体幹を鍛えられないまま成長してしまう子どもたち
生後8ヶ月頃を目安に、赤ちゃんはハイハイを始めます。しかし最近は、赤ちゃんがつかまりやすい高さの椅子やソファーなどを置いている家庭が多いこともあり、ハイハイ時期が短く、早くからつかまり立ちを始める赤ちゃんも少なくありません。
ハイハイは手足の力や腹筋、背筋などを使い、身体の土台となる体幹を鍛える大切な動きです。右手を前に出したら左足が前に出る…その自然な動きを本来であればハイハイの時期に習得すべきなのですが、小学生がハイハイをしてみると、中にはうまく動かすことができない子もいます。
その他にも、このような思い当たることはありませんか?
・身体が硬い
・姿勢が悪い(猫背、巻き肩、腰痛、肩こりなど)
・大きな声を出せない
・よくつまずく
・つまずいても手が出ない
これらは乳幼児期の成長過程で自然と習得していくものです。しかし、不整地を歩くことが少なくなったことや、ゲームやスマホの普及、そして近隣に気を使いながら行動制限された公園で思いっきり身体を動かすことのできない現代の環境では、なかなか自然に任せて習得することが難しいのが現状です。
キッズコアコンディショニングで姿勢や動きを再学習
わが家の3人の子どもたちも、生後7ヶ月ほどでつかまり立ちをして、10ヶ月ほどで歩きだすというスピード成長を遂げました。運動神経もいまいちだし、姿勢も悪い…あぁ、もっとハイハイさせておけばよかった。たくさん泣かせてあげればよかった。
でも、嘆くのはまだ早い!キッズコアコンディショニングを取り入れることで、意識的に身体に必要な動きや姿勢を刻み込むことができます。
キッズコアコンディショニングとは?
キッズコアコンディショニングとは、ヒトの発育・発達過程に沿って進められるコア機能再学習エクササイズです。
その目的は「全ての身体活動に通じる良好な姿勢」と「コアと全身が強調した効果的な動作」の獲得を促すことにあります。(一財)日本コアコンディショニング協会「キッズコアコンディショニング」テキストより
このコア機能再学習エクササイズは、子どもはもちろん、産後のお母さんでも、高齢者でも、いつからでも効果を得ることができます。
キッズコアコンディショニングのメリット
キッズコアコンディショニングでは、子どもたちの身体活動の土台となる「姿勢」と「動きの基礎」つまり身体づくりを大切にしています。
家の柱や基礎と同じで、私たちの身体も体幹や土台がしっかりとしていれば、その上に築く「動き」の可能性を最大限に引き出すことができます。
例えば「野球などの球技でボールを速く投げたい」といった時に、フォームやコツを教えてもらい、頭では理解していても、なかなか上手くいかないことがあります。
その要因のひとつとして、その子が猫背・巻き肩で肩の可動範囲が狭かった、といった事例があります。そんな時は基本に立ち返り、上半身や肩周りの動きを再学習することにより、無駄な負荷をかけずにスムーズにボールを速く投げることができるようになります。
運動に対して苦手意識を持ち、子どもの可能性を逃してしまわないためにも、子どものうちからしっかりと身体の土台を整えてあげたいですね。
キッズコアコンディショニングの体操を4つご紹介
肩周りや下半身の動き、体幹を鍛える動きを少しだけご紹介します。教室では、他にも多様な体操を取り入れており、子どもひとりひとりに合わせたメニューが組まれています。
私も子どもと一緒に実践してみましたが、肩周りや腰周りが伸びて気持ちがよく、身体が軽くなりました。体操の名前にある「ひこうき」や「ワニ」になりきってみるのも、子どもたちはとても楽しそうでした。
※下記の説明内にある「カウント」は、各々実践しやすい速さでカウントしてみてください。速くカウントすると勢いがついて簡単です。少しずつゆっくりと、慣らしてみてくださいね。それぞれの体操を30秒〜1分間を1 セットとして、2, 3セット実践すると効果的です。
※記事末に4つの体操をまとめた動画もありますので、あわせて参考にしてください。
ひこうき体操
肩甲骨の安定や、伸筋郡の発達を目的としています。胸郭を広げて身体を安定させるこの体操は、猫背防止・改善に効果的で、野球などボールを投げるスポーツや、バレーボールなど頭の上での動作があるスポーツをしている人にオススメです。
①うつ伏せで両肘をついて体を支える
②右手と左足を斜めに伸ばして戻す(2カウント)
③左手と右足を斜めに伸ばして戻す(2カウント)
④両手両足を大の字に伸ばして体を反らせる (3カウント)
⑤元の位置に戻す (1カウント)
ロケット体操
下半身の動きや、足で支える力を鍛えます(下肢運動連鎖・下肢支持性向上)。重心の取り方が学習でき、股関節の柔軟性UPが期待できるこの体操は、サッカーなど足を使うスポーツをする人にオススメです。
①蹲踞(そんきょ)の姿勢になり、両手を胸の前でクロスする。
②両手を大きく横に振りだして①に戻す(4カウント)
③両手を大きく横に振りながら立ちあがる(2カウント)
④立ち上がったら両手を戻しながら①の蹲踞の姿勢に戻る (2カウント)
ワニ体操
体幹内での重心移動と、股関節の動きをよくすることを目的としています。ワニ体操も、足を使うサッカーなどのスポーツをする人にオススメです。
①うつ伏せになり、体の横で肘と膝を合わせる(2カウント)
②逆側でも同じように行う (2カウント)
③骨盤が浮かないように、①②①と行う(1カウントずつ3カウント)
④うつ伏せ姿勢に戻す(1カウント)
⑤2セット目は反対側から行う
えんぴつ体操
正中軸の学習を目的としています。腹筋背筋のバランスを整えるこの動きは、スポーツのみならず、姿勢をよくするためにも効果的です。
①両手両足が床につかないように伸ばして仰向けになる
②右側に一回転して仰向けになる(4カウント)
左側に一回転して①の位置に戻る(4カウント)
※うつ伏せのタイミングで両手両足が床につかないように
③両手両足を引き付けて丸くなる
④右側に一回転して両手両足を引き付けて丸くなる(4 カウント)
⑤左側に一回転して両手両足を引き付けて丸くなる(4カウント)
☆最後に両手両足を床から浮かせたまま大の字に広げると、インナーユニットを鍛えられます
4つの体操を動画で確認!
ここまでご紹介してきた4つの体操を、下の動画ではまとめて説明しています。ぜひ参考にしてください。
体操以外にも日常生活で工夫できること
0歳・1 歳の赤ちゃんは上手く体操の動きができなかったり、2 歳以上でもなかなか体操に乗り気になってくれない時があると思います。そんなときは、遊びの中で無意識にハイハイの姿勢になるような工夫をしてみてはいかがでしょうか。
例えば、部屋に簡単に設置できるトンネルがオススメです。置いておくだけで、子どもたちは自然とハイハイの姿勢になって遊びはじめます。
市販のトンネルがなくても、家具と家具の間にブランケットなどを掛けたり、段ボールなどでトンネルを自作するのもいいですね。いつもの部屋が秘密基地のようになって子どもたちも大喜びです。
その他にも、室内をデコボコ道に変えるバランスストーンもオススメです。
元気いっぱいな子どもたちにはバリアフリーではなく、わざとデコボコを作った「バリア有りー」にしてみると、アスレチック気分で遊びながら体幹を鍛えられます。
ぜひ、親子で楽しく実践してみてくださいね!
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お話を伺ったのは
2008年より福岡市を中心に子ども(幼児~小学生)の運動神経UPを目的としたスポーツ教室を開催。毎年、福岡市の各体育館(博多区、南区、中央区など)より体操教室の講師依頼を受ける。現在では福岡市で6ヶ所、篠栗町で1ヶ所にて教室を開催中。子どもと保護者、コーチの3者で様々な「HAPPY」を共有しようというコンセプトのもと行っている。
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jimukyoku@jcca-net.com(JCCA事務局)
取材・文/村上詩織