「英語でバレエ」で子どもたちが英語と日本語の垣根をなくす!とにかく楽しむ、そのレッスン風景に密着

「英語で〇〇」の習い事は、その習い事のスキルアップと英語の習得が同時にできて一石二鳥……という親の期待もあってか、最近ますます注目されています。そんななか、10年以上も前から東京で「英語でバレエ教室」を主宰するKaworuさんは、レッスンのなかで自然に英語に親しみながらバレエが大好きになる子どもたちをたくさん育ててきました。なぜ「英語でバレエ」なのでしょうか? また、子どもたちはどのように英語とバレエを習得していくのでしょうか? Kaworuさんにたずねました。

ネイティブと日本人の2人の先生が指導

「英語バレエクラス」の大きな特徴は、ネイティブの先生と日本人で英語も話せるバレエの先生の2人体制で、子どもたちの英語理解度に合わせて、日本語と英語の両方で細やかにサポートしていることです。

「ネイティブの先生が英語だけで指導すると、英語が初めての子にはハードルが高くてついていけません。そのような子の多いクラスは日本語を多くするし、バイリンガルの子どもの多いクラスなどは英語を多くするなど、クラスに応じて英語と日本語の比重を変えてサポートしています」とKaworuさんは言います。

 英語バレエクラスが人気の理由

子どものクラスは「英語バレエクラス」のほかに、より本格的なバレエの指導を日本語で行う「バレエ専科」がありますが、未就学児の多くが「英語バレエクラス」を選んでいるそう。「英語バレエクラスはネイティブの先生といっしょに、ダンスのアクティビティや英語のミニゲームもあります。小さい子どもたちには遊びの延長のようで楽しく、伸び伸びと体を動かせるプログラムが多いからでは?」とKaworuさんは言います。

ネイティブの先生は自分の国でダンスやバレエの学校を卒業し、日本に興味を持っている先生ばかり。日本語も勉強しています。実際に自国で子どものときに教わってきたようなやり方で、レッスンでは子どもたちに踊る楽しさを伝えています。

子どもたちが「英語を話すことに抵抗感を持たない」ようにするため、ネイティブの先生も日本人の先生も、英語と日本語を両方使ってレッスンを進めていきます。

レッスンの途中で英語のアクティビティがある

ある日の3歳児、4歳児クラスのレッスンを見せてもらいました。

ネイティブのバレリア先生はメキシコ出身。モンテッソーリ教育プログラムを取得し、クラシックバレエ歴が10年以上のベテラン先生です。そして日本人の先生はKaworuさん。以前はバレエ団で活躍していたバレリーナで、学生時代にアメリカへバレエ留学をした経験もあり、英語は不自由なく話せます。

レッスンでは、2人の先生と子どもたちが全員で手をつないで大きな輪になって回ったり、先生が背伸びしてクルクルと回る動作などを真似したり、フロアでストレッチしたり、レオタードのフリルをつまんで「プリンセスのようなお辞儀」をしたり。途中「英語タイム」では手作りの乗り物カードを使って、乗り物の名前や色を英語で言う練習もありました。45分のレッスンの間、子どもたちはずっと楽しそうで「キャッキャッ」と笑う声が絶えません。

「英語タイム」の様子。バレリア先生が英語で「消防車は何色かな?」と質問すると、少し考えてから一人の子が「Red!」、つられてほかの子も大きな声で「Red!」と続きます。Rの発音もバッチリ!

英語でも日本語でも、抵抗なくそのまま受け入れる子どもたち

バレリア先生が英語で子どもたちに話しかけると、Kaworu先生は同じ言葉を少しゆっくり話したり、同じ意味でも違う表現の英語で言い替えたりして子どもたちに伝えます。日本語に訳して子どもたちに伝えることもあります。

そのような言語環境のなかで、子どもたちは聞こえてくる言葉が英語だろうが日本語だろうが、「言語の違い」を気にする様子はまったくなく、ごく自然に先生たちの言うことをそのまま聞いて、理解できる範囲で反応しているようでした。そして自分から発語するときは日本語でも英語でも、その時使いたい、または使えるほうの言語で質問に答えたり、先生に話しかけたりしているように見えます。

「先生の言っていることがわからない」とか「英語が話せないから先生に言いたいことを伝えられない」と困っているような子は一人もいません。英語と日本語をその場で無意識に使い分けて「普通にコミュニケーションをとっている」という感じです。

 先生の言葉を「音」として吸収

「言葉の不安が全くない空間だから、子どもたちは家でお母さんと遊んでいるときのように安心して、先生とコミュニケーションをとれるのです。この時期の子どもたちは先生の言葉を言語としてより‶音〟として吸収していきます。自分が知っている単語を先生から聞く安心感があるので、それが英語だったとしても‶わからない!〟と不安にならず、自然に蓄積されていくのでしょう」

バレリア先生は子どもたちにほぼ英語で話しかけますが、「こんにちは」や「上手上手! Beautiful!」「がんばって~、もっとhigher(高く)」など、日本語交じりで話す場面も。

1~2年で、きれいな発音で英語を話し出す子も

 「ただ、このクラスに週1~2回通うだけで、子どもが英語をペラペラと話せるようにはなりません」とKaworuさん。

このレッスンはいわば英語の導入編。英語に苦手意識を持たないことや、見た目に日本人と違うネイティブの人とのコミュニケーションに臆さない姿勢を身に着けていくことを大事にしています。とはいえ、このクラスで習い続ける子は1~2年で、突然きれいな発音の英語で話し出すケースが多いとか。

「教室で子どもたちは、英語を外国語として構えず、普通の生活の中の言葉として感じながら耳を鍛えています。子どもの脳は天才。発音のしかたや舌の位置を言葉で教えられなくても、ネイティブのような発音が自然とできるようになっていくのです」

バレエが楽しいから練習にも集中できて、自信が生まれる

バレエに関しては、Kaworuさんは「いわゆるバレエの技術を教え込むのではなく、バレエの楽しさを感じてもらいながら、自分がいかに自信をもって踊っているように見せられるかにフォーカスしています」と言います。

プロバレリーナを育てることを目的にするよりも、あくまでも「バレエが大好き、楽しいというバレエ人口のすそ野を広げたい」と言うKaworuさん。盛大に行う発表会では、習っている期間に関係なく、一人一人が必ずスポットライトを浴びて踊るシーンを作ると言います。それもあってか、発表会前の練習になると集中力がグンと上がり、みんな一生懸命に練習するそう。

Kaworuさんはニューヨークにバレエ留学したとき、仲間が自分の踊りを見せることを楽しみながら、お互いに高め合っていく経験をしたことで、「型にはまったレッスンではなく、自由でフランクな教室を作りたい」と思ったとか。「英語バレエ」クラスが、「海外のバレエ教室みたい」と言われるのもそんな背景があるからなのでしょう。

バレエの留学から見えた教室の夢

Kaworuさんはニューヨークにバレエ留学したとき、仲間が自分の踊りを見せることを楽しみながら、お互いに高め合っていく経験をしたことで、「型にはまったレッスンではなく、自由でフランクな教室を作りたい」と思ったとか。「英語バレエ」クラスが、「海外のバレエ教室みたい」と言われるのもそんな背景があるからなのでしょう。

発表会で観客の大きな拍手をもらい、家族にたくさん褒められた経験は子どもたちを一回り大きくさせるといいます。

そして自信をつけた子どもたちは、ネイティブがいる環境が当たり前のレッスンで、英語も自然体で着実に体にしみこませていきます。

「毎回レッスンが終わったとき、子どもたちには‶楽しかった!〟という実感が残るので、英語に対しても楽しいというリンクができて、ネイティブ先生にも違和感や緊張感がなくなるのでしょう。日本にいて英語を学ぶとき、これはとても大切な姿勢だと思いますね」

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取材・構成/船木麻里

記事監修

Kaworuさん|Ones Kids Ballet代表

もともと、Kaworuさんの「大人のバレエ教室」に生徒として通っていたアメリカ出身の英語の先生と「いっしょに英語でバレエを楽しめる環境を作ろう」と意気投合したことが、「子ども英語バレエ」教室を開くきっかけだったとか。Kaworuさんはバレエだけでなく、ヨガ、ピラティス、栄養学などの資格も多数取得し、レッスンに活かしている。現在、子どもバレエ教室は東京の月島、勝どき、豊洲、三鷹、恵比寿、広尾の6教室を展開。どこもキャンセル待ちが出るほどの人気ぶり。

Ones Kids Ballet教室 http://www.kidsballet.tokyo/

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