ぐりとぐら』が世に出されたときは、まだ上智大学の学生で、“大村百合子”という、ご結婚前の名前で絵本が刊行されています!
『ぐりとぐら』
みんな大好き! 「このよで いちばん すきなのは おりょうりすること たべること」で有名な“ぐりとぐら”シリーズの第一作目です。
のねずみの、ぐりとぐらは、ある日おおきなたまごを見つけます。それを使って作ったのは、大なべいっぱいの大きなカステラ! それを見て、「私もこんな大きなカステラ食べたい!」とみんな思ったはずです。
『ぐりとぐらのおきゃくさま』
すてきなお客さまが持ってきたチョコレートケーキを前に、ぐりとぐらと仲間たちは大喜び。
『ぐりとぐらのかいすいよく』
ぐりとぐらは、海水浴に出かけると、“うみぼうず”に出会います。
『ぐりとぐらのえんそく』
遠足に出かけたぐりとぐらは、リュックにお弁当をつめて出かけますが……。
『ぐりとぐらのおおそうじ』
春が来て、大そうじをしたぐりとぐら。そうじの後のおやつは、特製のにんじんクッキー。
ほかにも、『ぐりとぐらとくるりくら』では、おいしそうな朝ごはん。『ぐりとぐらとすみれちゃん』では、かぼちゃ料理を仲間たちと楽しみます。
ぐりとぐらと仲間たちの楽しい日常と、山脇さんが描くおいしそうな食べ物があいまって、この“ぐりとぐら”シリーズは、読むたびに親子で幸せな気持ちになれる絵本シリーズです。
あかちゃんから楽しめる絵本も
山脇百合子さんの挿絵が、赤ちゃんから楽しめる絵本もあります。
「ぐりとぐら」のシリーズには、ぐりとぐらや仲間たちの楽しい日常を楽しみながら「あいうえお」や「数」を知ることができる絵本があります。ミニブックとなっているので、お出かけ先でもぱっと開いて楽しめますね。
『ぐりとぐらのあいうえお』
「あさ いもほり うでまくり えんやらやっと おおきなおいも」など、ぐりとぐらの世界を、テンポよくひらがな50音で紹介していきます。
『ぐりとぐらの1・2・3』
「いのししがいっぽんみちでみつけたいちごひとつ」など、ぐりとぐらと一緒に、リズムよく数を数えて楽しめる絵本です。
『はねはね はねちゃん』
こちらは、山脇さんの描くかわいい人間の子“はねちゃん”が、動物たちのまねっこをして、たいそうをする、楽しいあかちゃん絵本です。
少し大きくなったらこんな物語も
絵本から、ちょっと長めの幼年童話が読める年になったら、こんな名作もおすすめです。
『いやいやえん』
表題作“いやいやえん”を始め、しげるが通うちゅーりっぷほいくえんを舞台に、不思議なものたちがやってきたり、お友達とふしぎな遊びをしたりする、中川李枝子さんと山脇百合子さんコンビの初期の名作です。
『そらいろのたね』
きつねからもらった“そらいろのたね”を植えると、空色の家の芽が出て、どんどん大きくなっていきます。大きくなった家でみんなで遊んでいると、きつねが取り戻しにやってきて……。家が育っていくワクワク感と、ちょっぴりドキドキする終わり方に目が離せない絵本です。
『もりのへなそうる』
てつたくん、みつやくんの兄弟が、かいじゅう「へなそうる」と森の中で出会い、楽しくあそぶお話です。山脇さんが描くほんわかとした、へんてこかいじゅう“へなそうる”や、てつたくん兄弟の姿が、子どもの楽しい遊び時間の雰囲気を伝えます。
有名な児童文学者とのこんな絵本もあります
山脇百合子さんは、お姉さんの中川李枝子さんとのコンビの本がよく知られていますが、有名な児童文学者さんとの絵本にも、ステキな作品がたくさんあります。
『きょうの おべんとう なんだろな』
詩人・童話作家の岸田衿子さんとの作品です。動物たちが、それぞれピクニックにすてきなお弁当をもってきて、見せ合いっこをします。山脇さんの描くお弁当がどれもおいしそう、かつ、虫の子のお弁当は葉っぱ、ぞうさんのお弁当はバナナが20本にキャベツ3個など、それぞれの好物を見せるリアリティもあり、何度読んでも飽きません。
『ひみつのひきだしあけた?』
児童文学者のあまんきみこさん(『車のいろは空のいろ』などで知られる)との作品です。あみばりを探して、何でも押し込めてしまっている引き出しの中を探していると、どんどん引き出しが伸びていって……という、なんでもためこんでしまうチイばあちゃんの姿に親近感を覚える、ユーモラスな絵本です。
山脇百合子さんがお話から作った絵本も
山脇さんはたくさんの挿絵を描かれていますが、お話の作から手掛けた作品もあります。
『ゆうこのあさごはん』
ねぼうしたゆうこが朝ごはんに出てきた“ゆでたまご”と一緒にちょっとした冒険をする、かわいいお話です。
『そらをとんだ けいこのあやとり』
おかあさんから編み物を教えてもらったけいこが、長い長いあやとりのひもを編んで起こる、不思議なできごとを描いた幼年童話です。
思い出は受け継がれる
どの作品も、パパママの子ども時代を彩った名作ばかり。山脇百合子さんの絵は、子どもが見る世界をシンプルに表現していて、いつ、どんな時代に読んでも、時を越えて子どもを微笑ませます。
ぜひ、親子で再度手に取って、山脇さんの優しい世界を楽しんでみてください。
文・構成/徳永真紀