「友達に怒ってもいい?」「みんなと仲良くしなきゃダメ?」子どもに訊かれたら。心理カウンセラーの語りかけに学ぶ

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誰とでも仲良くできる社交的な子に育ってほしい。そう願う親御さんは多く、子どももその気持ちを汲んで、そうであろうとがんばってしまいがち。でも子どもが「イヤな気持ち」を持つのも大切なことです。そんなときどんな言葉をかけてあげればいいでしょうか。心理カウンセラーで『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』の著者/加藤隆行さんの語りかけ例からヒントを探してみませんか。

※この記事は『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』(小学館クリエイティブ )の一部を引用・再構成しています。

イヤな気持ちはなんで出てくるの?

気持ちは大きく2種類に分けられます。「うれしい」「大好き」などの前向きで楽しい気持ち(ポジティブな気持ち)と、「悲しい」「不安」「怒り」などの後ろ向きでイヤな気持ち(ネガティブな気持ち)です。

イヤな気持ちは、体がイヤな感じがするので、それを感じたくないと思うのは当然です。でも、このイヤな気持ちたちは、じつはあなたのことを守ろうとしてくれているのです。

先日、家の近くで鳴き声がするので見に行くと、そこには子ネコをかかえた母ネコがいました。ぼくが子ネコに触ろうとすると、母ネコは毛を逆立てて「シャーッ!フーッ!」とすごい勢いで怒り、子ネコを守ろうとします。

このように、自分の大切なものを守るためには、「怒り」という気持ちが必要です。
もし自分が友だちからイジワルされたとき、怒りという気持ちがないと、「やめて!」と強く言って自分を守ることができません。

「不安」という気持ちを感じることも多いかもしれません。不安は、胸をドキドキ、ザワザワさせることで、これから先に起こることへの準備をうながしてくれます。不安な気持ちになるからこそ、来週のテストに備えて勉強しておこうという気になれます。

イヤな気持ちは、あなたを守ってくれる「防衛隊」のようなものです。いつでもどこでも、大切なあなたを守ろうとしてくれます。

だから、イヤな気持ちが出てきたときは「ああ、わたしのことを守ろうとしてくれているんだな」と、受け入れてあげましょう。それだけで気がラクになることもあります。

友達に怒ってもいいの?

「イヤな気持ちも大切ですよ」と言うと、「じゃあ怒ってもいいの?」と聞かれることがあります。

ここでお伝えしておきたい、大切なことがあります。

怒りという「気持ち」はあっていいのですが、だからといって、相手にひどいことを言ったり、相手をたたいたりしてもいい、ということにはなりません。

ぼくが小学生のとき、怒ると子どもにビンタをする先生がいました。今はそんな先生はいないと思いますが、昔はそういう先生がたくさんいました。それがイヤでたまらなかったぼくは、それからずっと「怒る人は最低」「絶対に怒っちゃいけない」と思っていました。でも、「怒っちゃいけない」と思えば思うほど、ぼくは怒りをがまんできなくなって、相手にひどいことを言ってしまいます。そんな自分のことが大きらいでした。

でも怒りは「防衛隊」でしたよね。怒りをなかったことにはできないし、「防衛隊」があなたを守るためにがんばってくれているのだから、怒りという自分の気持ちはきらわないであげてほしいのです。

ぼくが大人になってから気がついたのは、気持ち(怒り)と行動(ひどいことを言う・たたく)を分けて考えればいいんだ、ということです。怒りという「気持ち」はあってもいいけれど、怒ってひどいこと言ったり、たたいたりしないように気をつければいいのです。

それに気づいてからは、怒りを感じたときに、「そりゃ怒るのも当然だよ」と気持ちを受け止めるようになりました。そうすると少し怒りが収まって、相手にひどいことを言う回数は減っていきました。

きらいな子はきらいなままでもいい

クラスにきらいな子がいるのに、先生から「みんな仲良くしなさい」と言われることがあるかもしれません。でも、あなたが「きらい」と思う気持ちは、それはそれで大切なものです

「きらい」というイヤな気持ちはあなたの「防衛隊」で、あなたを守るために出てくるのでしたね。だから、「きらい」と思ったのには、きっと理由があるはずです。たとえば、「名前をバカにされた」「家族のことを笑われた」など、自分の大切なものをきずつけられたと感じたら、その大切なものを守るために、相手のことをきらいだと思うのは当然のことです。

そんなときは、まず胸に手を当てて、「きらいでもいいんだよ」と自分に伝えてあげてほしいのです。そうやって自分が自分に共感してあげると、ムカムカ、イライラしていた気持ちが少しずつ落ち着いていきます。

そうしたら次は、「ホントはあの子とどうなりたい?」と自分にきいてみてください。さっきまではきらいだと思っていても「ホントは仲直りしたい」という思いが出てくるかもしれません。
それでも、「やっぱりきらい」という思いが出てきたのなら、きらいなままでもいいと思います。

人それぞれ考え方や感じ方はちがいますし、世の中にはどうしても性格が合わない人だっています。だから、みんなと仲良くできなくてもいいんです。

※ここまでは『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』(小学館クリエイティブ )の一部を引用・再構成しました。

自分を受け入れることは自信になる

ここまでの語りかけは、心理カウンセラーで自己肯定感を育てるプロフェッショナルでもある加藤隆行さんの著書から。

本記事では他者とのかかわりあいの中で発生する気持ちとの向き合い方について紹介しましたが、同書では他にも子どもの自信を育てるための言葉やヒントがたくさん記されています。同書内で、加藤さんは以下のようなコメントを綴っています。

著者の加藤隆行さん

「自信」というのは「自分が自分のことをどう思っているか」によって決まるんですね。

親や先生、友だちは関係なくて、自分が自分をどう思っているか。ほかの人がなんと言おうとも、「わたしは自分を信じる」「わたしには能力や価値がある」と思っていいのです。

 

後ろ向きでネガティブな感情も大切な気持ち。イヤな気持ちも嫌わなくていいものです。ありのままの自分を知ることは自分を信じることにつながり、自信へと結びつきます。ぜひ同書の声かけを参考にしてみてください。

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◆著者紹介

加藤隆行
1971年愛知県生まれ。心理カウンセラー。幼少より病弱だったこともあり、劣等感が強くコミュニケーションが苦手な子に育つ。大学院修了後、SEとしてNTTに入社。激務のなか、3度の休職と入退院をくり返し、しだいに自身のココロと向き合うようになる。2015年に退職し、心理カウンセラーとして独立。「自己肯定感を育てるプロフェッショナル」として活躍する。

監/名越康文  文/加藤隆行 小学館 1320円(税込)

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構成/HugKum編集部

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