時計が読めない我が子……時計の苦手は低学年のうちに克服したほうがいい?【算数教育のプロに訊く】

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タブレット教材を展開する RISU Japan 代表で『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』の著者・今木智隆さんに、算数の中でも特殊な単元である「時計」について、苦手意識の克服法や、家庭でのサポートについてお話を伺いました。

小学校低学年で習う算数のうち、つまずきやすい単元のひとつが「時計」です。

授業で習う小学校1年生の時点では、日常生活でもまだしっかり時計が読めない子も多いので、おうちの方は「こんな調子で学校生活についていけるかな、この先大丈夫かな……」と心配されることもあるでしょう。

時計は早いうちに苦手を克服して、しっかり読めるようにしておいたほうがいいのでしょうか?

小さい子にとって時計が難しい5つの理由

普段の暮らしの中でも使っている時計ですが、算数の単元としての「時計」は、子どもたちにとって、これまでに習ってきた数字の概念と少し違う考え方をしなければならないので、難しく感じられる分野です。

時計の学習は次のような特徴があります。

1.いきなり60進法と24進法が混ざる

2.午前・午後というルールがある

3.長針と短針が別の動きをする

4.長針と短針で数字の読み方が違う

5.分だけ、時間だけで表すこともある(90分、1時間30分、1時間半は皆同じなど)

このように特徴を整理すると、大人から見ても「確かに小さい子には複雑な仕組みかも……」と思いますね。

また、最近ではデジタル時計を使っているご家庭も多いです。生活リズムを作る際にも、テレビ番組の切り替わりや、テレビの端に映る時刻表示で朝の身支度をさせていたりするご家庭も多いのではないでしょうか。

現代の暮らしでアナログ時計を読む機会が減っていることも、時計の理解を難しくしている要因と言えます。

時計の苦手は低学年のうちに克服するべき?

時計は特殊な単元だからこそ、苦手な場合には早めに克服したほうがいいのではと心配されるかもしれませんが、その心配は要りません。

今すぐ何とかしようと思わなくても、高学年になってから学んだほうが、スムーズに理解が進むこともあるからです。

特殊な単元だからこそ他の単元に影響しない

算数は積み上げの科目だと言われています。例えば小学生が計算方法について学ぶとき、まずは繰り上がりの足し算を習います。そして九九を習い、理解したうえで、掛け算のひっ算についてやり方を学びます。

算数で学ぶ多くの単元は、このように前に習ったやり方を使わなければ、次の課題に進むことができない仕組みになっています。

そんななか、時計は算数の積み上げの仕組みから独立している特殊な単元となっています。時計を読めた先に何か応用問題があるでしょうか?  特に何もないですよね。つまり、時計が苦手だったとしても、他の単元の内容を理解することについて悪影響はないということです。

算数としての「時計」は4年生以降登場しない

もうひとつお伝えしたいのは、算数の単元として時計は、実は4年生以降の教科書にほぼ登場しないという事実です。ですから、もし苦手なままであったとしても、その先の算数・数学の問題でつまづいて困るということはないのです。

時計を読むことは日常生活のなかで自然にできるようになりますから、特に低学年のうちは、時計がすぐに理解できなくても気にしすぎる必要はないでしょう。

九九や分数の概念を知ってからのほうが分かりやすいこともある

小さいうちに時計の理解を焦らなくてもいい理由に、九九や分数の概念を知ってからのほうが時計の仕組みを理解しやすいことも挙げられます。

あるお子さんは、1年生の頃は長針の読み方が苦手でした。8に長針があるとき「今、何分か?」をすぐに答えることができなかったのです。しかし、2年生になり九九を習ったことで、長針は九九の5の段と同じ数え方をしていることに気が付き、8は8×540分だとすぐに答えられるようになりました。

90分と1時間30分は同じ」というのも、時計を習う低学年のうちは理解が難しくても、高学年になり仮分数・帯分数を理解した後なら、同じことを言っているのだと気付くかもしれません。

このように「時計」に関しては、特に苦手を克服しようと力を入れなくても、しばらく待ってから解かせてみたら自然と理解できていた、という場合もあるのです。

ただし、受験組は時計の苦手を克服するほうがよい

このような理由から、「時計の苦手は無理に克服しなくても後回しにしてよい」という考えをお伝えしました。ただ例外として、中学受験を考えている場合は時計の単元をしっかり押さえておく必要があります。

初めに述べたように時計を理解することは子どもにとって難しいため、時計と他の分野を結び付けた問題が出題されるパターンも多いからです。例えば、長針と短針がつくる角度を求める問題などが出題されています。

時計の苦手を克服するおすすめの勉強方法3つ

時計の苦手意識を克服するには、無理なく取り組める次のような勉強方法がおすすめです。

1.家にアナログ時計を置く

まずはアナログ時計に慣れることから始めてみましょう。最近はアナログ時計でもデザインに凝っているものがあり、文字盤が曲がった形のものや、数字が飛び飛びに書いてあるものもあります。

時計の勉強のために置くのであれば、シンプルに丸い時計で数字が大きくて見やすく、きちんと112まで飛ばさずに書いてあるものがおすすめです。

特に時計が苦手なお子さんは知育時計を使ってみると良いでしょう。知育時計は長針用に0~59の数字が書いてあり、短針が56の間はずっと5時だと分かるような工夫がされています。

「知育時計」と検索すれば、子どもの時計学習に適した壁掛け時計や目覚まし時計を探すことができます。

知育時計の例。セイコー クロック 白 KX617W SEIKO

2.実際の時計、実際の時間で教える

時計の問題を間違えたときは、正解するまで紙に書かせて覚えさせるよりも、実際に時計を回して解説するほうが理解しやすいです。

紙の上で何とかしようとせず、まずはお子さんが頭に時計をイメージできるようになるまで、できないうちは実際に時計を回して考えましょう。

算数ボックスに入っている手回しの時計を使ってもいいですし、学校から持ち帰れなければ100円ショップで時計を買って、電池を入れないまま勉強用に使う方法もあります。

また、実際にお子さんが行う時間で、〇〇ちゃんが朝起きる時間は〇時、おやつの時間は〇時、お風呂の時間は〇時という風に教えることで、問題に出てくる知らない子どもの時間よりも自分事として捉えるため時系列をつかみやすくなります。

3.あまりに苦手なら時間を置く

おすすめという意味では、わざと時間を置くこともひとつの方法です。時計は「勉強」という形で机に向かわなくても、毎日、生活の中で自然に使う機会があるからです。

その場合は、おうちの方が工夫して声掛けをします。「20分後におやつを食べよう」「ゲームは17時までに終わろう、あと何分遊べる?」など、生活の中で時計を見る機会を増やすような声掛けをして、時計に慣れていきましょう。

まとめ:時計が苦手でも焦らなくてOK! 中学受験を考えるならシーズンまでに克服を

今回は「時計が苦手な場合は早めに克服したほうがよいか」について、焦らず見守ってよいことをお伝えしました。「時計は特殊な分野で他の単元から独立していること」「高学年になれば自然と理解が進むこと」がその理由です。

逆に中学受験を考えているお子さんは、時計は受験シーズンを迎える前にしっかり抑えておきたい単元です。時計は理解が難しいからこそ、試験では出題されやすい単元だと言えるでしょう。

いずれにしても、まだお子さんが小さいうちは、急がずにまずは生活の中でアナログ時計に慣れることから始めてみてはいかがでしょうか。

記事執筆

今木智隆|RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。ユーザー行動調査・デジタルマーケティングのbeBitにて国内コンサルティング統括責任者を経験後、2014年、RISU Japan株式会社を設立。小学生の算数のタブレット学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムを考案。国内はもちろん、シリコンバレーのスクール等からも算数やAI指導のオファーが殺到している。

〈タブレット教材「RISU算数」とは〉

「RISU算数」は1人ひとりの学習データを分析し、最適な問題を出題するタブレット教材。タイミングの良い復習や、つまずいた際には動画での解説の配信を行うことにより、苦手を克服し得意を伸ばします。

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構成/HugKum編集部

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