「社会性の敏感期」は自分のいる環境に適応しようとしている
2歳半ごろ~6歳ごろまは「社会性の敏感期」。幼稚園や保育園、家族など自分がいる環境に適応するため、挨拶やマナー、立ち振る舞い、人やものとの関係性などを獲得するためのエネルギーに満ちています。
例えば、コミュニケーションの取り方。日本では、向かい側から知っている人が歩いてきたとして、いきなりハグをしながら「グッドモーニング!」とは、ならない人が多いのではないでしょうか? すれ違う時に会釈をする、「おはようございます」と相手に聞こえるくらいの声で言う。大人にとってこれは当たり前のコミュニケーションの取り方ですが、子どもは大人のこういう姿を見ながら、コミュニケーションの取り方を吸収し、学んでいます。
社会性の敏感期だとは思わず、以下のようなお悩みを持っている方も多いのではないでしょうか?
※敏感期は全部で6種類。こちらの記事もチェックしてくださいね。
ママやパパからのお悩みを紹介!
このような姿が見られることはありませんか?これは「社会性の敏感期」によるものです。具体的にどのようにかかわっていけばいいかをお話しますね。
お悩み①「おはよう」「ありがとう」が言えない
「しつけとしてきちんとできるようにしないと!」という責任感から、挨拶やお礼、お詫びなどはしっかりできるようになてほしいという願いがあるかもしれません。しかし、今まさに挨拶の仕方やいうタイミングなどを吸収している子どもたち。自ら言えるようになるには時間が必要です。
挨拶ができない時の声かけ例
「こういう時は『ありがとう』って言うんだよ。(大人が一緒に)ありがとう」
「今日は先生の目を見ることができたね!」
「〇〇くんにごめんねって言えるかな? ママと一緒に言う?」
子どもは私たち大人の語彙や言葉の使い方を吸収している最中。それは家族での会話はもちろん、お店の店員さんや宅配便の配達員さん、園の先生など、さまざまなやり取りを観察しています。私たち大人は、子どもにとって吸収材料でもあり、モデルでもあるのです。
お悩み②お友達におもちゃを貸せない
今まさに自分を創っている段階の子どもは、自分のやりたいことを満足いくまでやりたい時期でもあり、その経験が必要な時期でもあります。まずは私たち大人が「貸せるべき!」というマインドから「貸せなくても大丈夫」というマインドに変換する必要があります。また、貸すことができないと同時に「貸して」と言うことができず、お友達が遊んでいるおもちゃなどを取ってしまう、なんてこともあると思います。
おもちゃが貸せない時の声かけ例
「貸したくない時は『あとでね』って伝えたらいいんだよ」
「『おわったらかすね』って一緒に言ってみようか?」
「貸して」が言えない時の声かけ例
「これは〇〇ちゃんのおもちゃだから取らないよ。使いたかったんだよね。そういう時は『かして』って言うのよ」
「いきなり取ったら〇〇くんがびっくりするよね。楽しそうなおもちゃだから遊びたかったんだよね。ママと一緒に『かして』って言おうか?」
時には手が出てしまう・物に当たっているような姿が見られることもあるかと思います。その場合、上記のような声かけの前に、手を握る、投げそうなものをつかむなど、ママやパパの身体を使ってまずは制止することが必要。その上で「〇〇が嫌だったんだよね。でも、たたくことはしてはいけないことなんだよ」と、具体的かつ冷静に伝えるようにしましょう。
お悩み③自分のことよりも人のことをやってあげたがる
今までは自分のことしか考えていなかった子どもが、2歳半くらいになると「あれ、みんなここにいたんだ!」と気がつくようになります。そして、人と関わりたい、コミュニケーションを取りたいと思うようになるのです。その気持ちから自分のことはさておき、人のことをやってあげる姿が見られます。
自分のことよりも人のことをやってあげたがる時の声かけ例
「ママの髪の毛を洗ってくれるの?ありがとうね。これを流したら〇〇ちゃんの髪の毛も洗おうね」
「お友達の手伝いをしてあげたんだね。見ていたよ。じゃあ、自分の靴も履こうか!」
「今、〇〇ちゃんは自分でお片付けをしたいんだって。お手伝いがしたかったんだよね。自分のおもちゃのお片付けをして待っていようか?」
基本的には、やってくれたことやその気持ちを受け入れてあげて大丈夫。しかし、同じ年齢のお友達と遊んでいる場合、「私がお手伝いする」「私もする」とかぶってしまうこともあります。その場合は「3個ずつお願い」「今日は〇〇ちゃん、明日は●●ちゃんにお願いしたいな」と、制限をつけながら子どもの気持ちを満たしてあげるようにしましょう。
一生もののコミュニケーション能力のベースを作っている最中
生まれながらにコミュニケーション能力がずば抜けて高い人はいません。「社会性の敏感期」を機に、コミュニケーション能力を少しずつ獲得していくのです。
今回のお悩みにあった「挨拶をしない」「おもちゃを貸せない」「自分よりも人のことをしてあげる」など、その最中にいると気になるかもしれません。しかし、このような行動は、コミュニケーション能力を培うために必要な行動と考えるだけで、モヤモヤがすっきりすることもありますよね。
そして、子どもは大人の会話をよく聞いています。「こういう言葉遣いはしてほしくない」「挨拶は大きな声でして欲しい」「お友達と仲良くしてほしい」そのように思うなら、まずは私たち大人の言動を意識していくようにしましょう。
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記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
取材/本間綾