「諸刃の剣」とは?
「これは諸刃の剣だ」というフレーズを聞いたことはないでしょうか。「諸刃の剣」は、「役に立つがリスクもある」という意味です。まずは、言葉の読み方や意味、由来を見ていきましょう。
読み方と意味
「諸刃の剣」の読み方は「もろはのつるぎ」です。「もろはのけん」と読むのは間違いなので、注意しましょう。
言葉の意味は、「役に立つものではあるが、害を与えることもある」。それを実行したり使ったりすることで、大きな利益を得られる一方で、大きなリスクも伴うことをさします。
例えば、効果は高いものの副作用も強い薬などは「諸刃の剣」といえるでしょう。
ちなみに、子どもにも大人にも人気なカードゲーム「遊戯王」でも、「脆刃の剣」というカードがあります。このカードは、自分の攻撃力を一気に上げる効果があるものの、攻撃する度に自身もダメージを受けるというもの。さらに、2000以上のダメージを受けると自壊してしまう効果も。こうした脆さがあるので、「諸刃」ではなく、「脆刃」という漢字をあてているそうです。
由来・語源
「諸刃の剣」の語源は、両辺に刃がついた剣「諸刃」。諸刃は、両辺に刃がついているため、相手を切ろうとして振り上げると、自分自身を傷つける可能性があります。このことから、「役に立つものであるが、リスクもある」という意味の「諸刃の剣」という言葉ができたのです。
使い方を例文でチェック!
続いて、「諸刃の剣」の使い方を例文で紹介しましょう。「諸刃の剣」には、「役に立つが、リスクもある」「利益があるが、それ相応の損害もある」という意味でしたね。
以下の具体的な例文を参考にしてみてください。
1:スマホは役に立つものだが、依存してしまう子もいるため、諸刃の剣だ。
「諸刃の剣」は、「役に立つものだけれども、同時に危険を伴う」という意味で使えます。
スマートフォンは、居場所をGPSで確認することもできるので、防犯という点でとても役に立つものです。しかし、一日中スマートフォンを使用してしまうなど、子どもがスマホ依存になってしまう可能性も。スマートフォンはまさに「諸刃の剣」といえるかもしれませんね。
2:この商品は、売り出せば大ヒットは間違いないがブランドイメージを損なう面も。諸刃の剣といえるだろう。
「諸刃の剣」は、「利益を得られるが、同時に損失も伴う」という意味でも使えます。
売れば大ヒット間違いなしの画期的な商品は、経済的な利益は約束されていますが、その商品がこれまでのブランドイメージを損なうようなものの場合、ブランド戦略としてはデメリットも。成功か損失かの二者択一という場合よりも、成功と損失が同時に生じる場合に「諸刃の剣」という表現がしっくりきます。
3:言葉は諸刃の剣にもなりえる。
人を勇気づけたり励ましたりできる時もあれば、ふいに言った一言で相手を傷つけてしまうこともあります。言葉も、「諸刃の剣」といえるでしょう。
類語や言い換え表現は?
「諸刃の剣」の同義語は、「両刃の剣」「ハイリスクハイリターン」「痛みを伴う」などです。「諸刃の剣」の言い換え表現を知っておくと、語彙力がグンとアップしますよ。
それぞれの言葉の意味や。使い方を紹介しますので、この機会に覚えておきましょう。
1:両刃の剣
「両刃の剣」とは、「りょうばのつるぎ」と読みます。漢字から予想できる通り、「両刃」とは、両辺に刃がついた剣のこと。意味は「相手に打撃を与えられるが、自分自身もそれなりのダメージを受ける」です。
「諸刃の剣」と違いはなく、ほとんど同じ意味の言葉といえますね。しかし、「両刃の剣」よりも「諸刃の剣」の方が、広く使われています。
例文:能力は高いが素行の悪い○○さんをチームに入れるのは、両刃の剣だ。
2:ハイリスク ハイリターン
「ハイリスク ハイリターン」は、投資でもよく使われる言葉ですね。「ハイ(=高い)」「リスク(=危険)」「ハイ(=高い)」「リターン(=利益)」で、つまり「損失する危険が大きいが、得られる利益も大きいこと」をあらわします。
例文:この株式証券はハイリスク ハイリターンだ。
3:痛みを伴う
「痛みを伴う」は、その漢字の通り「身体的な痛みもある」という意味もありますが、比喩的に使われることが多い言葉です。
例えば、「改革には痛みを伴う」という表現は、改革によるメリットが担保される一方で、苦労や困難など心の痛みも伴うというニュアンスを含みます。
例文:すべてを捨てての再出発は、痛みを伴う経験だった。
4:一長一短
「一長一短」は、ひとつの物事に良い面と悪い面が対で備わっていることを言います。
この場合の悪い面とは「諸刃の剣」で表すようなリスクや損失といった危険なものとは限りませんが、メリットとデメリットが同居するという意味で「諸刃の刃」に近い言葉と言えるでしょう。
例文:鉄製のフライパンは丈夫だけれど重くて、一長一短だ。
対義語は?
ここでは、「諸刃の剣」とは逆の意味になる言葉を考えてみます。対義語にあたる言葉を探してみることで「諸刃の剣」という言葉への理解がさらに深まるはずです。一緒に見ていきましょう。
1:毒にも薬にもならない
「毒(どく)にも薬(くすり)にもならない」とは、「害もないが利益もないこと」。邪魔にはならないものの、役に立たないことをあらわします。あってもなくても何も変わらない、つまり無意味なものともいえますね。「諸刃の剣」は、「害は大きいが、とても役に立つもの」ですので、反対の言葉といってもよいでしょう。
例文:とても優しくて良い人なんだけど、毒にも薬にもならないのよね。
2:ローリスクローリターン
「ローリスクローリターン」は、「ハイリスクハイリターン」の反対の言葉。「ロー(=低い)」「リスク(=危険)」「ロー(=低い)」「リターン(=利益)」で、危険度も低いが、得られる利益も少ないという意味です。
例文:初心者なら、ローリスクローリターンの商品から始めるべきだ。
英語表現は?
「諸刃の剣」は、「two-edged blade」「double-edged sword」で表現できます。また、「賛否」や「長所と短所」といった意味の「pros and cons」でも「諸刃の剣」のニュアンスが伝わりますよ。
・This plan could be a double-edged sword.(このプランは、諸刃の剣になるかもしれない)
・This new service has pros and cons.(この新しいサービスには長所も短所もある)
最後に
「役に立つものではあるが、害を与えることもある」という意味の「諸刃の剣」について解説しました。
「諸刃の剣」は、日常生活はもちろん、ビジネスシーンでも使われる言葉です。とっさに言われて「どういう意味?」とならないよう、この機会に意味をしっかり覚えておきましょう。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)