生きるために必要な力がつく!小学校「きのくに子どもの村学園」のプロジェクト型学びの魅力とは

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授業が楽しいと思える学校を作りたい、堀真一郎さんの強い思いから作られた、きのくに子どもの村学園。体験学習を中心としているこの学園では、五感をフルに使って全身であらゆるものを学びに変えます。「授業って楽しい!」「勉強って楽しい!」と子どもたちにそう感じさせる学校での学びのヒントを、学園長の堀真一郎さんにうかがいました。

学校法人きのくに子どもの村学園

きのくに子どもの村学園(和歌山県)の他、かつやま子どもの村小学校(福井県)、南アルプス子どもの村小学校(山梨県)、北九州子どもの村小学校(福岡県)、ながさき東そのぎ子どもの村小学校(長崎県)の5箇所があります。

授業が楽しいと思える子どもファーストな学校、きのくに子どもの村学園についてはこちらの記事が参考になります。

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プロジェクトを中心に学ぶ小学校

きのくに子どもの村学園では特に「かず」と「ことば」の学習を大切にしています。これは他の学校でいう算数や国語にあたるものですが、実生活から離れた文章問題や抽象的な計算をするものではなく、生活の中で欠かせないものであると感じさせるような工夫がされています。

きのくに子どもの村学園では、本物の仕事さながらのプロジェクトが中心であり、そのプロジェクトを題材とした基礎学習をおこなっています。例えば、柱に筋交いを入れるには長さをどうするか(三角関数)や、調べた集落の人口の年齢分布はどうなっているか(図表や分数)など、本物を取り扱うプロジェクトを進める上で、自身で気づいたり、大人がプリントで補填したりしながら学びます。

そのため、単純に基礎学習を部分的に切り取って真似できるものは多くありませんが、その中でも家庭でも取り入れられそうなものや、子どもたちに人気な遊びなどをご紹介します。

かずは「ビー玉数え」からはじまる

小学一年生になって最初に学ぶ、1から100までの数。きのく子どもの村学園では、およそ1万個のビー玉をチームで数えることからはじまります。地道にひとつずつ数えるのではありません。

まずは小さなカップにビー玉を10個ずつ分けていきます。そしてその10個ずつに分けられたビー玉の集まりを10集めて別の容器に入れ100個の集まりをたくさん作る。同じようにそれを1000個の集まりを作る。最終的に、例えば1000のかたまりが9個、100が3個、10が5個、残ったビー玉は8個…「9358」個とわかります。手を使って仲間と頑張った証を目の前に並べ、子どもたちはえにもいわれぬ達成感・満足感に包まれるそうです。

ビー玉を使う理由を、学園長の堀さんはこのように語っています。

なぜビー玉を使うのかといえば、ビー玉ってきれいでしょう?  そして重さがある。ビー玉同士が当たると音がする。そういった、手を使って目で見て、耳で感じて、感覚的に学んでいくことが大切なんです。

足して10にするババ抜き

これは遊びの一環ですが、足して10にするトランプゲームも子どもたちに人気だそうです。

一般的なババ抜きは、同じ数字をペアにして手札から捨てていきます。「足して10にするババ抜き」は、同じ数字ではなく足して10になるカードをペアにして捨てていくババ抜きです。同じ要領の「神経衰弱」もあります。

このような10のかたまりの概念を堀さんは大切にしているそうです。そして、それを「楽しい、知りたい」と思わせるのです。

ゲームの中で必要となる「かず」や、自分がやりたいと思っていることを進めるために必要となる「かず」など知っておくとお得だと感じることは、自ら進んで学習し、しっかりと身につきます。

それは、ゲームに限ったことではありません。できる限り生活に寄り添ったワクワクの中に学びのタネは散りばめられていて、子ども自身の興味と結びついたときにフッと、自分の中に落とし込めるのではないでしょうか。本来、学びとはワクワクする、楽しいことなんだとあらためて気づかされます。

子どもが主人公のお話づくり

「かず」以外にも、親子のコミュニケーションひとつとして、学園長の堀さん自身もお子さんとしていた「子どもが主人公のお話づくり」を紹介していただきました。

絵本の読み聞かせをするように、日頃の生活を題材としたお話を作って聞かせます。

例えば「あるところに◯◯くん(子どもの名前)という男の子がいました。朝起きて、台所に行くとお母さんが何かを作っていました」とはじまり「お母さんは何を作っているのかな」「どこでたべようかな」など、途中に子どもと会話をしながらオリジナルのお話を一緒に作っていきます。その時、主人公となる子どもは、ちょっとかっこいい活躍をするお話だと、子どもも嬉しくなります。手元に絵本がなくても、今すぐにでも実践できる方法ですね。

きのくに子どもの村学園の子どもたちは「原稿書き」という、いわゆる作文が大好きなんだそうです。何から書けばいいんだろうとか、漢字がわからなくて書けない…など気にせずに、思ったこと、書きたいことをまずはひたすら書くのだそう。

親子でお話をつくるコミュニケーションは、文字が書けない小さな子どもでも、身近なことを言葉にしたり、感じたことを表現する想像力を養うことができます。

学力のためではない、生きるために必要な力

堀さんのお話を聞いていると「学力とはなんだろう」と思えてきます。高校、大学と進学するためには数値で測る学力も必要ですが、決して受験がゴールではありません。その先の人生で、いかに自分のやりたいことを見つけて実践できるか、幸せを感じるか…そのための土台となる力をつけることが大切なのではないかと思います。

きのくに子どもの村学園は自由で斬新な学校です。でもどこか懐かしさを感じるのは、親(大人)の愛情や、生活に密着した学びなど、人間の基本に立ち返ったものを大切にしているからなのかもしれません。

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お話を伺ったのは…

堀真一郎 (ほり しんいちろう) | 学校法人きのくに子どもの村学園学園長
昭和18年、福井県生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院博士課程中退。元大阪市立大学教授。平成4年、学年も宿題もテストもない、体験学習中心の「きのくに子どもの村小学校」を和歌山に開設。現在、福井、山梨、福岡、長崎に5つの小中学校と高等専修学校を有する。同校は今年3月『夢みる小学校』という映画になった。

◆堀真一郎先生の著書はこちら◆

『自由学校の設計 ― きのくに子どもの村学園の生活と学習』1997(2009,増補版)、黎明書房

『体験学習で学校を変える―きのくに子どもの村の学校づくりの歩み』2021、黎明書房

取材・文/村上詩織

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