「一蓮托生」はもともと仏教用語? 間違って使わないために、例文・類語・英語表現をチェック

「一蓮托生」の読み方は「いちれんたくしょう」で、意味は「運命を共にする」。結婚式のスピーチや、チームを一致団結させる時などに使われる言葉です。今回は、「一蓮托生」という言葉について、意味から由来、例文、類語、英語表現まで紹介します。

「一蓮托生」とは?

一見難しそうな「一蓮托生」という言葉。あまり馴染みのない言葉ですが、もしかしたら結婚式のスピーチなどで聞いたことがあるかもしれません。「一蓮托生」の意味や由来をさっそく見ていきましょう。

読み方と意味

「一蓮托生」の読み方は「いちれんたくしょう」です。意味をわかりやすく言うと「運命を共にする」。結果がどうなろうと、最後まで行動を共にしたり、一生添い遂げたりすることを表します。

「一蓮托生」の「一蓮」とは、ひとつの蓮の花のことで、「托生」とは、他に身を任せて生きること。この2つの言葉で成り立っています。

「一蓮托生」は、良い意味でも悪い意味でも使われる言葉。良い意味で使われるパターンとしては、結婚式のスピーチなどで「一蓮托生の夫婦となって、いつまでも仲良く過ごしてください」など。悪い意味としては、例えばドラマなどで、「こうなったら一蓮托生よ。どこまでもついていくわ」などと使われます。諦めを感じさせるセリフで、ネガティブなニュアンスが含まれていますね。

由来・語源

「一蓮托生」はもともと仏教用語です。仏教用語では、「極楽浄土に行った人は、同じ蓮の花の上に生まれ変わる」という意味。男女も国籍も、亡くなった順番も関係なく、極楽浄土では神聖な蓮の花の上にいられることを表します。

これが転じて、現在では「結果はどうであれ、運命を共にする」という意味でも使われるようになりました。

使い方を例文でチェック!

「運命を共にする」という意味の「一蓮托生」は、日常生活の様々なシーンで使えます。ただし、使うシーンによってはポジティブにもネガティブにも捉えられる言葉。実際の例文を見て、使い方のイメージをふくらませていきましょう。

1:夫婦とは、一蓮托生の関係だ。

「一蓮托生」は、「一蓮托生の関係」という表現で使えます。「一蓮托生の関係」とは、「運命を共にする関係」という意味。

このほかにも、「一蓮托生の仲」「一蓮托生の間柄」「一蓮托生の身」といった表現もあります。夫婦に対して使われることが多いですが、恋人同士に対しても使えますよ。

2:一蓮托生で、大会優勝を目指そう。

「一蓮托生」は、夫婦だけではなく、チームや組織においても使えます。この例文は、「チームのみんなで一致団結して頑張ろう」といったニュアンスです。何かに挑戦する時に、チームのみんなの団結力を高める言葉として使えます。

3:自分の仕事が終わったので帰ろうとしたら、「一蓮托生でしょ」と引き止められた。

この例文は、「職場の仲間は運命を共にしているんだから、みんなで残業して頑張ろう」という意味。関係がしっかりと築けている間柄であれば問題ありませんが、そうでない場合に「一蓮托生」と言う時は注意が必要。相手から嫌がられてしまう可能性もあります。

類語や言い換え表現は?

「一蓮托生」の同義語には何があるのでしょうか? ここでは「運命共同体」「死なば諸共」「一心同体」「蓮の台の半座を分かつ」の4つを紹介します。それぞれ若干意味合いが異なりますので、一つひとつしっかり確認しておきましょう。

1:運命共同体

「運命共同体(うんめいきょうどうたい)」とは、よく聞く言葉ですよね。言葉の意味は、「運命を共にすると誓った人たちや組織のこと」。夫婦やグループなどにおいて、「私たちは運命共同体だ」などと使われます。「運命を共にする」という意味の「一蓮托生」の類義語としてぴったりですね。

例文:「夫とは運命共同体」と言っていたのに、妹は数ヶ月で離婚してしまった。

2:死なば諸共

「死なば諸共(もろとも)」は、「死ぬ時は一緒だ」という意味で使われる言葉です。もとは「死ぬ時は一緒だから、共に頑張ろう」といったポジティブなニュアンスで使われていたそう。しかし現在では、退路が断たれて開き直った際に「お前も道連れだ!」などと、ネガティブなニュアンスで使われることが多いです。

例文:こうなったら死なば諸共だ! お前も道連れにしてやる!

3:一心同体

「一心同体(いっしんどうたい)」とは、「複数の人が心をひとつにして、ひとりの人間のように堅く結ばれること」。「一心」には「複数の人が心をひとつにすること」、「同体」には「ひとつの体であること」という意味があります。夫婦や恋人、グループなどにおいて、信頼関係で堅く結ばれていることを表す四字熟語です。

例文:仲間のみんなが一心同体で頑張ったから、大会で優勝できた。

4:蓮の台の半座を分かつ

「蓮(はす)の台(うてな)の半座(はんざ)を分かつ」とは、「死んでもひとつの蓮の台座を分け合うほど仲が良いこと」。死後もなお、台座に2人で座っているようすから、仲睦まじさが伝わりますね。

例文:年をとっても仲が良い両親は、蓮の台の半座を分かつと言われるくらいだ。

英語表現は?

「一蓮托生」は日本語特有の表現なので、ぴったりの英語表現はありません。そこで、「一蓮托生」と似たような意味を持つ「運命共同体」や「死なば諸共」のニュアンスを表す英語表現を紹介します。これらを使えば、「運命を共にする」のニュアンスが十分伝わりますよ。

1:common destiny

「common destiny」は「共通の」「共同の」という意味。「destiny」は「運命」です。つまり「common destiny」で「運命共同体」を表します。

例文:They share a common destiny.(彼らは運命共同体にある)

2:be in the same boat

「be in the same boat」は、直訳すると「同じ船に乗っている」という意味。つまり、「同じ運命を共にしている」「運命共同体」というたとえで使われるフレーズです。

例文:We’re in the same boat.(私たちは運命共同体だ)

3:Die all together.

「Die all together.」は、「みんなで一緒に死ぬ」。つまり「死なば諸共」の英語表現になります。日常生活では使う機会はあまりないかもしれませんが、知識として覚えておくといいでしょう。

例文:You got nowhere to go. Die all together!(どこにも逃げられないぞ。死なば諸共!)

最後に

今回は、「極楽浄土に行った人は、同じ蓮の花の上に生まれ変わる」という意味が転じ、「運命を共にする」という意味の「一蓮托生」について解説しました。友人の結婚式や、両親の結婚記念日などで使うと、「いつまでも仲の良い夫婦でいてくださいね」といった気持ちを伝えられますよ。

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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)

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