『青い鳥』ってどんなお話?
『青い鳥』はベルギーの劇作家、モーリス・メーテルリンクによる戯曲で、1908年に初演されました。
原題:L’Oiseau bleu(フランス語)、英語表記ではThe Blue Bird
国:ベルギー
作者:モーリス・メーテルリンク
発表年:1908年
おすすめの年齢:小学生低学年~
原作の作者のモーリス・メーテルリンクってどんな人?
モーリス・メーテルリンクは、ベルギーのゲント生まれ。彼は第二次大戦中にナチス・ドイツを非難したため追われる身となり、1940年にアメリカに亡命、戦後の1947年にフランスに戻ります。
メーテルリンクは象徴主義(シンボリズム)に傾倒し、その運動の中心的人物の一人でした。象徴主義の代表作と言われるのが「青い鳥」や「ペレアスとメリザンド」です。
青い鳥=幸せの象徴と言われるのは小説に由来する
物語の中で登場する「青い鳥」は、物語の中での主人公たちが探し求める象徴主義における「隠語的」な存在であり、青い鳥はは「真実」や「幸福」を指しています。この物語の中で頻繁に登場する「ダイヤモンド」「黄金の鍵」などの言葉も、同じように隠語です。
【隠語】
青い鳥=幸せ、幸福
ダイヤモンド=無敵、不屈
黄金のカギ=成功
このような表現方法は、メーテルリンクが理想とした「象徴主義運動」の一つであり、読者や観客は、物語の中でこれらの隠喩されているアイテムが何を指しているのか、メッセージを考えながら、読み進めるのが楽しみだったようです。
なお「青い鳥」は、日本では幸せの象徴とされていますが、海外では希望や平和、愛など、さまざまな解釈があります。メーテルリンク自身、これが正解という答えを書いていませんので、読者は好きなように青い鳥が何をさしているのか解釈して良いのです。読む人それぞれに青い鳥があるのです。
「青い鳥症候群」と表すことも
童話にちなんで呼ばれている、「青い鳥症候群」とは、自分の理想とする仕事や人生と、現実の社会や環境とのギャップに苦悩する病的な精神状態を指します。
現代社会におけるストレスや孤独、経済的な不安定さなどが引き起こす症状の一つと考えられています。
『青い鳥』に出てくる鳥の種類は?
原題のフランス語の題名「L’Oiseau bleu(ロワゾワ・ブルー)」も、英語表記の題名「The Blue Bird」も、ただの「青い鳥」としか書かれていませんが、原作中に”Accrochée au mur, une cage ronde renfermant une tourterelle.” という一文があるため、かごの中の鳥は鳩の一種、キジバトのようです。キジバトは日本でもよく見かける鳩の種類です。
どこにでもいる、珍しくもない「ハト」こそが、幸せを呼ぶ「青い鳥」! 幸せはどこにでもある、という意味合いが込められているのでしょう。
あらすじ
では、あらすじを見ていきましょう。
※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
青い鳥を探しに
幸せの青い鳥を探しに、旅に出る兄妹の不思議な冒険物語です。
貧しい家に住む、兄チルチルと妹のミチルは、明日はクリスマスなのに我が家にはクリスマスツリーすらなく、ご馳走もない、と裕福な向かいの家の豪華なクリスマス・パーティーの様子を窓越しに見ながら、羨ましそうに話しています。
するとそこへ、見知らぬおばあさんが訪ねてきます。娘が病気で「幸せを呼ぶ」という青い鳥を探している、ここには青い鳥はいないかい?と聞いてきます。
チルチルがうちにいる鳥は白い鳥だと説明すると、「では青い鳥を探してきておくれ」と言い、戸惑うチルチルにおばあさんはダイヤモンドのついた帽子をかぶせます。
「帽子に付いたダイヤモンドを回すと魔法が起こるよ」と言われ、チルチルが回してみると、突然目の前がぱあっと明るくなり、たくさんの妖精たちが現れます。
冒険
二人は気が付くと、濃い霧の中にいます。見たことある家が目の前にあり、死んだはずのおじいちゃん、おばあちゃんが住んでいます。
光の妖精はここは「思い出の国」だと言います。おじいちゃん、おばあちゃんの家の窓際で、青い鳥を見つけカゴに入れますが、思い出の国を出た途端、青い鳥は真っ黒になってしまい、ダイヤモンドを回して別の国に行きます。
次に「夜の国」へ。お花畑で青い鳥がたくさん飛んでいました。喜んだ二人は、沢山捕まえて夜の国を出ますが、青い鳥は全部死んでしまいます。なんてことでしょう!
その次の「森の国」でも青い鳥を見つけるのですが、その国を出た途端に、青い鳥が違う色になってしまったり、死んでしまったりします。
最後の「未来の国」で、青い鳥を見つけてカゴに入れていると「時の番人」に見つかり追い出されます。慌ててダイヤモンドを回した二人が次に行った先は……。
家に戻る
気が付くと、そこは自分たちの家でした。
光の妖精は二人に、青い鳥が見つかったので旅は終わりですよ、と言います。二人が手元の鳥かごを見ると、なんとたった今まで「未来の国」で青かった鳥が今度は真っ赤になっているのです。
悲しむ二人に、光の妖精は「きっと本当の青い鳥は違う場所にいるんですよ」と励まし、消えてしまいます。
「二人ともいつまで寝ているの? 今日はクリスマスよ、起きなさい」お母さんの声で、はっと気が付くと二人はベッドの中でした。
するとドアを叩く音がし、あのおばあさんがまた訪ねてきました。
「病気の娘がお宅の鳥をぜひ近くで見たいと言っているので、貸してもらえませんか」と。チルチルが鳥かごを取りに行くと、なんと、家の白いはずの鳥が今度は青くなっています。おばあさんはとても喜んで鳥を借りていきました。
そして、おばあさんの娘さんは青い鳥のおかげで病気が急によくなり、お礼と鳥を返しに来ます。チルチルとミチルは娘さんを見て驚きます。なぜなら光の妖精にそっくりだったからです。
娘さんが鳥かごをチルチルに渡そうとしたときに、鳥かごの扉が開いてしまい、青い鳥が空へ飛んで行ってしまいます。慌てる娘さんに、チルチルが一言「大丈夫、青い鳥はどこにでもいるんです」と言い物語は終わります。
あらすじを簡単にまとめると
要約すると、幸せを呼ぶという「青い鳥」を探しに旅にでるチルチルとミチルの兄妹。青い鳥を探し求めるも、結局捕まえられず家に戻ってきます。すると、家の白い鳥がなぜか青い鳥に変わっている、という、幸せは身近にあるよ、近すぎて気づかない幸せもあるよ、というメッセージが込められている物語です。
主な登場人物
『青い鳥』に出てくる、登場人物をご紹介します。
チルチル
物語の主人公。貧しい家に住む男の子。
ミチル
チルチルの妹。兄のチルチルと一緒に旅をする。
魔法使いのおばあさん
隣の家のおばあさん。青い鳥を探してほしいとチルチルとミチルにお願いする。
光の妖精
チルチルとミチルと一緒に旅をしてくれる道先案内人。
『青い鳥』を読むなら
絵本から児童文庫まで、電子書籍と実の本と、ページ数も様々なものが出版されています。人気の『青い鳥』をページ数順にご紹介します。
はじめての世界名作えほん 56 あおいとり(ポプラ社)
形式: Kindle版 大型本 43ページ 2019/10/7
オールカラー、全送り仮名つき。はじめての読み聞かせをする1歳児から、ひとり読みのできる6歳児まで、子どもたちの成長に合わせてお読みいただける本となっています。
あおいとり (いわさきちひろ・名作えほん) (講談社)
2005/9/23
52ページメーテルリンクの名作をいわさきちひろの美しい絵で。オールカラー24点の絵を収録。漢字あり、ルビあり。
カラー名作 少年少女世界の文学 青い鳥(小学館)
形式: Kindle版 88ページ 2017/9/15
読みやすいオールカラーの電子書籍。漢字があり、ルビはなしのため、テキスト読み上げ機能のあるKindleで、読めない文字を覚えながら読書するのもおすすめです。(機械合成音声です。)小学生中学年~。
青い鳥 (角川文庫)
240ページ 2020/4/15
読みごたえのある量。小学生中高学年からがおすすめです。小学生の漢字が出てきますが、すべてにルビがあります。アニメのような親しみやすいイラストがたくさん入っており、ページをめくるのが楽しくなります。
『青い鳥』の最後はどうなる?(ネタバレ含む)
結局、青い鳥は見つけられたのでしょうか。そして、青い鳥が「怖い」といわれる所以も深堀してみましょう。
チルチルとミチルは青い鳥を見つけられない
冒険の中では何度も青い鳥を見つけるも、色が変わってしまい、どうしても見つけられません。それは「青い鳥」が「本物」ではなかったからだと物語の中で語られます。
しかし、冒険が終って家に帰ってみると、白かったはずの鳥が青くなっています。探し物は実は目の前にあったということです。本当の幸せは目の前にあって実は気が付きにくいものだということをメッセージとして伝えてくれています。
本当の結末は怖い?
『青い鳥』が怖いと言われる理由はどこにあるのでしょうか。
冒険の途中で、探し求めていた青い鳥が目の前に沢山いるので、欲張って鳥かごに何羽も捕まえます。ところが、その国を出ると、その青い鳥はバタバタと全部死んでしまうのです。この「鳥が大量死する」というシーンが怖いと言われる所以かもしれません。
また、最後はチルチルとミチルが青い鳥を取り合い始めた途端、カゴの扉が開いて窓から逃げて行ってしまう、という終わり方になっています。幸せを見つけた、と大騒ぎを始めた途端その幸せが逃げて行ってしまうシーンは、幸せは気づかないほうが幸せだという暗喩かもしれず、そんな隠されたメッセージが怖いともいわれています。
『青い鳥』から得る教訓
上で作品の隠されたメッセージについて触れましたが、もう一度ここで『青い鳥』から得られる教訓をまとめてみましょう。物語には、子どもたちに向けた大切なメッセージが込められています。
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幸福は外見ではなく、自分自身の気持ちの中にある
美味しそうなクリスマスディナーやクリスマスツリーで幸せは測れない。健康である幸せ、愛する家族と一緒にいられる幸せ、温かいご飯が食べられる幸せなど、目の前の「当たり前」を「幸せ」だと感じられるように、自分自身のものの見方を変えなさい、というメッセージ。
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幸福を欲張ると逃げていく
青い鳥を沢山見つけて、喜んで何羽も鳥かごに収めるも、その「国」を一歩出たらその鳥たちは全部死んでしまうというシーンがあります。これはあまり欲張ると「幸せ」は逃げて行ってしまうよ、というメッセージと考えられます。
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真の幸せこそがあなたを幸せにする
青い鳥を見つけて鳥かごに入れても、その「国」を出ると、青かったはずの鳥が赤や黒や違う色になってしまいます。その時「青く」見えた幸せは本物だったのか?ということを示唆しています。これは本当に自分を幸せにしてくれるものは何かというメッセージでしょう。
これらの教訓は、青い鳥に置き換えられた「幸せ」や「真実」などの人生で大事なものは何か、を考えさせてくれます。
本当の幸せとは?を考えさせる本
本当の幸せは目の前に、または、あなたの中にありますよ、というメッセージは、毎日、仕事や育児などに忙殺されている現代人にも、ふと立ち止まるきっかけを作ってくれるのでは。子どもと一緒に親子で読むのもおすすめです。
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文/加藤敬子 構成/HugKum 編集部