目次
PTAを経験した先輩パパ・ママの公平な意見
PTAの役員をこれまでに引き受けた経験はありますか? PTAに関しては、不要論だとか、完全ボランティア化の動きだとか、外部委託の話だとか、いろいろな議論が耳に入ってきます。
とはいえ、東洋経済新報社が発表した意識調査(回答者は保護者と教員それぞれ600名)の結果によると、なんだかんだで保護者も教員も6割前後の人がPTAを必要だと考えている様子が分かります。
そうなると、読者の皆さんの子どもが在校中に(すでにない場合は別ですが)PTAが完全廃止される可能性は低いと考えたほうがいいかもしれません。
PTAがなくならないのであれば、不必要に恐れず、かといって必要以上に理想化せず、正しく認識してかかわり方を考えたいですよね。
そこで、HugKumでは、小学生のお子さんを持つパパ・ママ765人のアンケート回答者から、実際にPTAを担当した経験を持つ人たちを絞り込み、その人たちに率直な感想を聞いてみました。
苦労したエピソードも感動したエピソードも
まずは、大まかな数字から紹介します。ざっとまとめてカウントしてみると、ネガティブなコメントの総数は246件、ポジティブなコメントの総数は231件でした。
筆者はまず、この数から、ちょっと意外な気がします。ネガティブなコメントはどうしても悪目立ちするので、世の中の主流派は、ネガティブな感想をPTAに対して持っていると思っていました。しかし、実際にPTAを体験した先輩パパ・ママからは、ポジティブな声もたくさん聞こえてくるのですね。
ネガティブなコメントを分類して、件数の多かった順に集計すると次のようになります。
- 第1位・・・作業の負担感(98件)
- 第2位・・・スケジュールの大変さ(55件)
- 第3位・・・人間関係の苦労(45件)
- 第4位・・・くじ引き・役員決め(24件)
- 第5位・・・コロナ禍特有の大変さ(15件)
- その他・・・不慣れ・知識不足・引き継ぎ問題(9件)
一方で、ポジティブなコメントについては、次のようになりました。
- 第1位・・・人間関係(他の保護者や先生)が深まる(138件)
- 第2位・・・感謝とやりがい、学びがある(33件)
- 第3位・・・地域や学校、社会の理解が進む(31件)
- 第4位・・・役得がある(25件)
- 第5位・・・コロナ禍特有の負担の軽さ(4件)
注目は、ネガティブとポジティブ、双方に入っている人間関係でしょうか。一見すると、PTAの人間関係を面倒に感じる人が多そうに見えて、ポジティブな点として挙げている人の多さが意外にも目立ちます。実際に、どのような声が集まっていたのか、次にまとめてみました。
人間関係は苦労か喜びか
そもそもPTA活動は、コミュニティ活動(地域社会あるいは共同体づくり)の1つに数えられます。コミュニティ活動の狙いの1つには、地域の住人同士の関係づくりが当然含まれます。
コミュニティ活動は一見古臭く、面倒臭さも伴うため、次のようなコメントも多く寄せられていました。
上の学年の親との関わりが面倒 [ 東京都・女性 ]
ただでさえ大変なのに、いちいち突っかかってくる人がいて、精神的につらかった [ 群馬県・女性 ]
そんなに知らない人とも一緒にしなければならないので、意見を言いにくい [ 徳島県・女性 ]
過去の風習にとらわれすぎている役員がいる [ 静岡県・男性 ]
地域との関わりが大変 [ 広島県・男性 ]
副会長、会計監査をしたが、一般役員との温度差を埋めるのに苦労した。やりたくなくてやっている人に、ものを頼むのは大変 [ 大阪府・女性 ]
ペアの人が男性なので何を話せばいいかよくわからず、一緒にパトロールとかなんだか微妙だった [ 東京都・女性 ]
モンペ(モンスターペアレント)から自分の子どもが悪いのに申し入れが深夜に何回もかかってきた事です。そんな暇あるならば、ちゃんとしつけをすべきと思いました [ 埼玉県・男性 ]
しかし、地域の人たちとの関係づくりで生じる面倒臭さは、有名な社会学者が指摘するように「きずなコスト」とも考えられます。
面倒な面もあるけれど、その面倒を乗り越えた先には、きずなや連帯がもたらす「ご褒美」が待っているという感じでしょうか。
現に、今回の調査で、PTA活動で得られる人間関係の深まりをメリットに挙げる声は、デメリットとして挙げる人の3倍近くの数でした。
他学年の本部役員の方々とお話しするようになり、学校の情報を含めいろんな方と仲良くなれた。卒業しても近所で会えばお話しする仲です。あとは面倒だと思っていたPTA行事も子どもと参加したら楽しかったことですかね [ 東京都・女性 ]
いろんな人と仲良くなれる [ 愛知県・女性 ]
転校してきたばかりで、お友達も少なかったので、たくさんの方とお話できる機会ができて、子どものことも、学校のことも知れて良かったです [ 福岡県・女性 ]
ママ友が増えた [ 広島県・男性 ]
保護者同士で情報交換できたりと、交流が生まれます。特に感動的なエピソードはありませんが [ 京都府・女性 ]
地域に知り合いが増えたこと [ 大阪府・女性 ]
先生や生徒と関わる機会があり、体育祭などは一緒に楽しめたり感動したりできました [ 愛知県・女性 ]
いろいろな先生とお話しする機会が増えてよかった。特に、校長先生と接し、校長先生の子どもたちへの優しさや想いを知り、この校長先生ならわが子を預けても大丈夫とあらめて思えた [ 埼玉県・女性 ]
学校との連絡が密になる事、先生方と普通に話したり出来るので親密になります [ 東京都・男性 ]
知り合いが増える [ 東京都・男性 ]
校長先生や先生方とお話ができるし、お友達もたくさんできた [ 兵庫県・女性 ]
他学年の役員さんと知り合いになれた。役員の仕事で学校に行くと、子どもが喜ぶ [ 埼玉県・女性 ]
ママ友が増えて、子どもが大きくなっても、ランチなど一緒に行けること [ 岡山県・女性 ]
一年生だったので、知り合いが増えたり先生と話す機会が増えて学校のことがよく分かり良かったです [ 埼玉県・女性 ]
もちろん、人間の集まりですから、地域性による違いがあり、「当たり年・外れ年」もあるはずです。どのようなメンバーが集まるか、どのような保護者が多いかで、得られる喜びもかなり変わってくるとの声も実際にありました。
しかし、この「古臭い」ようにも思えるPTA活動(コミュニティ活動)は意外にも、本来の機能(人間関係の深化)をそれなりに果たしている様子。
東洋経済新報社の意識調査で6割前後の人がPTAを必要だと考えている背景には、人との連帯を通じて喜びを実感できた人が、少なくないボリュームとして存在し続けているからなのかもしれませんね。
各種のPTA業務には、負担感とやりがいのどちらが強いのか
PTA活動がコミュニティ活動の一環である以上、人間関係によって生まれる喜びを、多くの人がメリットに感じている様子が分かりました。
しかし、人間関係が深まり、地域での居場所を見つけられる代わりに、PTAの役割を引き受ければ、何かの作業に動員されるようになります。この作業の手間には関しては、やりがいよりも、きれいごと抜きにして負担と感じる人のほうが多いと、HugKumの独自調査に集まった声を見ていると分かります。
対価が支払われるわけではないPTA活動(コミュニティ活動)を仕事と同列に損得勘定で考えてしまい、負担を余計に感じてしまう人も少なくないようです。
働いているお母さんが多いせいか参加できない人が多く、その分が回ってきた時は正直しんどかったです [ 兵庫県・女性 ]
登校時、旗持ちをする。夏の間はとても暑かった。下に小さい子がいたので、夫と協力しながら行った [ 大阪府・女性 ]
登下校の担当になり、班の編成や新入生のお宅へ登校の仕方や登下校路の説明などに夜伺うのが大変だった。また登下校時の子ども同士のトラブルも逐一連絡が入り、スマホの音にビクビクしていた [ 大阪府・女性 ]
謝恩会では段取りや司会を全てPTAが行うので1年掛かりです。打ち合わせから先生への招待状の発送から当日の担当決めやらとにかく大変でした [ 東京都・男性 ]
長時間、拘束される。会議がダラダラして、簡単なことを決めるのに時間がかかる。もしくは、決まらない。集まることが目的化していることがある [ 東京都・男性 ]
夜19時から地域の商店街のお祭りの見回り。子どもが小さいので時間が遅いのはちょっとイヤでした [ 愛知県・女性 ]
執行部になると、委員会だけでなく卒業式やお悔やみの席にも出席しないといけなくて嫌だった。 [ 愛知県・女性 ]
役員の仕事を最初に聞いていたのだけだと思いきや、市のイベントや講習会に行かないといけないなど後々から分かる仕事が多い [ 兵庫県・女性 ]
ふるさと祭りで、学年ごとにお店を出さないといけなくて、景品の購入などの準備も全てしないといけなかったことが大変でした [ 兵庫県・女性 ]
本部役員会計をしました。とても細かいお金の管理でこれがボランティア活動!? と驚きながら行ってました。仕事をしていてもできるよ。と声を掛けられましたが、実際は仕事を休んだり、夜中までの作業がとても負担でした [ 東京都・女性 ]
ちなみに「大変な作業」として多くの人が具体的に挙げる業務が、広報委員(広報誌づくり)とベルマーク委員だった点は印象的でした。
もちろん、同じ作業に対して、やりがいを感じる人もいるようです。
出来上がった広報誌を見た時は達成感がありました。 [ 東京都・女性 ]
上の子でベルマーク委員の副代表をしたときに、代表の人と教頭先生と協力して、従来のマーク回収方法を改善し、子どもも参加できる方法かつ保護者の負担が減る方法に変更。備品の購入や周知のお知らせなど、実施にこぎつけるまでは苦労しましたが、何年か経った今でも、現在の役員の人などから「本当にありがたい」「画期的だった」などと声をかけていただくので、やって良かったなと思います。 [ 女性 ]
筆者も現在、わが子の小学校で広報委員を担当し広報誌をつくっていますが、本業の技術をそのまま生かせるので、本音を言うと楽しいです。
しかし一方で、広報誌づくりには一定の専門知識が求められます。不慣れな人には余計に負担がかかるはずです。
ベルマーク委員についても、最も楽な仕事と一部で言われる業務ですが、意外にも大変だと感じる人は少なくないみたいですね。
無理なスケジュールや強引な役決め、引継ぎの不十分さが負担感を強めている可能性も
似たようなPTA業務を手掛けながら、負担に感じる人もいれば、やりがいを感じる人もいると分かりました。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
もちろん、各人の性格にも影響するでしょうし、各人の育ち上がり(自分の親がPTAにどのように関与していたかなど)も影響するはずです。
しかし、ネガティブなコメントとして数多く(2位と4位)寄せられたスケジュールの問題、くじ引きなどによる半ば強引な役員決めのシステムなども、この負担感に影響を与えているはず。作業の引継ぎの不十分さも負担感を高める一因かもしれません。
スケジュールの大変さに関するネガティブコメント
平日に全てがあり、休むのが大変です。町内清掃というのはちょっと大変でした [ 東京都・女性 ]
幼い子が居る状況で、夫も帰宅していない時間帯での会議が多く、必然的に子どもたちを同行させなければならなかったこと [ 大阪府・女性 ]
集まり事が多く他の親との時間合わせが大変 [ 大分県・男性 ]
無駄な集まりが多いこと、無駄な方法を押し付けてくる本部の方がいたこと [ 埼玉県・女性 ]
共働き世帯が多いので、集まり時間がもてない [ 熊本県・女性 ]
仕事がある中、学校に行く時間を皆さんで合わせるのが大変でした [ 京都府・女性 ]
集まって作業する際にしゃべってばかりで手を動かさない人が結構多く、早く帰りたいのに時間がかかって嫌だった [ 大阪府・女性 ]
私以外の人が全員フルタイム勤務だったため、集まりが全て土日になり困りました [ 東京都・女性 ]
仕事をしながら、集まって会議を開かれるのが時間作りに苦労した [ 滋賀県・男性 ]
活動が午後7時から2時間位に及ぶ事 [ 新潟県・男性 ]
小学校に入ると仕事をされている方や専業主婦の方など色々いらっしゃるので、仕事の都合で中々参加できない事が続くと肩身がせまくなります [ 神奈川県・女性 ]
自分を含め仕事をしている人が多いので、どうしても平日に集まらなくてはいけない部の活動は気持ちも生活のリズムも負担がかかり封鬱だった [ 千葉県・女性 ]
くじ引き・役員決めに関するネガティブコメント
部長がくじで当たり、バザーの準備が大変でした [ 岡山県・女性 ]
子どもの学校では、後任の役員を自分達で探さなくていけないのでなかなか厳しいものがあった [ 千葉県・男性 ]
次年度のPTA執行部を選ぶ委員を務めていましたが、会長・副会長が留任の年度は良いですが、一から選ぶ時は大変でした。やはり上記の役職を務めてくれる方が出ないと長い時間がかかります [ 東京都・女性 ]
学年が切り替わる時に次の役員さんを探すのにとても大変。うちは共働きでPTAはできないとか片親で引き受けられないとか親を介護してそれどころじゃないと断られる事が多々あり、みんなPTAをやりたがらない [ 神奈川県・女性 ]
くじで学年委員長になった。委員会内の仕事に加え、運営会議にも出てかなり時間を取られた [ 東京都・女性 ]
引き継ぎが誰も手を挙げず長時間化 [ 静岡県・女性 ]
不慣れ・知識不足・引き継ぎ問題に関するネガティブコメント
引っ越ししてばかりで、行事の雰囲気もわからなかったので、苦労した [ 大阪府・女性 ]
毎年何かしらの役員はやるのですが、何をどうしたらいいかのマニュアルがないと動けないので役立たずになりがちです [ 徳島県・女性 ]
低学年で終わらせてしまおうと子どもが小1のときに立候補したら、その後の役員決めで部の部長になってしまい何も分からなかった [ 兵庫県・女性 ]
勝手が分からない事が大きく、細かなルールもあったので逐一確認しながら進めるのが大変でした [ 愛媛県・女性 ]
引き継ぎ資料が詳しくなくて、実際にやる段階になって仕事内容がよく分からないものがあり、確認に困った [ 東京都・女性 ]
誰に何を聞けばいいのか、書類の書き方(配る分に敬称をつけるのどうかなど)など細かいところをどうすればよいのか困った [ 大阪府・女性 ]
学級委員がやること、の通例が分からず、紙に書かれたことだけをやっていたら、こういう時は学級委員が全体に連絡を回すもの、と言われたことがあり戸惑いました [ 福岡県・女性 ]
初めてのPTA役員で学年の会長になったがコロナで前会長との引継ぎもうまくできずに1年間の流れや仕事内容についてもわからないことが多く大変だった [ 大分県・女性 ]
上述したとおり、筆者はわが子の学校で広報委員を務めています。本業と深くかかわる業務なので、印刷会社とのやり取りなどは当たり前にできますが、そうでない場合、広報誌づくりなどはマニュアルがないと、なかなか厳しいと感じます。
仮に、マニュアルがないまま後任の人が、くじ引きで無理やり担当させられたとすれば、しかも人員不足でサポートも得られず、かなりの時間を誌面づくりに割かざるを得なくなったとしたら、やりがいを感じる以前に負担を感じてしまうはずです。
子どもは親の参加を誇らしく思う一面も
やればやったで「古臭い」ながらもそれなりの機能を果たすポテンシャルをPTAは持っているのですから、非効率的な集まりや強引な人事、引継ぎ体制のずさんさなどで、いたずらに負担感を強めてしまってはもったいない印象を受けます。
自分の親がPTAをやる姿を、子どもが喜んでいたというコメントも複数あるくらいですし。
子どもも喜んでくれる [ 福岡県・男性 ]
子どもと一緒に登校できた [ 千葉県・女性 ]
企画を子どもが喜んでいた [ 愛知県・男性 ]
役員の仕事で学校に行くと、子どもが喜ぶ。 [ 埼玉県・女性 ]
ちなみに、コロナ禍におけるPTAの変化については、行事がキャンセルになって楽だったというコメントもあれば、集まりにくく人間関係が構築しにくかったという意見もありました。
コロナ禍にも、いいも悪いも、両方の側面があるみたいですね。
以上、先輩パパ・ママが感じるPTAへの本音を紹介しましたが、いかがでしたか? この春、お子さんの進学・進級を控えている皆さん、とらわれない心でPTAを認識するためにも、ぜひ参考にしてみてくださいね。
構成・文/坂本正敬