「のびのびした子」ってどんな子?「言うことを聞く子=いい子」なの?【井桁容子先生の子育て相談】

Q. 3歳の息子は聞き分けがよく、お友だちとも仲よく遊べます。でももう少し、のびのびと元気にしてほしい気も……。

A.「のびのびしたども」とは自由をもったのこと

「のびのびした子ども」って、どんな子のことでしょう?「のびのびしていない」と感じるのはお子さんのどんなところでしょうか?外で元気に遊んだり、明るくだれとでも仲よくできたりするのがのびのびした子ども?これからの時代に求められるのは、のびのびした自由な心をもつ人です。
「みんな同じ」の規格品ではなく、自分ならではの強みをもっている……。こんな子どもが、本当にのびのびしていると言えるのではないでしょうか。

のびのび育つためには自分で考える力が必要

大人はつい、「言うことを聞く子=いい子」と思ってしまいがち。さらに、「のびのびしたいい子」に育ってほしいと願います。でも、ちょっと待ってください。
親の指示に従うことと、のびのびと自分らしくいること。これは、正反対ともいえるのでは……?
本当の意味での「いい子」とは、親が決めた枠からはみ出さない子のことではありません。してはいけないことを見極める力をもち、枠などなくても、いざというときは自分の判断で踏みとどまることができる子のことです。
考える力のベースになるのが、基本的信頼感です。おなかがすいた、眠い、不安だ……。育つ過程で、自分の思いに親がタイムリーに応えてくれる経験を重ねると、子どもは「親は思いを受け止めてくれる」と感じられるようになります。そして、こうした信頼感があると、子どもは自分の能力を信じてさまざまな挑戦ができるようになります。
挑戦すれば失敗もありますが、「親が必ず手を差し伸べてくれる」という信頼感があれば、失敗したぐらいで心が折れることも、次の挑戦を恐れることもありません。
つまり、「くじけない力」を身につけることができるのです。

親への信頼感がのびのびした心をつくる

親が心がけたいのは、「出来ばえ」を気にして子どもを育て急がないことです。「走っちゃだめ!」と叱れば、子どもは走らないでしょう。でも、「叱られるからしない」のは、「叱られなければする」のと同じ。子どもは納得したわけではなく、親の顔色や場の空気を読んでいるだけなのです。
信頼感を深めるためには、子どもと向き合うことが大切。「だめ!」と決めつけるのではなく、「走りたくなっちゃったんだね。でも、ここでは危ないからだめ」のように、子どもの思いを受け止めたうえで「だめな理由」を伝えるようにします。さらに、「どうして走りたくなったの?」とわけを尋ねてみましょう。そうすると子どもは、自分なりの答えを伝えようとします。
そして、聞いてもらうことで、「自分の思いを表現していいんだ」と実感します。
また考えたり感じたりしたことを言葉で表すことや、共感し、耳を傾けてもらうことを通して語彙が増え、コミュニケーション力も高まるのです。のびのびした心を育てるために必要なのは、子どもをわかろうとすることです。子育ては、大人好みの子どもを「つくる」ことではありません。子どもがもつよいところを「応援する」ことです。
2歳、3歳、4歳の頃は、完成した人をつくるのではなく、将来に備えてのびしろを蓄える時期。そして、のびのびと自由な心こそ、子どもを大きく伸ばす「もと」となるのです。

記事監修

井桁容子|乳幼児教育保育実践研究家

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。

イラスト/小泉直子 構成/野口久美子 出典/めばえ

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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