『ドリトル先生航海記』ってどんな話? 翻訳したのはあの大作家だった! あらすじと主な登場人物を振り返る

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『ドリトル先生航海記』とは、1922年にイギリスの絵本作家、ヒュー・ロフティングが発表した作品です。動物の言葉が話せるドリトル先生は、博物学者でもありお医者さんでもある人物。そんなドリトル先生が、動物たちと一緒に船の旅に出るストーリーで、世界中の子どもたちから愛されてきています。そんな『ドリトル先生航海記』のあらすじや登場人物、作者の背景などに迫ります。
<上画像:左から『ドリトル先生アフリカゆき』『ドリトル先生航海記』『ドリトル先生のサーカス』初版装丁>

ドリトル先生航海記とは?

『ドリトル先生航海記』は、いつ、だれが作った作品でしょうか?  まず作品がつくられた背景に目を向けてみましょう。

イギリスの小説家ヒュー・ロフティングの作品

『ドリトル先生航海記』をつくったのは、イギリスの小説家ヒュー・ロフティング。アメリカとイギリスで1922年に刊行されました。

ドリトル先生の物語は、『ドリトル先生アフリカゆき』という1作目から始まり、『ドリトル先生航海記』など、さまざまなシリーズが作られてきました。これらは、ドリトル先生が主人公となった児童文学のシリーズです。

『ドリトル先生航海記』装丁(1922年) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Voyages_of_Doctor_Dolittle.djvuより(PD)

原題:The Voyages of Doctor Dolittle
国: アメリカ、イギリス
発表年:1922年
おすすめの年齢:小学校中学年以上

ヒュー・ロフティングってどんな人?

ヒュー・ロフティングは、1886年にイギリスで生まれ、その後アメリカに移り住み、61歳だった1947年に亡くなっています。少年時代から動物や昆虫が大好きで、自宅でも小動物を飼っていたそう。大人になってからは短編小説などを新聞、雑誌などに投稿していました。

第一次世界大戦で戦線に赴いた際、負傷した馬が治療もされないまま銃殺される様子を目の当たりにしたことから、ドリトル先生の「動物の言葉を放せる獣医師」の設定が浮かんだと言われています。

ヒュー・ロフティング by Los Angeles Times – https://digital.library.ucla.edu/catalog/ark:/21198/zz002h9rvw, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=131527747より

いつの時代の話?

『ドリトル先生航海記』の1作目が発表されたのが1922年。著者のヒュー・ロフティングは第一次世界大戦に参加しており、そんな時代につくられた作品です。

ヒュー・ロフティングはイギリス生まれですが、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学し、アメリカ人と結婚し、アメリカで暮らしていた人物です。しかし『ドリトル先生航海記』は、イギリスの小さな田舎の町が舞台となっています。

物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介

『ドリトル先生航海記』はどんな物語でしょうか?  あらすじについて、詳しいバージョンと、簡単に紹介するバージョンの2つでご紹介します。

詳しいあらすじ(ネタバレあり)

イギリスの小さな田舎町に暮らすトミー・スタビンズは、ある日、ケガしたリスを保護しました。そのリスを助けようとしていたところ、ドリトル先生と出会います。ドリトル先生は、なんと動物の言葉を理解できて動物たちとおしゃべりができる人物。先生の家には、そんな先生を慕って、傷ついた動物たちが集まってきているのです。

トミーは次第にドリトル先生を憧れるようになり、毎日のようにドリトル先生の元に通って、助手としてドリトル先生の家に住むようになりました。

そんなあるとき、ドリトル先生が尊敬する博物学者のロング・アローが行方不明になったというニュースを、ゴクラクチョウが教えてくれました。そこでドリトル先生は、助手のトミーと動物たちを連れて、ロング・アローがいるというクモサル島に向かうことにしたのです。

大航海中は、密航する人物に出あったり、なぜか闘牛に参加することになったり、嵐にあったり。波乱万丈の船旅のすえ、ようやくクモサル島に到着しました。すると島で、ロング・アローと再会できたものの、インディアンの戦争に巻き込まれ、ドリトル先生は不本意ながらもクモサル島の王様になってしまうのです。

王様として働き続けていたドリトル先生は、あるとき、巨大なカタツムリを発見。「殻の中に入ってイギリスの家まで連れて帰ってあげる」と言われ、島を捨てることに心を痛めながらも、トミーや動物たちと一緒に巨大カタツムリの殻の中に入ることに。結局、そのまま海底を旅して、故郷の町までたどりつくことができたのでした。

簡単なあらすじ(ネタバレなし)

博物学者のロング・アローが行方不明になったことから、助手のトミーと一緒に航海に出たドリトル先生。ドリトル先生を慕う動物たちと一緒にクモサル島に向かいます。途中では、嵐にあったり、闘牛に参加したり、ハラハラする海の旅が繰り広げられます。そして、ようやくたどり着いたクモサル島で、さらなる驚きの展開が待っていました。

ドリトル先生航海記の主な登場人物

『ドリトル先生航海記』に登場する主な人物もチェックしましょう。

『ドリトル先生アフリカゆき』初版本の内扉。ロフティング自身が描いた。 https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15963573より(PD)

ドリトル先生(ジョン・ドリトル)

ドリトル先生シリーズの主人公は、ジョン・ドリトル。イギリスの片田舎に住むドリトル先生は、動物の言葉がわかり動物とおしゃべりできる能力を持っています。

太った愛嬌のある体形の持ち主で、いつも礼服とシルクハット、ステッキを持っているイギリスの紳士。動物も人間も、子どもも大人も分け隔てなく優しく接しています。

トミー・スタビンズ

『ドリトル先生航海記』のもうひとりの主人公がトミー・スタビンズという少年です。

ケガしたリスを助けようとしていたところ、ドリトル先生と出会ったトミーは、毎日のようにドリトル先生のもとに通って手伝いをするうちに、ドリトル先生のような学者になりたいと思うようになり、住み込みの助手として働いています。

周囲からはトミーと呼ばれていますが、ドリトル先生だけは「スタビンズ君」と呼んでいます。

ロング・アロー

大物博物学者。『ドリトル先生航海記』は、このロング・アローを探すために、トミーとドリトル先生が航海に出ることから物語が始まります。

ドリトル先生の動物たち

ドリトル先生の家には、豚、犬、ねずみ、鳩、フクロウなど、実にさまざまな動物が暮らしています。ドリトル先生は動物たちと言葉を話せることから、ケガを負った動物たちがドリトル先生のもとにやってくるのです。『ドリトル先生航海記』では、そんな動物たちも一緒に航海に出ることになります。

ドリトル先生航海記が読み継がれている理由

ドリトル先生航海記が読み継がれている理由
ドリトル先生航海記が読み継がれている理由

『ドリトル先生航海記』が多くの人に読み続けられているのは、どんな魅力があるからなのでしょうか?

動物と話せる魅力

子どもでも大人でも「動物と話ができたらいいな」と思ったことがある人も多いはず。そんな誰もが一度は思う動物とのおしゃべりができる設定が、ドリトル先生の物語の骨子にはあります。動物たちへのあたたかな愛情とやさしさがあるから、物語を通して、子どもたちに動物への思いやりの心を教えてあげることもできます。

井伏鱒二が翻訳

日本で最初に『ドリトル先生航海記』が発表されたとき、日本の小説家として知られる井伏鱒二が翻訳を行いました。英語を日本語に訳すとき、なかなか日本語にピッタリとあてはまる言葉を見つけるのは難しいものですが、当時の井伏鱒二の日本語訳が絶妙。『ドリトル先生航海記』の温かくユーモアあふれる世界観が、日本に広まるひとつのきっかけになったでしょう。

『黒い雨』『山椒魚』などの名著で知られる井伏鱒二(1898年 – 1993年) https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=62302433より(PD)

全12巻のシリーズ

ドリトル先生のシリーズは、1作目の『ドリトル先生アフリカゆき』から始まり、全部で13の話でできています。『ドリトル先生航海記』は、シリーズの中でも最もメジャーでよく知られているストーリーです。『ドリトル先生航海記』だけに限らず、シリーズのほかの作品も読んでいくと面白いでしょう。

名作「ドリトル先生航海記」を読むなら

『ドリトル先生航海記』やドリトル先生のシリーズに興味を持った方は、ぜひこちらをチェックしてみてはいかがですか?

『ドリトル先生航海記』

児童文学の名作『ドリトル先生航海記』。改めてストーリーをいちから振り返り、楽しんでみて。

『ドリトル先生航海記 新訳』

日本語で読みやすく訳された1冊。子どもが興味を持ちそうなかわいらしいイラストもあって、読みやすそうです。

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動物との冒険も楽しい『ドリトル先生航海記』

海の旅に出るという冒険のストーリーもありながら、動物たちと繰り広げる物語も魅力の『ドリトル先生航海記』。動物やアドベンチャーが好きな子どもはもちろん、親子で一緒に読んでいくのも楽しいのではないでしょうか。

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文・構成/HugKum編集部

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