「一陽来復」の意味は?
「一陽来復」という言葉を聞いたことがありますか? あまり日常的に使う言葉ではありませんが、漢字からポジティブな印象を受ける人も多いのではないでしょうか。
まずは、「一陽来復」について、読み方や意味を確認しましょう。
1:11月/冬至
「一陽来復」は「いちようらいふく」と読みます。意味は主に3つ。一つ目は、太陰暦の11月または冬至。
太陰暦とは、月の満ち欠けを基準にした暦のこと。日本の旧暦がそれにあたります。一方現在使われているのは、地球が太陽を一周する時間を一年と数える太陽暦。
古代中国に始まった易(えき)という占いでは、万物を陰と陽に分けて考えます。「太陰暦の10月には陰が極まり、翌11月に陽が生じる」という考えから、11月または、11月に含まれる冬至を「一陽来復」と呼んで祝ったそう。
「冬至」は、一年の中で最も日が短い日。翌日からどんどん日が長くなることからも、「陰が極まり、陽が生じる」ことをイメージできますね。
2:春が来ること/新年が来ること
二つ目の意味は、冬が去って春が来ること。また、新年を迎えること。
こちらも、寒く暗い冬が終わって、温かく明るい春が来る様子や、輝かしい新年が訪れる様子が「陽」のイメージと結びつきます。
3:悪いことが続いたあと、ようやく良い方向に向かうこと
三つ目の意味は、1や2の意味が転じて「悪いことが続いたあと、ようやく良い方向に向かうこと」。
一見、3つの意味はそれぞれ別物に見えましたが、陰から陽に、冬から春に、そして悪いことからいい方向に、根本のイメージはすべて同じであることがわかりますね。
使い方を例文でチェック!
「一陽来復」の「復」には、陽や春や、良いことが「再び」巡って来る、という意味が込められています。そのため、「復」を「福」と書き間違えないように注意が必要。
次は、「一陽来復」が持つ3つの意味のうち、最後の「悪いことが続いたあと、ようやく良い方向に向かうこと」に注目して、使い方を例文でチェックしましょう。
1:一陽来復する
「一陽来復」という四字熟語に「する」を付けて、動詞として使うことができます。
例えば、「病気がちだった彼女の最後の手術が成功し、一陽来復した」。「する」を付けなくても、「これで一陽来復、安心したよ」と言うことも可能です。
2:一陽来復の兆し
悪いことのあとに、良いことが起こりそうな気配を感じたら、「一陽来復の兆し」という表現も。
「これまで失敗続きだったが、優秀なアドバイザーに出会えて、一陽来復の兆しを感じた」などと言えます。
3:一陽来復を願う
悪いことが続くと、次はうまくいきますように、と祈りたくなるもの。そんな時は、「一陽来復を願う」と言いましょう。
例えば、「最近は何をやってもうまくいかないので、一陽来復を願っている」との表現が可能です。
類語や言い換え表現は?
「一陽来復」は、物事が良い方向に向かうという縁起のいい言葉。類語や言い換え表現には、どのようなものがあるのでしょうか? この機会に、似た意味を持つ四字熟語やことわざを確認しておきましょう。
1:苦尽甘来
「苦尽甘来(くじんかんらい)」とは「苦しい時が去り、楽しい日々がやって来ること」。
「苦尽」には文字通り、「苦労をし尽くす」という意味があることから、若干ニュアンスが異なりますが、「一陽来復」とほぼ同じ意味と言えるでしょう。
2:起死回生
「起死回生(きしかいせい)」とは、「絶望的な状況から、再び立て直すこと」。死んでしまいそうな人を生き返らせるという意味から転じて、そのような意味が生まれました。
これも、「一陽来復」とは若干ニュアンスが異なりますが、「一陽来復」よりも聞き馴染みのある言葉であり、使いやすいのではないでしょうか。
3:禍福は糾える縄の如し
「禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)」とは、「良いことと悪いことは、寄り合わさった縄のように、交互にやって来る」という意味のことわざ。
漢字も難しく、あまり聞いたことがないという人も多いかもしれません。「吉凶は糾える縄の如し」と言い換えることも可能。
対義語や英語表現は?
「一陽来復」とは対極の意味になる言葉には、どんなものがあるでしょうか? 例えば「楽あれば苦あり」。これは、「一陽来復」とは逆に、「楽しいことのあとには苦しいことがある」という意味のことわざ。しかし、「苦楽は相伴う」という意味もあるため、そういった点ではむしろ類語とも言えるかもしれません。
英語表現に関しては、「一陽来復」とまったく同じ意味を持つ単語やイディオムはありません。しかし、「swing from the negative to the positive」と言うことで、「一陽来復」が持つ「悪い状況から良い方向に向かう」という意味を伝えることができます。ちなみに、「冬至」は英語で「the winter solstice」です。
「一陽来復御守」とは?
「一陽来復御守」というお守りをご存じですか? 「お金の巡りが良くなるように」という願いが込められており、商売繁盛や金運上昇のお守りとして人気があります。
最後は、「一陽来復御守」について、いつ・どこで買えるのか、おまつりの仕方なども解説します。
頒布場所と時期
「一陽来復御守」は、東京都新宿区西早稲田にある「穴八幡宮」において、冬至から節分までの数ヶ月間のみ頒布されています。郵送は不可であるため、直接参拝しましょう。
おまつりの仕方
「一陽来復御守」をいただいたら、冬至、大晦日、節分のいずれか1日のうち、その日が終わる12時ちょうどにおまつりします。
場所は、自宅であれば家族が集まる居間の壁や柱。方角は、その年の恵方に「一陽来復」の文字が向くようにして、のりなどで貼り付けます。
冬至や節分の日にちや恵方は、暦によって異なるため、「一陽来復御守」と一緒にいただける説明書で確認することをおすすめします。
一陽来復懐中御守
自宅や会社におまつりする「一陽来復御守」とは違い、財布の中で1年間おまつりする「一陽来復懐中御守」もあります。
財布に入れるタイミングは、特に指定がないようです。せっかくなら「一陽来復御守」と同じように、冬至、大晦日、節分の日付が変わる瞬間に入れてもいいかもしれませんね。
最後に
あまり聞き馴染みがない四字熟語「一陽来復」について、言葉の意味から使い方、さらにお金の巡りをよくする「一陽来復御守」まで解説しました。
お守りに関しては、名前がよく似た「一陽来福」というお守りを頒布している神社もあるようですが、直接的な関係はないそう。それぞれ別の神様として、ありがたくおまつりするのが良さそうです。
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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)