そもそもモンテッソーリ教育とはどういうこと?
モンテッソーリ教育と聞くと、「天才を育てる」「子どもの知能を伸ばす」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、そのような教育法ではありません。
今から110年ほど前にイタリアのマリア・モンテッソーリという女性医師によって築き上げられた教育法で、「子どもを尊重して信じる」ことを基盤とし、子どもを観察することを通して理論や方法が築き上げられているのです。私がモンテッソーリ教育を取り入れることをおすすめする理由は大きくわけて2つあります。
おすすめ理由①子どもが生きる力を獲得できる
モンテッソーリ教育は子どもの発達原理がベースにあるので、考え方が「子ども」の姿から出発しています。
「大人が子どもを育てる」にではなく、「子どもが自ら発達していくのを手伝う」ことを大人の役割としているのです。子どもは自由が保障された中で、主体的に自らを発達させていくことができ、さまざまな物事に能動的にかかわることができます。このようなかかわりや環境の中で育った子どもは以下のような力を獲得するのです。
・「できた」という満足感や有能感
・自己選択する力
・主体性
・できなくても諦めない粘り強さ
・問題に気付き解決する力
・物事に取り組む集中力
・自尊感情
・自己肯定感
これらはテストの点数などの数字には表れないこともあるので、見逃されてしまう力かもしれません。しかし、これからの長い人生を生きていくために必要な力であり、「生きる力」として子どもに根付いていく力なのです。モンテッソーリ教育では、この「生きる力」を育むことを大切にしています。
おすすめ理由②大人自身も子育てをしながら成長する
子どもの育ちを助けているようで、実は大人自身が大きく成長できることがモンテッソーリ教育のいいところです。
子育てをしていると忍耐力をもとめられることが多々あります。自分が苦手としていることや自分の弱い部分に直面し、自分自身と向き合う機会が巡ってきますよね。それが辛かったり、苦しいこともありますが、乗り越えるたびに自分の内面が磨かれ、結果として成長することができるのです。
また、「子どもを尊重して信じる」かかわりを意識することで、子どもに対してだけでなく、パートナーや友人など、自分の周りにいる人へも、リスペクトを持ったかかわりができるようになります。
「手出し口出しをしない」を習慣にしてみましょう
モンテッソーリ教育とは、幼稚園や学校などに通わせなければできないことではありません。今までお話したようなことを自分のベースに置いて、子どもとかかわることがモンテッソーリ教育を実践していることになるのです。
その際、みなさんに意識してみてもらいたいと思うのは子どもに「手出し口出しをしない」ということです。具体的にどんなシーンがあるかを見てみましょう。
・自分で靴下を履こうとしているけど、なかなかうまくはけない
・お茶をコップに注ぎたいけど、少しこぼれてしまう
・階段を自分の足でおりたいけど、危なっかしさを感じる
・玄関の鍵を開けたいけど、開け方がわからずイライラしている
・エレベーターのボタンを押したいのに、届かないので大人が押してしまう
「違うよ」「こうして」と、直接直してしまうのは簡単。いかに子どもが自分で気づき、自己訂正することができるか。そのほうが子どもにとって、はるかに価値がある機会なのです。
上記のようなシーンを想像するだけで忍耐力が必要なことのようにも思えます。私自身も「言いたい」気持ちをコントロールして、言わずに見守れた時は「よく我慢したぞ、私!」と、自分を認めていました。このようなことをくり返すうちに、「手出し口出しをしない」ことが習慣となり、今では「言いたい」と思う機会もなくなりました。
これは私だからできたわけではなく、モンテッソーリ教育に触れながら、わが子に向き合うことで、結果として自分と向き合ったからできたことです。
こんな風に普段からやっている子育てにモンテッソーリ教育のエッセンスを取り入れていってみてはいかがでしょう?そうすることで、子どもは「生きる力」を育むことができ、大人は自身がより良い方向に変わっていくことができるのです。
何より、どんな道具も用意することもなく、お金もかからず、おうちにいながらモンテッソーリ教育を始めることができますよ。
詳しくは モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる子育て」の中でもお話しています。ぜひ、こちらも見てみてくださいね。
考え方だけでもモンテッソーリ教育は始められます!
モンテッソーリ教育を取り入れている園に通わせることや、モンテッソーリ教具と呼ばれている道具を用意することなど、どこかに行ったり、何かを準備をしないと始められないと思っていた人も多いのではないでしょうか。 モンテッソーリ教育は、子どもに対しての考え方やまなざしを少し変えてみるだけで始めることができます。
まずは「子どもを尊重して信じる」ことから始めてみませんか?
「おうちでできるモンテッソーリ」言語の敏感期編はこちら
あきえ先生のモンテッソーリ教育の連載はこちら
記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
取材/本間綾