浮力の意味・浮力を決める3つの要素
浮力がどのような力なのか、浮いたり沈んだりする理由は何なのか、具体的な例を用いて詳しく解説します。浮力を決める要素の詳細についても確認しておきましょう。
重力に逆らって上向きに作用する力
お風呂やプールに入ると、体が軽くなったように感じませんか? これは水中で浮力がはたらいているからです。私たちの体を含め、全ての物体は空気や水から圧力を受けています。
例えば、水中に立方体を沈めたとしましょう。立方体は全ての面に対して、垂直にかかる水圧を受けます。横からは左右同じ力で押されるため、立方体が横に動くことはありません。
しかし上下の水圧は異なり、上からかかる水圧よりも、下からかかる水圧のほうが大きくなります。このように、水が下から上に向かって、押し上げようとはたらく力が浮力です。
浮力と重力の関係
物体を水中に入れたとき、沈むものと浮くものがあるのはなぜでしょうか。それは物体に浮力だけではなく、下向きに作用する力(=重力)も同時にはたらいているからです。
密度の大きいものには、より大きな重力がかかります。水中で重力と浮力がはたらいたとき、その物体にかかる重力のほうが大きければ沈み、浮力のほうが大きければ水面へ向かって浮き上がります。
重力と浮力が釣り合っている場合は、物体は上にも下にも動きません。物体が水面に浮いていても、水中にあったとしても、その場で静止していれば重力と浮力が等しいことを意味します。
浮力を決める3つの要素
その物体にどれだけの浮力がかかっているか調べるためには、次の三つの要素が必要となります。
・流体(気体)の密度(kg/立方m)
・物体の体積(立方m)
・重力加速度(m/s^2)
密度とは、ある一定の体積あたりの重さのことです。ここでは浮力の計算をしやすくするために、単位を「kg/立方m」と表記していますが、計算する内容によって単位は異なります。
体積とは3次元(縦・横・高さ)へ広がる物体の大きさです。密度と同じく、状況によって単位は変わります。重力加速度は、物体にかかる重力による加速度だと覚えておきましょう。
浮力の大きさの求め方
浮力は、「アルキメデスの原理」「浮力の公式」の2通りの方法で導き出せます。簡単な例を使って、実際に浮力を求めてみましょう。
アルキメデスの原理で求める
アルキメデスの原理とは「浮力の大きさは、物体が押しのけた水の重さに等しい」とする、物理学の法則です。
浴槽ぎりぎりまでお湯をためたお風呂に入ったとしたら、自分の体の大きさの分だけお湯があふれます。このあふれたお湯の重さが、体にかかる浮力と同じというイメージです。
例えば、10cm角の立方体が、容器いっぱいに入った水(密度:1.0g/立方cm)の中に完全に沈んだとします。あふれ出る水の体積は、立方体と同じ10×10×10=1,000立方cmです。
重さ(質量)は体積×密度で求めるため、あふれた水の重さは1,000×1.0=1,000gです。アルキメデスの原理では、このあふれた水の重さがそのまま浮力となります。
浮力の公式にあてはめて求める
浮力の公式はF=pVgです。まずは、それぞれの文字が何を表すのか確認しましょう。
・F=浮力(N)
・p=密度(kg/立方m)
・V=体積(立方m)
・g=重力加速度(m/s^2)
公式を言葉にすれば、浮力は「流体の密度×物体の体積×重力加速度」によって求められるということです。次に、重力加速度を「9.8m/s^2」として、さきほどの立方体の例で考えてみましょう。
浮力の公式では「g」「cm」ではなく「kg」「m」を使うので、先に単位をそろえます。
・密度:1.0g/立方cm=1,000kg/立方m
・体積:1,000立方cm=0.001立方m
公式にあてはめると、浮力=1,000kg/立方m×0.001立方m×9.8m/s^2=9.8Nとなります。
浮力にまつわるQ&A
普段何気なく眺めている風景の中にも、浮力を利用したものがあるかもしれません。知ると面白い、浮力の作用について見ていきましょう。
浮力は水中でしかはたらかないの?
浮力は水中だけではなく、空気中でもはたらきます。例えば、ヘリウムガスを入れた風船が飛ぶのは、重力よりも浮力の方が大きくなっているからです。
ヘリウムで膨らんだ分だけ空気が押しのけられ、その空気の重さと同じだけの浮力が風船にはたらきます。ヘリウムは空気より軽いため、風船にかかる重力より浮力のほうが大きくなるのです。
ただ、空気は上空に行くほど軽くなるため、いつまでも上昇し続けるわけではありません。なお、気球や飛行船が空を飛ぶのも、これと全く同じ力が作用しています。
物体の重さや水深は浮力と関係ない?
浮力に対して水深が影響することはありません。水深がどれくらいであっても、物体の上下にかかる水圧の差は変わらないからです。
しかし、物体の浮き沈みとなると、物体の重さが関わってきます。浮き沈みは重力と浮力の力関係によるもので、中身がスカスカの物体はぎゅっと詰まった物体よりも軽く、重力の影響が少なくなります。
ただ、物体が浮くのはあくまでも浮力が重力を上回っただけであって、物体にはたらいている浮力の大きさ自体には何の変化もありません。
場所によって浮力が変わるのはなぜ?
プールより海のほうが体が浮きやすいと聞いたことはないでしょうか。プールで泳ごうが海で泳ごうが、自分の体の大きさは変わりません。違うのは水の密度です。
塩水は水より重いため、体により押しのけられた水の質量(=浮力)が増えます。死海で人がプカプカと浮かぶのは、魚が住めないほど高い塩分濃度のせいです。
なお、重力の大きさは場所によって若干異なりますが、高校までの物理で浮力を求めるときは、重力加速度9.8m/s^2と定められていることがほとんどです。
身の回りのものを使って浮力を考えてみよう
浮力がはたらいていると、動力を使わなくても物体が浮いたり飛んだりします。水中で体が浮かんだり、ヘリウムガスを入れた風船が空を飛んだりするのは、重力にまさる浮力がはたらくからです。
浮き沈みには物体の密度も関わってくるため、パッと見ただけでは浮くか沈むか分からないこともあるでしょう。
浴槽に水を張って、異なる材質のおもちゃや、さまざまな野菜を落とす実験をしてみてはいかがでしょうか。予想を裏切られる驚きや、興味深い発見があるかもしれません。
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構成・文/HugKum編集部