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よく耳にする海洋プラスチック問題
広い海に浮かぶ無人島の浜辺に打ち上げられる空のペットボトルや、何千キロも流されるビニール袋など、海に大量に流れ込むプラスチックが問題視されています。
海洋プラスチックの問題の代表的なのは、マイクロプラスチックに関するものではないでしょうか?
一度自然界へ放たれたプラスチックゴミは、海岸での波や紫外線などの影響を受けることで小さなプラスチックの粒子となります。一定以下まで小さくなったものは「マイクロプラスチック」と呼ばれます。プラスチックは細かくなることはあっても自然分解することはありません。
とても小さくなったプラスチックは海に住む生き物を基点とした食物連鎖により、人を含む多種の生物に取り込まれまれるのです。
つまり、「マイクロプラスチックを摂取したプランクトンを食べた魚を人が食べる」という当たり前の食物連鎖で、あなたの体にもマイクロプラスチックがすでに蓄積されているかもしれません。
海洋プラスチックの問題はそのくらい他人事ではありません。
「ジェットストリーム」シリーズは人気のボールペン
「ジェットストリーム」というボールペンの名前を聞いたことがない方は少ないのではないでしょうか?
油性インクのボールペンでありながら、昔の重くて書きづらいボールペンインクをとても滑らかに書けるように改良した”低粘度油性ボールペン”の先駆けとも言える商品です。
筆記負荷や筆記スピードに関わらず、書いてみると滑らかさを感じるだけでなく、くっきりと濃く描線を表現でき、速乾性にも優れているので、「このボールペンを愛用しています!」と宣言する人も多く感じます。また、ボールペンの人気投票イベント「OKB48総選挙(お気に入りボールペン総選挙)」でも開始から12年連続首位を独走しており、とても多くの方に愛されていることがわかります。
なお、シリーズの世界販売本数は年間1億本を超えます。
「ジェットストリーム 海洋プラスチック」開発までの道のり
SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて企業の環境問題への配慮や対応が求められ、生活の中でもさまざまなところで「SDGs」という言葉を見聞きするようになりました。
三菱鉛筆も例外ではなく、社会全体及び環境問題への取り組みのひとつとして、サステナブルな筆記具の開発を目指しています。
二つのキーワード
ここで2つのキーワードを紹介します。
まずは「バージンプラスチック」。これは再生素材ではないプラスチックのことを指します。そしてもう一つは「ポストコンシューマープラスチック」。製品として使用された後に廃棄された材料や製品のことを言います。
今回はポストコンシューマープラスチックを使用したの開発に取り組んだ、ということになります。
コンタクトレンズの空ケースを使用した理由
今回、コンタクトレンズの空きケースを採用したのには理由があります。それは回収されるプラスチックの純度の高さです。海洋プラスチックゴミだけで作られたポストコンシューマープラスチックでは強度などを含めて筆記具としての品質が不安定でした。そこで純度の高いコンタクトレンズの空きケースを共に材料として使うことで不安定さを補うことができました。
また、人々の生活に身近なものを再利用することで、使う方々が環境に興味を持ってくださるようにという思いもありました。
これには、テラサイクルジャパン合同会社(※)と大手総合商社の伊藤忠商事株式会社の2社が、海洋プラスチックゴミの回収を実施。コンタクトレンズでお馴染みのHOYA株式会社アイケアカンパニーが全国のコンタクトレンズ専門店である「アイシティ」の店頭などで回収を行なった使い捨てコンタクトレンズの空ケースを合わせて使用することによって、「ポストコンシューマープラスチック」を軸材(ボールペンの本体)にすることを実現したのです。
※不可能と思われてきたもののリサイクルを実現し、多くの無料の回収方法を提供している企業
その結果、文具業界初の海洋プラスチックゴミ対策に特化した製品へ
エコマークとは様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルです。
この商品は文具業界で初めてエコマーク商品類型No.164.「海洋プラスチックごみを再生利用した製品」で認定取得した、環境に配慮したボールペンとなりました。(※ライトブルーのみ)
デザインに込めた思い
従来のジェットストリームと大きくデザインが異なるのにも訳があります。それは「環境に配慮した商品を”発売”することが目的ではなく、選ばれ、”長く使われること”こそが大切」という考えがあったからです。そのため細部にまでこだわって、思わず使いたくなるような美しいデザインの製品が出来上がりました。
ライトブルーは穏やかな海をイメージしたシンプルなデザインとなっていて、数量限定であるコーラルとターコイズは、刻々と少しずつ表情が変わっていく海の情景をイメージしたカラーとして選ばれました。
本体の表面には、回収された海洋プラスチックごみの一部が点や模様として出ているものもあります。再生素材を利用しているからこその特徴とも言えます。
軸部分はほぼ100%(ノック用のバネ以外のすべて)がポストコンシューマー材でできていて、華美な装飾や印字はありません。
しかし、ボールペンのクリップ部分は循環や再生の象徴である「メビウスの輪」をイメージさせる波形のようなデザインに仕上げました。
「ジェットストリーム 海洋プラスチック」のバリエーションは?
2023年7月17日(月・海の日)に発売された、「ジェットストリーム 海洋プラスチック」は黒インクの単色タイプで参考価格は242円(ジェットストリーム スタンダードは参考価格165円)。ボール径は0.7mmのみ、軸色は全3色(ライトブルー/コーラル/ターコイズ)です。※コーラル/ターコイズは数量限定です。
とても綺麗な色なので手元に置いておきたい、仕事に使いたい一本となるでしょう。手に取った方々が海の環境に関心を持つきっかけになりますように。
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文・構成/ふじいなおみ