言葉の発達に大きくかかわっている「オノマトペ」
オノマトペとは、雨が降る音の「ザーザー」、泣いている様子の「エーン」のように、音や声を表す擬音語・擬声語、光る様子の「チカチカ」、気持ちを表す「ソワソワ」のように、様子を音で表す擬態語のことです。日本語にはオノマトペがたくさんあります。
このオノマトペ、実は幼児期の言葉の発達に大切な役割を果たします。今回はその役割についてお伝えしたいと思います。
幼児の言葉を発達させるオノマトペの4つの役割とは
1.言葉の聞き取りに役立つ
「どんどん」「スルスル」のようなオノマトペは、リズミカルで音のくり返しが使われることが多いですよね。こうした言葉は、お子さんの注意を惹きつけて印象に残りやすく、文のなかから単語を切り出すのが簡単になると言われています。
「喉が渇いたから、ゴクゴクお茶飲んでるね」のようにオノマトペを交えた言葉掛けは、お子さんの言葉の聞き取りを助けます。
2.言葉を理解するのに役立つ
オノマトペは音やようすを表すので、イメージをよく伝えます。「雨が降る」と言うのと、「雨がザーザー降る」や「雨がぽつぽつ降る」と言うのとでは、後者のほうが雨の様子がリアルに伝わる気がしませんか?
言葉の発達過程にいる子どもにとって、自分の周りで話される会話の中には知っている言葉と知らない言葉が常に混ざっています。
仮に「降ってる」という言葉がまだ分からない子が「雨がザーザー降ってるね」と聞いたとき、「ザーザー」が分かれば「降ってる」の意味を推測し、「こんなとき使う言葉なんだな」「こんな意味かな」と掴んでいくかもしれません。もちろん言葉の意味を理解していくプロセスは単純ではありません。さまざまな表現のなかでくり返し触れていくことで少しずつ理解が進みます。
3.おしゃべりを増やすのに役立つ
同じ音が繰り返されるオノマトペは、おしゃべりがまだおぼつかないお子さんでも言いやすいのです。
オノマトペに限らず、小さいお子さん向けの言葉(赤ちゃん言葉)では、お片付けのことを「ナイナイ」、おしっこのことを「チッチ」のように、同じ言葉を2回繰り返すことがあると思います。
同じ動きの反復になり音が単純になることで、難しい音の並びが避けられ、言いやすさにつながるのです。
4.動作の言葉(動詞)の習得に役立つ
単語をつなげた文を話すためには、行為や動作の言葉(動詞)の獲得が欠かせません。
ですが、動詞は「食べる」「食べた」「食べよう」「食べて」のようにいろいろと形が変化します。また、「食べる」や「走る」などの行為や動きの言葉は、「りんご」や「バナナ」のようなものの名前(名詞)に比べてやや抽象的です。
たとえば「走る」は両腕を振って脚で地面を蹴って素早く移動する様子ですが、どこまでが「歩く」でどこからが「走る」なのか、言葉の意味を理解するときには、もしかしたら戸惑う子も居るかもしれません。人の動いている様子からどこからどこまで、どんなことを指しているのか意味と言葉を結びつけるのはなかなか複雑な過程です。
こうした理由から、お子さんにとって動作の言葉の習得は少し難しいようです。「あむあむ(食べる)」や「たったか(走る)」のようなオノマトペを使うことで、スモールステップの足場を一段階作ってあげることができます。
赤ちゃん言葉は子どもにとってはNGと思っているママ・パパは多いけど
車を「ブーブー」、猫を「ニャンニャン」はオノマトペでもありますが、”赤ちゃん言葉”でもありますね。子育て中のママ、パパからはよく、「赤ちゃん言葉を使ってもいいの?」「使うとしたらいつまで?」と聞かれることがあります。
一般的には、言葉を話す前の時期からカタコトの文を作って話せるようになる時期までは、赤ちゃん言葉を使ってあげると言葉の獲得の助けになると言われています。文でのおしゃべりが増えてきたら、「ブーブー、車来たね」のように、赤ちゃん言葉と一般的な名詞とを2つ並べて言葉を掛けていくことで、大人が使う言葉にだんだん置き換わっていきます。
そして、赤ちゃん言葉を卒業したあとも、赤ちゃん言葉以外のオノマトペはたくさんあります。イメージが豊富なオノマトペは、語彙力を広げる助けになります。どんどん使ってあげてください。
こちらの記事では寺田先生に「子どものことばの育み方」を伺っています
イラスト/べっこうあめアマミ(https://twitter.com/ariorihaberi_im)