「手ちぎり」料理のメリット
手でちぎった食材には、ほどよい凹凸が生まれます。包丁で切った断面よりも味が染み込みやすくなり、漬物や煮物にすると、柔らかい口当たりとして感じられます。見た目も、なんだか温かみがあるような気がしませんか。
葉物野菜は金気(かなけ)を嫌う!?
「葉物野菜は金気を嫌う」と言われるのをご存じでしょうか。この「金気」とは包丁のことで、野菜の細胞が切断され変色することを指した言葉だそうです。
昔ながらの鉄包丁で野菜を切ると、かすかに鉄分のにおいや、味を感じることがあったようです。昨今の主流はステンレス包丁なので、影響はないはず、なのです。ところが、包丁で切った野菜と、手でちぎった野菜と味が違うのは、多くの方が同意される事実です。
トマト、きのこ全般、水ナス、もやし、ハーブ類、にんにく、イワシなどは、手で調理する場面が多い食材として挙げられます。皆さんはどう思われますか?
検証してみて! 丸ごとピーマン
刃物を使わず、ピーマンを丸ごと蒸したこの料理には不思議な旨味があり、苦味も優しくなるような気がします。ぜひ、作ってみてください。
まず最初に、ピーマンを手で押しつぶしてください。
ごま油をひいたフライパンでピーマンを焼きます。
焼き色がついたら、醤油、みりん、酒(1:1:1の割合)、砂糖(0.5の割合)を加え、フタをして蒸し煮にします。
ごま、かつお節をかけていただきます。
ピーマンの中身も、ヘタもそのままで、ガブリといただきます。ヘタ部分は残しても構いません。
包丁で細切りにしたピーマンで作る場合と、全く違う味に感じられる料理の例です。
お手伝いにも! 「手ちぎり」レシピ2選
こんにゃくや、豆腐、きのこ類も、手ちぎりに最適な食材です。
ちぎりこんにゃく
こんにゃくを指先で握るようにちぎってみました。
スプーンでちぎるのも、形が不揃いになって温かみがありますね。
・こんにゃくのアク
こんにゃくには、原料となる芋をすり潰し、四角い形に成形するために使う「凝固剤」が含まれています。強いアルカリの性質を持ち、もちろん、口にしても問題はありませんが、苦味や独特の臭みがあるため、「アク抜き」を施します。
最近では「アク抜き不要」と書かれたものを見かけますが、これには凝固剤がまったく入っていないわけでなく、減らしているだけなんだそうです。
・アク抜きの方法
調理前のこんにゃくをしっかりと塩で揉み、たっぷりのお湯で2〜3分茹でれば、臭みが抜けます。塩で揉むことにより水分が抜け、そこに味が染み込みやすくなる効果もあるので、少し面倒ですが試す価値は大いにあります。
電子レンジなら、こんにゃく100gに対し、500wで2分加熱後、流水で洗うだけで臭みがとれます。
ちぎりこんにゃくのキューキュー炒め
なんてことのない1品ですが、簡単なので作ってみてください。箸休めがあると、よりお箸が進んでしまう、という不思議。お弁当の隅にも、入れてあげてください。
アクを抜いたこんにゃくをフライパンに入れ、中火で乾煎りにします。こんにゃくからキューキュー音がしてくると、水分が十分に抜けています。これが味染みを促す、秘伝のコツ。きのこ類にも応用できます。
火を弱めてから醤油、みりん(1:1.5の割合)を入れ、汁気がなくなるまで炒めます。最後に少量のごま油で香りをつけてください。
豆腐のくずし煮
手でちぎれる食材とは、繊維がなく柔らかいもの。豆腐、しいたけ、三つ葉はこれにピッタリです。
しいたけの軸をはずし、一口大に手で割ってください。
絹豆腐を耐熱皿にのせ、キッチンペーパーに包んで電子レンジ600wで2分加熱します。
鶏ひき肉に酒をまぶしておきます。
鍋に、水、麺つゆ、和風だし、チューブの生姜、鶏のひき肉、しいたけを入れて加熱します。軽く煮立ったら豆腐を加え、最後に片栗粉でとろみをつけます。
器に盛り付け、手でちぎった三つ葉を添えて、いただきます。
手で量る「手量り」
食材を「手でちぎる」調理を見てきましたが、最後に食材を「手で量る」方法をご紹介します。
「手量り」とは
「塩ひとつまみ」とは、「小さじ1/4」に相当する量です。また、「塩ひと握り」は、「大さじ2」。
このように、ご自分の手を使って食材を量ることが「手量り」です。手の大きさは人によって様々ですから、ざっくりとした目安ですが、レシピを見てイメージする時の目安になったり、一日の摂取栄養素を把握したりするためにも、役に立つ量り方です。
100gの食材
卵2個は、おおよそ100gです。スパゲッティひとつかみ、青菜のひとつかみも、100g。きゅうり1本、じゃがいも1個、にんじん1本、りんご1/2個、玉ねぎ1/2個も100g。また、刻んだ野菜は片手に1杯で100gです。
炊いたご飯だったら、お茶碗に1杯が150gなので、小盛りで100gです。なんとなく覚えておくだけで、便利ですよ。
大さじ1杯の水は、片手で何杯か知ってますか?
片手をお椀状にして、計量スプーンの代わりとして使う、上級編の技があります。長年に渡り、家庭料理を作り続けた方が、経験を積み重ねながら身につけた計量方法で、とてもユニークなのでご紹介します。
大さじ1杯の水を、お椀状にすぼめた手のひらに移すと、おおよそ3回に分けてなくなります。つまり、大さじ1杯(15ml)の液体は、手のひらでおおよそ3杯分なのです。水を醤油、みりん、お酒などの調味料に置き換え、調理の際に使ってみてください。計量スプーンを使わずに味付けができ、そのまま混ぜる作業に進むことができます。
もちろん、手の大きさはそれぞれ違います。また、液体の量も毎回ぴったり同じようには入りません。経験を重ねて慣れることが必須です。興味がある方は、大さじ1杯の水を量ってみるところから、試してみてください。
大鍋の前に立って、大瓶の調味料を空いた手にザブザブと流しながら調理をする、肝っ玉母ちゃんのような知恵ですが、これもまた、不思議と温かみのある料理に仕上がります。参考にしてみてください。
五感を刺激する「手ちぎり」
サラダの葉物や、海苔、薬味の大葉など、手ちぎりができる食材は多くあります。手でちぎる感触や、立ち上る香りを確かめながら、おいしい料理に仕上げてください。
お子さんにやってもらえば、料理に対して格別の興味がわくことでしょう。そんなふうに、五感を刺激されながら手伝った思い出は、大人になるまで残るものです。ぜひ普段の調理に取り入れてみてください。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)