きのくに子どもの村学園(和歌山県)の他、かつやま子どもの村小学校(福井県)、南アルプス子どもの村小学校(山梨県)、北九州子どもの村小学校(福岡県)、ながさき東そのぎ子どもの村小学校(長崎県)の5箇所があります。
自己決定、個性化、体験学習がキーワードの自由な学校、きのくに子どもの村学園についてはこちらの記事が参考になります。
1. 声をかけるときには抱っこをして
声をかけるときにオススメしているのは、抱っこです。できれば「抱っこしてあげるからおいで」ではなく「抱っこさせて」とお願いして、子どもを膝に乗せてあげます。抱っこをしているときに、小言を言う人はいないですよね。抱っこをすることで、同じ空間を共有している幸せを親子ともに感じることができます。
そして、話をするときや何かを教えるとき、子どもの話を聞くときなど、何かをするときには子どもの真正面からではなく、子どもに対して90°の位置からすることもオススメです。これは、学園長の堀さんが大学時代に幾度となく調べた結果に基づいたものですが、真正面だと対峙・対決し、後ろからだと子を支配する心理が働くのに対し、90°の角度からであれば2人の視線の間に共通の空間が生まれるのだと言います。
確かに、横向き抱っこでお話をしたときのほうが、普段言いにくいことも言えるような気がします。
2. 物事を良い方面から言う
例えば、朝の身仕度をしている時などに、つい子どもに「あと10分しかない!」と急かしてしまいそうな場面に「まだ10分あるから間に合うよ」に置き換えることを意識します。
これは筆者も息子に試してみました。同じ10分でも「10分しかない!」だと親も子もイライラした気持ちを引きずりながら家を出発することになりますが「10分ある、まだ間に合うよ」だと、同じ10分でも親は少しだけ心の余裕を感じるとともに、子どもも「自分ならできる」という気持ちで気持ちよく一日をスタートさせることができます。
いわゆるリフレーミングというテクニックで、物事を多角的にとらえてポジティブな表現をします。
自己肯定感について詳しく書かれているこの記事でも、リフレーミングの良さがわかります。
3. 褒める(子どもにだけでなく景色なども)
物事を良い方面から言うというのは、子ども自身に対しても同じです。取りたてて褒めることがないときも、例えばその子の靴下を「素敵な靴下だね」と褒めてみます。褒められたら気分がいいですよね。そして「自分で選んだの?」など会話を広げていきます。
ほかにも例えば、お手伝いでテーブルを拭いてくれたとき、ちょっと雑だったとしても「前よりきれいになったね!」と良い方面から言ってあげます。とにかく、あなたに関心があるんですということを伝えます。
褒めるのは子どもに対してだけでなく、景色や身の回りのものでも良いのです。暑い日に「暑いねー」と言われるよりも「とってもいい天気だね」と言われたほうが気持ちよく会話を続けられます。夕日がきれい、今日のランチの鶏肉がとっても美味しいなど、そうやって日常の中から素敵なことを見つけられる感性が育っていきます。
4. 説得しない、聞き役に回る
子どもが話をするときには、カウンセラーのように聞き役に回ることを意識します。子どもの話に親が「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」「それはダメだね」など言うのではなく「そうなんだ、そんなことがあったんだね」「悲しい気持ちになっちゃったんだね」など子どもの言葉を反復するつもりで聞いてあげます。
困っていることを聞いてくれた、理解してくれた、認めてくれたと感じることが大切です。話しているうちに子どもは安心感をもち、自分で解決策を見つけていきます。人から何かを言われて動くのではなく、自分で解決策を見つけるというのがポイントです。
まずは子どもを幸せにしよう、すべてはそのあとにつづく
これらの4つのポイントはそれほど難しいことではなく、言われてみると確かに大切にしたいと思うものですが、わが身に振り返ってみると意外とできていないことに気づきます。
下の子ばかり抱っこして長男はあまり抱っこしてあげていないなとか、「早く着替えなさい!」と責め立てたりしてしまっているなと反省。つい子どもに対してもイライラしてしまったり、親自身の心に余裕がなかったりするときもありますよね。
そんな私でも、子どもたちには心に潜む葛藤や不安、自己否定感に悩まされず、自分のやりたいことを心の赴くままにしてほしいと願っています。
だからこそ、無意識ではできていないこの4つのポイントをできる限り意識しながら、子どもたちの安心感や自己肯定感を大切にし、心の幸せを守っていきたいなと思います。
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お話を伺ったのは…
◆堀真一郎先生の著書はこちら◆
『ニイルと自由な子どもたち ― サマーヒルの理論と実際』、1984、黎明書房
『ごうじょう者のしんちゃん』(2022、黎明書房)
取材・文/村上詩織