「八面六臂」とは?
あまり馴染みのない「八面六臂」という言葉。まずは、語源とともに、言葉の意味への理解を深めておきましょう。
読み方と意味
この言葉は「八面六臂」と書いて、「はちめんろっぴ」と読みます。「多方面において、著しく活躍すること・ひと」を表す四字熟語です。
由来・語源
「面」は顔、「臂」とは肘のこと。元々は3つの顔と6本の腕を持つ阿修羅像を表す言葉で、「三面六臂」という言葉として、室町末期から使われていました。それがいつしか数が増えて「八面六臂」という言葉になり、「人並み外れた能力」という意味を伴いながら広まったと考えられています。
基本的には褒め言葉。自分に使うと自慢になるので注意!
「八面六臂」は、さまざまな方面において著しく活躍する人・ことを指します。ひとつの分野に限らず複数の分野で結果を残すことや、めざましい活躍を見せたことを表すので、褒め言葉として使うのが一般的です。
一方で、自分に対してこの言葉を使うと、自慢っぽいニュアンスになるので注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
「八面六臂」は、「八面六臂の活躍」のように「活躍」とあわせてひとつの慣用句として使うのが昨今一般的になっています。古くには「八面六臂の働き」という言い方もありましたが、現代では「活躍」との組み合わせのほうがメジャーです。ここからは、そんな「八面六臂」の例文を見ていきましょう。
1:生徒会長を務めながらも全科目で優秀な成績をおさめた彼は、今学期、【八面六臂】の大活躍をした。
勉学と生徒会など、多方面において活躍を見せた人に、このように「八面六臂」という言葉を使うことができます。「活躍」は、「“大”活躍」としてもOK。
2:彼が【八面六臂】の活躍をしてくれたことで、弊社のあらゆる部門の業務がスムーズになっている。
このように、多方面で著しく活躍していることを、「八面六臂の活躍」と言うこともできます。
3:昨年の文化祭で、彼女は実行委員のみならず、部活とクラスそれぞれの催しでも【八面六臂】の働きをした。
文化祭において、実行委員や部活、クラス、それぞれの部門で才を発揮したことを表す例文です。少々古い言い回しになりますが、このように「働き」と繋げて使うこともできます。
類語や言い換え表現は?
「八面六臂」には、似た意味を持つ類語もあります。微妙にニュアンスが異なる部分もありますが、近い表現として、これらの言い回しもぜひ頭に入れておきましょう。
1:多芸多才(たげいたさい)
まずは、「多くの分野において優れたスキルを持っていること」を意味する「多芸多才」。「多方面において活躍を見せる人・こと」を表す「八面六臂」の類似表現といえます。
2:獅子奮迅(ししふんじん)
「獅子奮迅」は、「獅子が奮い立つように、周りを圧倒する勢いで活動すること」を意味します。文学作品における戦闘シーン等の描写で登場することがある言葉です。
「八面六臂」が「多方面での活躍」を指すのに対し、こちらは「勢い」を強調した言葉ですが、文章内で「獅子奮迅の活躍」のように使えたり、通常より活躍が秀でていることを表していることからも、似ている表現といえます。
3:縦横無尽(じゅうおうむじん)
「縦横無尽」は、「自由自在」もしくは「四方八方に限りない」「思う存分」といった意味を持つ言葉です。「縦横無尽の活躍」としても使うことができます。「多方面での活躍」を指す「八面六臂」に対して、「自由に」「限りない」というニュアンスが強くなります。
対義語は?
「八面六臂」には、明確な対義語が存在しません。以下では、反対の意味にあたると思われる言葉を集めたので、あわせて確認しておきましょう。
1:器用貧乏
「器用貧乏」は、「中途半端にいろいろなことがこなせるために、かえって大成しないこと」を表す言葉です。「八面六臂」と同様に意識は多方面に向けられているにもかかわらず、「結局何も身に付かないこと」が強調されていることから、ネガティブな意味で使われる点が「八面六臂」と反対のニュアンスをもつといえます。
2:多芸は無芸
こちらも「器用貧乏」と同様に、「さまざまなことをこなせる一方で、結局は何も実らない」といった意味の言葉です。一度に複数のことを手掛けるという点では「八面六臂」と共通していますが、それゆえに「結局は何も極められない」といったニュアンスを持ちます。
英語表現は?
では、英語で「八面六臂」はどのように表現できるのでしょうか。
直訳とまではいきませんが、「八面六臂」に相当する英語表現をチェックしていきましょう。
1:all-round person
“all-round person”には、「多芸な人」という意味があります。「八面六臂」が持つ「多方面で活躍する人」という意味を表すのに適した英語表現といえます。
2:a versatile person
“versatile”という形容詞には、「多芸多才の」「万能な」といった意味があり、“person”と組み合わせることで、「八面六臂」が持つ「多方面で活躍する人」という意味を表すことができます。
3:many‐sided activities
「多方面にわたる」という意味を持つ、“many‐sided”という形容詞。“activities”などと組み合わせることで、「八面六臂」に近い「多方面での活動」といったニュアンスを言い表すことができます。
歴史小説の戦闘シーン等に登場しやすい四字熟語
今回は、「八面六臂」の意味や使い方、関連表現をご紹介してきました。話し言葉としてはあまり一般的ではありませんが、歴史小説の戦闘シーン等では散見される言葉です。覚えておけば、ふいに見かけたときも止まることなく小説を読み進められますね。ぜひ、正しい意味を覚えておきましょう。
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構成・文/羽吹理美