日本の川の特徴とは
日本の川の特徴は、世界の川に比べて急流であることと、水質がきれいなことです。
世界の川より短くて角度が急
日本は南北に長い島国で、中央には標高1,000~3,000mもの山々が背骨のように連なっています。山々の土壌に浸透した雨や雪は、川を通して日本海側と太平洋側に分かれて流れていきます。日本の国土は平地が少ないため、川の流れは急で、水源地から河口までの距離も短いのです。
そのため、梅雨や台風などで大雨が降ると水量は一気に増え、洪水や氾濫の危険にさらされます。ヨーロッパの大河・ドナウ川では洪水時の水量は通常の4倍程度、アメリカのミシシッピ川では3倍程度ですが、日本の川の水量は数十倍から100倍にもなります。
森林の機能により川の水がきれい
よく日本の川の水はきれいだといわれますが、それは森林のおかげです。「水源涵養機能(すいげんかんようきのう)」といって、森林が持っている機能の一つです。
森林の土にしみ込んだ雨水は、土の中を通っている間にろ過されます。雨水に含まれているリンや窒素は土壌に残り、そこで生育する植物に吸収されるため、残るのはミネラルを多く含んだきれいな水となるのです。ミネラル豊富な水は、川や海の生きものにも良い影響を与えます。
水がきれいな国としては、アイスランド・カナダ・スウェーデンなどがあり、いずれも豊かな森林を抱えている国です。
全長が日本一長い川・短い川
水源地から河口までの距離を「流路延長」といいます。この流路延長が日本一長いのは、どの川なのでしょうか。日本一短い川もあわせて見てみましょう。
日本で一番長い川は「信濃川」
長さ日本一は、流路延長367kmの「信濃川(しなのがわ)」で、長野県と新潟県を通って日本海に流れます。信濃川は新潟県と長野県の県境で名称が変わり、長野県では「千曲川(ちくまがわ)」と呼ばれています。
新潟県内では「信濃(長野の昔の国名)から流れてくる川」という意味で信濃川と呼ばれており、上流に位置する長野県では「曲がっているところが多い」ので千曲川と呼ばれるようになったという説が濃厚です。
日本で一番短い川は「ぶつぶつ川」
日本で一番短い川は、和歌山県那智勝浦町(なちかつうらちょう)の粉白(このしろ)区を流れている「ぶつぶつ川」です。長さは13.5mで川幅は1mほど、水深は30cmもありません。
名前の由来は、気泡をともなってぶつぶつと水が湧き出る様子といわれています。1918年に発行された「下里村誌」には、この川を「俗にぶつぶつと称す」旨が記されています。
2008年に二級河川に指定された際に、日本一短い川となりました。
ちなみに、一級河川で日本一短い川は、静岡県駿東郡(すんとうぐん)清水町を流れる「柿田川(かきたがわ)」で、長さは1.2kmです。柿田川は国の天然記念物に指定されており、日本三大清流にも数えられています。
流域面積が日本一広い川・狭い川
「流域面積」といわれると、「川の水が流れているところの広さ」をイメージするかもしれませんが、実はそうではありません。雨が降ると、雨水はまず土に浸み込んでから川などに流れ出ます。その雨が浸み込む土の面積のことを流域面積といいます。
日本で一番流域面積が広い川は「利根川」
流域面積の日本一は群馬県の「利根川(とねがわ)」で1万6,840平方kmです。群馬県のほぼ全域と、栃木・茨城・埼玉・千葉・東京の各都県の一部が利根川の流域です。これは関東平野の北半分に相当します。
現在の利根川は群馬県大水上山(おおみなかみやま)を水源地とし、千葉県と茨城県の県境にある銚子市の河口から、太平洋へと流出します。
しかし、江戸時代以前は東京湾に流出していました。これほど大きく利根川の流路が変わったのは、1590年に徳川家康が江戸に入ってからのことです。水田地帯を洪水から守り、銚子からの水運を充実させる目的で、約60年かけて利根川の流れを変える工事が行われました。
日本で一番流域面積が狭い川は「土器川」
流域面積が日本一狭い川は、香川県丸亀市を流れる「土器川(どきがわ)」です。土器川の流域面積は127平方kmで、丸亀平野を通って瀬戸内海に流れ出ます。
流域面積が狭いことから水量も少なく、普段はジャンプすれば簡単に渡れる場所もあるほどです。そのため、平時の水は少なく水不足に悩まされる反面、大雨が降ると増量した水を受け止めきれず、洪水被害が頻発するという特徴があります。
土器川が流れる丸亀市は平安時代からひらけた地域で、古代遺跡も多く存在します。土器川の名前の由来は、このあたりに土器を作る人々が住んでいたからとされています。
勾配が日本一急な川
勾配(川の上流と下流の高低差)が大きいほど、川は急流・激流になります。勾配が日本一急な川はどこにあるのでしょうか?
一級河川の中で日本一の勾配「常願寺川」
一級河川の中で日本一勾配が急な川は、富山県富山市を流れる「常願寺川(じょうがんじがわ)」です。富山市内の北ノ俣岳(標高2,661m)から、富山市東部を通って日本海に流れ出ます。高低差2,661mの中を56kmの距離を駆け下りるのです。
常願寺川の勾配がどれほど急かというと、日本三大急流に数えられる最上川と比べてみるとわかりやすいでしょう。距離100mのうちに高さが1m変わると、河床勾配(かしょうこうばい:川底の傾きのこと)は1/100となります。急流の最上川でも河床勾配は1/240ですが、常願寺川の河床勾配は1/30です。
明治時代に来日したオランダ人技術者は、常願寺川の流れを見たときに「これは川ではなく滝だ」と言ったそうです。
日本三大急流について
勾配が急だと川の流れは急になりますが、「日本三大急流」といわれる川は勾配が急なだけではありません。川の規模や水運、観光名所などを総合した誉め言葉として、「日本三大急流」と呼ばれています。
日本三大急流は山形県の「最上川(もがみがわ)」、長野県・山梨県・静岡県にまたがる「富士川(ふじがわ)」、熊本県の「球磨川(くまがわ)」です。
いずれの川も、人やものを運ぶのに適した大河であり、急流であるという特徴を生かして水運に利用されてきました。
川幅や河口幅が日本一広い川もチェック
ここまでに川の長さや流域面積・高低差について見てきましたが、最後に川の横幅について見てみましょう。
川幅が日本一広いのは「荒川」
川幅が日本一広いのは、埼玉県の鴻巣市(こうのすし)と吉見町の間を流れる「荒川(あらかわ)」です。
実際に水が流れている幅を川幅と思ってしまいがちですが、そうすると増水時には川幅が変わってしまいます。国土交通省により、川幅は「堤防と堤防の間の距離」と定められています。
鴻巣市と吉見町の間で、荒川の堤防間の距離は最大2,537mです。これは、11両編成の山手線のおよそ10倍にあたる長さと考えると驚くでしょう。「川幅日本一」と書かれた、高さ5mほどのポールが建っているのですぐにわかります。
河口幅が日本一広いのは「富士川」
河口幅の日本一は、「日本三大急流」でも登場した静岡県の「富士川」です。駿河湾に流れ込む富士川の河口幅は1,950mです。新幹線などで上を通過するときにも、富士川の河口の雄大さがよくわかります。
富士川の河口付近は釣り場としても有名で、毎年6月にアユ釣りが解禁されます。川幅が広く日光がよく当たるので、アユのえさとなるけい藻類が繁殖しやすいのです。
また、富士川河口は日本最大級の河口断層帯でも有名です。
身近な情報をもっと楽しもう
さまざまな観点から、日本一の川に関する情報を紹介しました。一口に「日本一」といっても、さまざまな基準があることがわかります。
●長さが日本一長い:信濃川(367km)
●長さが日本一短い:ぶつぶつ川(13.5m)
●流域面積の広さが日本一:利根川(1万6,840平方km)
●流域面積の狭さが日本一:土器川(127平方km)
●勾配が急な日本一:常願寺川(高低差2,661m、長さ56km)
●川幅の長さ日本一:荒川(2,537m)
●河口幅の長さ日本一:富士川(1,950m)
「長い」「広い」などの日本一だけではなく、「短い」「狭い」など反対の意味での日本一を調べてみるのも面白いものです。
住んでいる地域にも意外な「日本一」が隠れているかもしれません。子どもと一緒に、身近な「日本一」を探してみるのはいかがでしょうか。
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構成・文/HugKum編集部