「慣性」って何だろう? 運動の法則について分かりやすく解説【親子でプチ科学】

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「慣性」は日常生活でもひんぱんに感じられる、物体が持つ基本的な性質です。乗り物が急発進したときに体が傾く現象は慣性によるものですが、なぜそうなるのかを言葉で説明するのは少し難しいかもしれません。慣性の意味や身近な例を、分かりやすく解説します。

慣性って何だろう?

慣性とは、物体のどのような性質を指す言葉なのでしょうか。慣性の存在を発見した学者の情報もあわせて見ていきましょう。

物体が持つ運動に関わる性質

物体には「外部から何らかの力が働かない限り、その運動状態を変えない」性質があります。慣性は、物体が持っているこうした性質を表す言葉です。

外部から働く力とは、静止中の物体を押したり引いたりする力や、運動中の物体にかかる摩擦力・空気抵抗などを指します。「運動状態を変えない」とは、静止中の物体は静止を続けようとし、動いている物体はそのまま動き続けようとすることを意味しています。

動いている物体については、動く速度も向きも変化しません。外部からの力が働かない限り、同じ速さで真っすぐに進む「等速直線運動」を続けます。

外から力を加えなければ、静止した物体は「静止」したまま。動いている物体については、速度も方向も変わらない「等速直線運動」を続ける。これを慣性の法則という。
外から力を加えなければ、静止した物体は「静止」したまま。動いている物体については、速度も方向も変わらない「等速直線運動」を続ける。これを慣性の法則という。

ニュートンがまとめた運動の3法則の1つ

慣性の存在を発見したのは、イタリアの物理学者ガリレオ・ガリレイ(1564~1642年)です。ガリレオは物事を検証するために実験の手法を初めて用いた学者で、「近代科学の父」とも称されています。

物体が慣性を持つことを発見したのも、実験の賜物でした。ガリレオの発見は、後にイギリスの物理学者・数学者のアイザック・ニュートン(1643~1727年)によって、法則として整理されます。

ニュートンがまとめた「運動の3法則」のうち、第1法則に該当するのが「慣性の法則」です。なお運動の第2・第3法則の概要は以下の通りです。

●第2法則(運動の法則):物体に外から力が作用すると、力の向きに加速度を生じる。加速度の大きさは力の大きさに比例し、また物体の質量に反比例する
●第3法則(作用・反作用の法則):物体Aから物体Bへ力が作用する際には、必ず物体Bは物体Aに力をおよぼす。二つの力は同一直線上にあり、また向きは反対で大きさは等しい

慣性を理解できる身近な例を紹介

慣性の存在は、普段の生活の中で簡単に体験できます。小さな子どもでも理解しやすい身近な例を見ていきましょう。

自動車や電車

バスの発車時には、乗客に静止状態を続けようとする「慣性力」がはたらいて「おっとっと」となる。
バスの発車時には、静止状態を続けようとする「慣性力」が乗客にはたらいて「おっとっと」となる。

自動車や電車などの乗り物が急発進したとき、誰にも押されていないのに進行方向と反対向きに体が倒れる現象は、慣性によるものです。

乗り物が止まっているときは、当然乗客の体も静止状態にあります。乗り物が動き出す瞬間は、まだ体が静止を続けようとしているため、進行方向と逆の向きに倒れてしまうのです。

いっぽう、乗り物が走っているときは、乗客の体も動いているため停止する瞬間に体が前方に倒れます。

また動いている電車の中でジャンプをしても、ジャンプ地点より後ろに着地することはありません。この場合も、乗客の体が電車と同じ速度で動き続けようとする慣性が働いています。

なお慣性によって乗客の体にかかる力を、「慣性力」といいます。

エレベーターやジェットコースター

エレベーターやジェットコースターが降下する瞬間、体が浮くような感覚を味わった経験がある人は多いでしょう。この現象にも、物体の持つ慣性が関わっています。

エレベーターやジェットコースターが降下する前は、乗客の体は静止状態にあります。降下を始めた瞬間は体が静止状態を続けようとする慣性力が働くため、宙に浮いているように感じるのです。

ただし浮いている感覚は一瞬だけで、体はすぐに重力によって、降下速度と同じ速さで動くようになります。

遊びやおもちゃ

家の中でできる遊びでも、慣性は簡単に体験できます。機会があれば、子どもと一緒に試してみるとよいでしょう。

例えば「だるま落とし」では、木片を飛ばしたときに上のだるまが静止状態を続けようとして、一瞬宙に浮く様子を観察できます。

だるま落としが家にないときは、テーブルクロス引きを試してみましょう。食器を載せたテーブルクロスを水平方向に思い切り引っ張っても、食器はテーブルから落ちません。だるま落としのだるまと同じく、食器にも静止し続けようとする性質があるためです。

ただし、どちらもやり方を間違えると、事故の恐れがあります。木片が飛ぶ先に人がいないか、テーブルクロスに置く食器が割れない素材かなど、保護者がしっかりと気を配りながら実験するようにしましょう。

「だるま落とし」は慣性の法則を利用した遊び。
「だるま落とし」は慣性の法則を利用した遊び。

慣性の法則を分かりやすく学べる物理の本

慣性の法則に限らず、物理の法則の多くは目に見えないため、子どもにとっては理解が難しいかもしれません。物理で学ぶ法則や原理について分かりやすく解説した本を2冊紹介しますので、親子で読んで話してみるとよいでしょう。

「始まりから知ると面白い物理学の授業」左巻健男

慣性の法則を含め、50の重要な物理法則や原理を楽しく理解できる本です。法則や原理を日常生活と関連付けて示しており、難しい物理学がとても身近に感じられるでしょう。

法則や原理の発見者についても、人物像や発見にまつわるエピソードなどが紹介されており、興味をひきます。慣性を発見したガリレオや、運動の3法則をまとめたニュートンのことも、もちろん紹介されています。

「マンガでたのしむ! 科学の法則」うえたに夫婦

科学のさまざまな法則について、小中学生向けに解説したマンガです。商店街を舞台に、住民たちが難しく感じがちな10個の法則をやさしく解説してくれます。

慣性の法則は第4話に、ニュートンが発見した「万有引力の法則」は第10話に登場します。「フレミングの左手の法則」や「てこの原理」など、教科書でおなじみの法則や原理も解説されており、大人が復習として読んでも役に立つでしょう。

本や日常生活の例で慣性を学んでみよう

慣性は物体が等しく持っている、運動状態を維持しようとする性質です。

人の体も例外ではなく、日常生活のさまざまなシーンで慣性の存在を感じられます。本や身近な遊びを通して、子どもと一緒に慣性だけでなく物理学の法則についての理解を深めていきましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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