漢字嫌いだったデザイナーが作った「漢字博士」カードゲームでいつのまにか漢字が好きになる!

1976年より発売が始まったカードゲーム「漢字博士」シリーズをご存知でしょうか?
このゲームは、およそ50年近く販売されているロングセラー商品であり、その上シリーズ累計、150万部以上を売り上げているミリオンセラーの人気商品なんです。
楽しみながら漢字が覚えられると人気の「漢字博士」シリーズの歴史や遊び方のヒント、シリーズ商品などをご紹介します。

「漢字博士」その始まりは? 

「漢字博士 入門編」カード100枚/6歳〜/1650円

「漢字博士」シリーズの作者は、ビジュアルデザイナーで東北芸術工科大学名誉教授の馬場雄二さん。

1975年に銀座ソニービルでの展覧会で「漢字のへんとつくりを組み合わせて遊ぶゲーム」を馬場さんが発表したのが始まりです。

発表されたゲームは当時、朝日新聞などで「デザイナーが漢字ゲームを創作」というように大きく紹介されて商品化へと繋がり、のちにおもちゃ大賞も受賞しました。現在も販売される人気シリーズになっています。

「漢字博士」を作った人は漢字が嫌いだった!?

「漢字博士」の作者である馬場さん、実は子どもの頃は漢字が好きではなかったのだそう。

「『きへんははねてはいけない、てへんははねなければならない」などという、単なる記憶の強制ばかりの退屈な授業への不満が、逆に漢字の面白さや素晴らしさの発見を目覚めさせた」と言います。

デザインの視点から漢字が興味の対象になり、一つのライフワークにまでなってしまったという馬場さん。どんな風にこのゲームを作っているのでしょうか。

「不思議なものを見たり感じたりしたときに、面白くパズルにできないかを考えます。そして先ず、自分で考えたアイデアが面白いかを自問自答してみるんです。自分で面白いと思わないものを、ひとが面白いと思うはずがないですから。それから考えたものを他の人と遊んでみたり、今までに同様のものが無かったかを再確認したりします」(馬場さん)

「漢字博士」はどんな人が遊んでいるの? どんな風に楽しむ?

同封の「漢字一覧表」とカードを照らし合わせながら、かなり集中してます…!

「漢字博士」の販売元である、奥野かるた店の奥野さんに伺いました!

どんな方が購入しているの?

やはり『漢字博士』は、お子さんに漢字を学ばせたくて買っていくという親御さんが多いですね」と言います。

「でも無理に『やる?』といっても、なかなかお子さんはやらないものですよね。まずは大人が楽しそうに遊んでみてください。本来『漢字博士』は大人が漢字を知っていれば知っているほど面白いゲームなんです。その楽しそうな様子を見れば、お子さんも少しずつ興味を持つのではないでしょうか」(奥野さん)

はじめにできた「漢字博士No.1」はへんとつくりを組み合わせるカードが126枚で、白と黒だけの色合いです。これをより親しみやすく改良したものが、2010年に奥野かるた店より発売された入門編です。

「カードを100枚に減らし、サイズも大きめにしました。色は緑と黒にして、文字も大きく見やすいゴシック体に。より幅広い年齢の方に楽しんでいただけるようになった商品です」(奥野さん)

遊び方は無限大、お子さんに合わせて自由にカスタム!

さらにお子さんがよりとっかかりやすいようにするために、遊び方のアレンジも伺いました。

「お子さんの年齢に合わせて、習ってない・覚えてない漢字は避けて始めたり、カード100枚を40枚にするなど初めは枚数を減らして遊ぶのもおすすめです。親御さんの準備が少し大変ですが、『さんずい』と『ごんべん』だけでできる漢字のカードだけを抜き出して遊ぶなどもできます。漢和辞典をひきながら遊ぶのもいいと思いますよ。まずは『やったー!』『できた!』と、これって面白いぞという達成感を持たせることが大事です」(奥野さん)

「漢字博士」にはバリエーションがいっぱい!

馬場さんは「へん」と「つくり」を組み合わせて遊ぶ「漢字博士」だけでなく、「文字デザイン」というくくりで他にも様々なカードゲームを作っています。その中からいくつかご紹介します。

漢字博士 NO.2

カード81枚/6歳〜/2530円

何種類もある「漢字博士」シリーズの1つ。四辺に漢字の「へん」「つくり」「あし」「かんむり」が書かれたカードを、上下左右にパズルのようにつなげていくゲームです。

No.2ということでNo.1よりもっと難しいのでは? と思う方もいるかもしれませんが、実は意外にもそうではないんです。というのも写真を見るとわかるかと思いますが、No.1に比べると使われている漢字の画数が少なく、簡単な漢字が多いんです。

まだ習った漢字の少ない小学校低学年のお子さんの場合、こちらの方がおもしろく感じるという声も多いのだとか。

ちなみに写真は1984年から発売された「漢字博士 NO.2」の最初のデザイン。当初カードが紙ではなく、コルクで作られていて、箱も木箱。積み木などの玩具のような体裁で、デザインにもこだわりを感じます。

まあるい形が可愛い「ことわざ漢字カルタ丸 第①集」

読札44枚、取札44枚/6歳〜/2200円

「藪蛇」「備えあれば憂いなし」「横槍を入れる」など、44種類のことわざを集めた丸い形が可愛いかるたです。ことわざに出てくる漢字の一部を「文字絵」にアレンジしていて、見ているだけでも楽しめます。かるたとして遊ぶ以外に、文字絵を見てことわざの意味を当てるといった、なぞなぞ遊びもおすすめです。中学受験を控えているご家族にもおすすめ。勉強しながら楽しめて、息抜きにもなります。

ぬりはじめると、止まらない!「漢字の宝島 高学年」もおすすめ

漢字シート3枚/10歳〜/1100円

漢字を迷路のように組み合わせた「宝島の地図」から、一文字ずつ漢字を探し出し、ぬりえ感覚で文字に色をぬっていく「ぬり字」。

低学年セットは小学校1・2・3年生、高学年セットは4・5・6年生で習う漢字で製作された漢字シートが入っています。ワクワクしながら漢字に触れることができます。

「お子さんの漢字学習はもちろんですが、大人の脳トレにも役立つと、幅広い年代の方に購入していただいている商品です」(奥野さん)

作者の馬場さんより、漢字が苦手なお子さんへのメッセージをいただきました!

「ドリルばかりで漢字はつまらないと思う前に、パズルやクイズで楽しみ、漢字ファンになって欲しい。そうすることによって、きっと漢字力が自然に身に付いてくるよ」(馬場さん)

視点を変えることで、嫌いだったものがこんなにも好きになった馬場さんからの説得力あるメッセージは、漢字が苦手なお子さんを持つ親にとっては、なんとも心強いお言葉。

遊びながら自然に覚えることで、ぜひ漢字に対する苦手意識を克服してほしいですね。

『漢字博士』作者

馬場雄二さん
ビジュアルデザイナー。東北芸術工科大学名誉教授。1938年生まれ、長野県出身。東京芸大大学院にて構成、デザインを専攻。フジサンケイグループ、NEC、西武百貨店、学研などのCIディレクション、グラフィック、商品開発などを手掛ける。世界カレンダー賞、日本グラフィックデザイン展(N.Y.)銀賞、ザ・トリック展優秀賞、おもちゃ大賞など多くの賞を受賞。

奥野かるた店

ボードゲームからカルタ、トランプまで圧巻の品ぞろえ!
貴重なカルタやボードゲームも展示され、見ているだけでも楽しめる

1921年(大正10年)に「奥野一香商店」として創業。店舗ではかるたや百人一首、トランプなどのカードゲームや、囲碁、将棋、パズル、ボードゲームなど室内で遊べる商品を数多く扱っています。

【所在地】東京都千代田区神田神保町2-26

【営業時間】月曜~土曜 / 11:00-18:00   日曜 (第2・第3以外) ・祝日 / 12:00-17:00
【定休日】第2・第3日曜日

オリジナルのエコバッグも人気

和を感じるデザインで、お土産にもおすすめ!A4サイズがしっかり入ります。¥880(税込)

奥野かるた店オンラインショップ https://shop.okunokaruta.com/

お話を伺ったのは

奥野かるた店/奥野誠子さん
1960年神奈川県生まれ。
幼少期より室内ゲームに囲まれて育った。2002年に父・伸夫の後を継ぎ3代目社長に就任。伝統をベースに時代の特性を生かしたかるたの開発にも力を入れている。

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取材・文/苗代みほ 撮影/五十嵐美弥

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