日本一を知る前に。洞窟の基本知識を確認
洞窟と聞くと、何となく地下にある穴のことをイメージする人は多いでしょう。ただし全ての地下空間を洞窟と呼ぶわけではありません。まずは洞窟の定義や種類など、基本知識をチェックしましょう。
洞窟の定義
洞窟とは、人が入れる大きさがあり、入口の高さや幅よりも奥行きが深い地下空間のことです。一般的には人工的につくったものではなく、自然にできたものを指します。
観光地として人気の「鍾乳洞(しょうにゅうどう)」も、洞窟の一種です。鍾乳洞は、雨水や地下水が長い年月をかけて、地層の中の石灰岩を溶かすことによってつくられます。
内部に見られる「鍾乳石(しょうにゅうせき)」は、水に溶け出した石灰岩中の炭酸カルシウムが、再び結晶化したものです。鍾乳石が1cm伸びるためには、平均で100年はかかるといわれています。
洞窟の種類
洞窟は、でき方によって主に「溶食洞窟」「浸食洞窟」「火山洞窟」の3種類に分けられます。
溶食洞窟は岩石が雨水や地下水に溶かされてできるもので、鍾乳洞が代表的です。浸食洞窟は、岩石が水・波・風などに削られてできます。波による浸食で海岸の崖にできる洞窟は、海食洞(かいしょくどう)といいます。
火山洞窟は、火山噴火で流出した溶岩中にできた空洞です。溶岩は空気に触れると、一気に冷やされて固まっていきます。このとき、まだ熱い中心部の溶岩が、固まった外側を突き破って流れ出ることで洞窟ができます。
日本一長い・日本一深い洞窟
日本一の洞窟を探すとすれば、「長さ」や「深さ」は外せません。それぞれの日本一は、どこにあるのでしょうか。
未だ全貌は不明「安家洞」
日本一長い洞窟は、岩手県下閉伊郡岩泉町にある「安家洞(あっかどう)」です。総延長は約23.7kmもあり、全貌は未だに不明です。鍾乳石の種類が多く、地下水動物が豊富に生息していることから、学術的な価値も高いとされています。
鍾乳石の博物館とも呼ばれる安家洞を探検すれば、長さだけではない日本一の迫力を感じられるでしょう。一般公開されているのは入口から約500mの地点までですが、ガイドを予約すればさらに奥まで見学できます。
冒険心をくすぐる「白蓮洞」
日本一の深さを誇る洞窟は、新潟県糸魚川市の黒姫山にある「白蓮洞(びゃくれんどう)」です。深さは約513mあるとされています。
白蓮洞は、山の南側に位置する「マイコミ平」と呼ばれる一帯にあります。マイコミ平は、石灰岩が溶食されてできた凹地です。竪型洞窟が多く、深さが日本1~4位までの洞窟がこの地に集まっています。
ただしマイコミ平は入山が規制されており、年に数回のガイド付きツアーに参加する以外に見学する方法はありません。ツアーは毎年開催されるとは限らないため、行く予定がある人は最新情報をチェックするようにしましょう。
観察法のイロハのイ 自然がつくった神秘の空間鍾乳洞 | Science Portal
日本一美しい?日本三大鍾乳洞
日本一美しい景観を楽しみたいなら「三大鍾乳洞」に行ってみるのもおすすめです。ただし三大鍾乳洞の決定者や由来は不明で、人や地域によっては別の選び方をすることもあります。ここでは、一般的に「三大」といわれている鍾乳洞を紹介します。
洞内に住むコウモリも天然記念物「龍泉洞」
「龍泉洞(りゅうせんどう)」は安家洞と同じく、岩手県下閉伊郡岩泉町にある鍾乳洞です。洞内に住むコウモリとともに、「岩泉湧窟及びコウモリ」として国の天然記念物に指定されています。
龍泉洞の見どころは、湧き水が作り出す青く美しい地底湖です。洞窟の全容は調査中ですが、現在のところ総延長は約4,088m、地底湖は八つあることが分かっています。そのうち約700mほどが公開されており、三つの地底湖を見学できます。
四季を通じて温度が一定「秋芳洞」
「秋芳洞(あきよしどう)」は、山口県美祢市の秋吉台国定公園の地下に広がる、日本有数の大規模な鍾乳洞です。総延長は約11.2kmと国内2位の長さを誇り、観光コースは約1kmに及びます。
洞内の気温は1年を通じで約17℃と一定に保たれ、夏は涼しく冬は温かいのが特徴です。コースは歩きやすく整備され、「千畳敷」と名付けられた巨大空間や、皿のような形の鍾乳石が500枚以上も連なる「百枚皿」など、見どころもたくさんあります。
探検気分を味わいたい人には、1人300円の追加料金で入れる冒険コースもおすすめです。
特別天然記念物 秋芳洞(あきよしどう) – 【公式】山口県美祢市 秋吉台国定公園 観光情報
洞内で滝も見れる「龍河洞」
高知県香美市の「龍河洞(りゅうがどう)」は、滝を見られる鍾乳洞として知られています。「記念の滝」と呼ばれる滝の高さは約10mあり、青い照明に照らされた姿が神秘的です。
洞内からは弥生人が生活していた痕跡が残っており、学術的にも大変貴重な場所として、国の天然記念物・史跡に指定されています。弥生人が置いた壺を約2,000年かけて鍾乳石が包み込んだ「神の壺」は、滝と並ぶ見どころの一つです。
1937(昭和12)年より、壺が鍾乳石に包まれる様子を観察する実験が始まっており、現在は壺の底が鍾乳石と一体化し始めていることを確認できます。
豊富な魅力を持った洞窟を楽しんでみて
長さ・深さ・美しさがそれぞれ日本一の洞窟を紹介しました。日本には他にも、興味深い洞窟がたくさんあります。そのほとんどが、気の遠くなるような長い年月をかけて、自然にできたものです。
地下に広がる不思議な光景を楽しみに、家族で洞窟に足を運んでみましょう。
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構成・文/HugKum編集部