ファーブル昆虫記とは?
『ファーブル昆虫記』は、その名の通り、ファーブルという名前の作家が書いた物語です。具体的に、いつ、どのように作られたのか見ていきましょう。
フランスのジャン・アンリ・ファーブルの作品(作者情報)
『ファーブル昆虫記』を書いたのは、フランスのジャン・アンリ・ファーブルです。ファーブルが約30年もの時間をかけてまとめた読み物です。『昆虫記』の名前でも知られていますが、日本では作者の名前をとって『ファーブル昆虫記』という題名で親しまれています。
作者:ジャン・アンリ・ファーブル
原題:Souvenirs entomologiques(仏語)
国: フランス
発表年:1879年~1907年
おすすめの年齢:小学校低学年以上
ジャン・アンリ・ファーブルってどんな人?
作者のジャン・アンリ・ファーブルは、1823年にフランスで生まれました。経済的に恵まれない環境にありましたが、奨学生の募集に対して1番で合格したほか、優秀な成績を残していたそうです。小学校や中学校の先生となって、物理学や化学の普及書を書いたこともあります。昔から昆虫をじっくり観察するのが好きだったそうで、博物学の博士号を取得し、植物や昆虫の研究論文も発表してきました。
そんな昆虫についての研究をまとめたのが『ファーブル昆虫記』です。またファーブルは詩人としての顔もあり、科学の世界に疑問を投げかける「虫の詩人」とも呼ばれていました。
いつの時代の話?
ファーブルが『ファーブル昆虫記』を手掛けたのは、55歳から83歳までのおよそ30年間。それまでの昆虫に関する研究を、一般的な研究論文のような体裁ではなく、読み物のような語り口にした『ファーブル昆虫記』として発表したのです。
そのため『ファーブル昆虫記』は、科学書という面がありながら、読み物としての側面もある書籍となったのです。『ファーブル昆虫記』が今でも高く評価されているのは、そんな科学的な内容と、読み物としての面白さが世界中の読者から支持されたからなのでしょう。
ファーブル昆虫記の代表的な章とあらすじ
ファーブルが長い年月をかけて発表した『ファーブル昆虫記』の中で、代表的な章とそのあらすじをご紹介します。
フンコロガシ
フンをコロコロと転がしながら運んでいく、フンコロガシ。ファーブルはフンコロガシが大好きで、『ファーブル昆虫記』で最初に出てくる昆虫です。
詳しいあらすじ
フンを丸く固めて、コロコロ転がしながら運んでいく虫がいます。その名は、フンコロガシ。自分の体よりもずっと大きなフンでも、一生懸命運んでいきます。それは何のために、どこに運んでいるのでしょうか?
カリバチ
狩りをすることから「カリバチ」と呼ばれるハチがいます。そんなカリバチをテーマにした物語です。
詳しいあらすじ
人間が狩りをして動物をしとめるように、ハチの仲間には、狩りをするハチがいます。そんな「カリバチ」は毒針を持っていて、その獲物を動けない状態にしてとらえて運んでいくのだとか。では、カリバチはなんで狩りをするんでしょうか? 狩りの詳しい方法も物語の中で紹介しています。
カミキリムシ
日本にもいるカミキリムシという昆虫がテーマの話。木に穴をあける習性があり、髪を切ってしまうほど噛む力が強いことから、カミキリムシと呼ばれています。
詳しいあらすじ
カミキリムシは、木に穴を開けてトンネルを作っていきます。それは一体なぜなのでしょうか? さらに、木の中で3、4年過ごしてから大人になっていきます。「テッポウムシ」という名前も持つ、この昆虫の不思議に迫ります。
バッタ
芝生や草原でピョンと高く飛ぶバッタ。バッタの生態に迫る章です。
詳しいあらすじ
ピョンと飛ぶバッタを見ると、つい捕まえたくなったことがあるかもしれません。そんなバッタは袋の中にたまごを入れているんです。それはなぜでしょう? また、秋になると美しい音色をかなでるコオロギについても、一緒に生態について紹介しています。
ファーブル昆虫記が読み継がれている理由
発表されてから100年以上もたってなお、読み続けられているのはなぜなのでしょうか?
虫の姿や行動が面白い
昆虫の行動をじっくり観察していたというファーブル。空想の世界の物語ではなく、現実の昆虫の姿をよく見ていたファーブルだからこそ、リアルな昆虫の生活を知ることができます。物語を通して、昆虫の魅力に気づけるのです。
虫の「なぜ?」「どうして?」に答えてくれる
昆虫を見ていると、「なんでこんなことをしているんだろう?」と思うことがあるかもしれません。「フンコロガシが、自分の体よりも大きな丸いフンを転がすのはなぜ?」「自分よりも大きな体の獲物をとるハチはなぜ?」など、誰もがふと抱くそんな疑問にこたえてくれるのが、『ファーブル昆虫記』です。虫が好きな人はもちろん、そうでない人も、虫の不思議につい引き込まれてしまうはずです。
科学書としての一面も
ファーブルは昆虫の生態についてじっくり観察し、それを発表しました。しかし、一般の科学者なら学術論文として発表しますが、それでは一部の学者に読まれるだけにとどまります。そこでファーブルは、学術論文を執筆するのではなく、昆虫のリアルな生態についてまとめて発表するという形をとったのです。それが『ファーブル昆虫記』です。だから、『ファーブル昆虫記』は論文にもひけをとらないような、詳細でリアルな昆虫の姿がわかる充実した読み物なのです。
科学に興味を持つきっかけになる
ファーブルは科学書などを執筆していますが、難しい文章ではそれを理解するのは難しくなってしまいます。それに対して、『ファーブル昆虫記』は昆虫を人に例えた表現を使うなど、わかりやすく楽しく理解できるように工夫されています。身近にいる昆虫の知らなかった生態について、興味を持つきっかけになるかもしれません。
名作「ファーブル昆虫記」を読むなら
『ファーブル昆虫記』を読みたくなった方におすすめの書籍をご紹介します。
『ファーブル昆虫記』
全6冊にまとめられた『ファーブル昆虫記』。図版も豊富にあるため、理解しやすく子どもも大人も読みやすい体裁になっています。
『完訳ファーブル昆虫記(第1巻)』
フランス文学者であり、日本昆虫協会の会長でもある奥本大三郎が完訳した『ファーブル昆虫記』。昆虫画家・見山博が描いた詳細なイラスト、昆虫写真家・海野和男、今森光彦の写真もあり、昆虫の世界に魅了されるはずです。
『ファーブル昆虫記(ポプラ世界名作童話14)』
子どもでも読みやすくまとめられた、ポプラ世界名作童話シリーズ。読みやすい文章と親しみやすいイラストがあり、ぐんぐん読んでいけそう。
自然や虫について知れる『ファーブル昆虫記』
ハチ、クモなど、私たちの身近に存在する昆虫。それらには、私たちが知らないような習慣や生態があるものです。そんな虫たちにスポットをあてているのが『ファーブル昆虫記』です。
完訳版のほか、幼い子ども向けにやさしい内容でまとめられているもの、図解や写真付きで詳しく説明しているものなどもあります。子どもが興味を持ったときに、ぜひ親子で手にとってみてはいかがでしょうか?
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文・構成/HugKum編集部