5億個以上もある「肺胞(はいほう)」の不思議│酸素と二酸化炭素をどうチェンジしている?【親子で人体を学ぶ】

私たちは、毎日行っている呼吸で空気中の酸素を取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出しています。そのとき、酸素と二酸化炭素を交換しているのが、肺の中にある「肺胞(はいほう)」と呼ばれる部分なのです。肺胞とは、具体的にどのようなメカニズムなのか、詳しく見てみましょう。

肺胞って何? 基本情報を知ろう

「肺胞(はいほう)」とは、私たちの肺の中にある器官のこと。どの部分にあり、どのような形をしているのか、見てみましょう。

肺胞とは

私たちは、呼吸をしなければ生きていけません。呼吸で、空気中にある酸素をからだに取り入れて、逆に体内でいらなくなった二酸化炭素を外に吐き出しています。

この呼吸を行っている臓器が「肺」で、肺の中にある器官が「肺胞」です。膜や袋の意味を持つ「胞(ほう)」の言葉がついているように、肺胞は小さな袋状になっています。

肺胞の位置│肺のどの部分にあるの?

肺は、木から細い枝がたくさん伸びていくように、たくさんの気管支がどんんどん伸びて枝分かれしています。

気管支は、大きい順に「肺葉気管支(はいようきかんし)」「分節支(ぶんせつし)」「小葉気管支梢(しょうようきかんししょう)」と3つに分けられます。

そして、もっとも小さい小葉気管支梢の末端にあるのが肺胞です。肺胞は、ブドウの実がたくさんなっているように、袋状になってたくさんの肺胞が集まっています。肺胞のひとつの大きさは、0.1~0.3㎜ほど。このような小さな袋状の肺胞は、人の肺の中に全部で5億個以上あり、全部を広げるとその表面積は60㎡にもなると言われています。

上図の呼吸細気管支は、小葉気管支梢の末端の一部。そのさらに末端に房状になっているのが肺胞

肺胞の形と構造│なぜこの形なの?

肺胞はなぜ、袋状になっているのか不思議に思われるかもしれません。

これは、肺胞の表面積を増やすためです。

肺胞の役目は、先ほどからご紹介しているように、酸素と二酸化炭素を交換すること。そのため袋状になった部分を毛細血管が網の目のように取り囲むことで、肺胞の表面積が増えて、それだけ多くの酸素を取り入れて、二酸化炭素を吐き出せるようになっているのです。

肺胞の主な働き

次に、肺胞の主な働きについて見てみましょう。

機能1:酸素の取り込み

肺胞の大切な働きはまず、酸素をからだに取り込むこと。

私たちのからだは、酸素が足りなくなるとエネルギーが不足して、集中力が切れたり記憶力が低下したりしてしまいます。さらに酸素が足りなければ、意識を失って最悪の場合は死に至ってしまうのです。

そのため、肺で呼吸して、空気中にある酸素をからだに取り入れているのです。取り入れた酸素は、血液を通して全身に運ばれていきます。

肺胞でのガス交換のイメージ

機能2:二酸化炭素の排出

私たちは酸素を取り入れて、食べ物などをエネルギー源として使います。すると、私たちのからだの中で二酸化炭素が生まれるのです。この二酸化炭素をからだの外に排出するのも、肺胞の役割です。二酸化炭素は血液の中を通って、肺胞を通して外に排出されているのです。

肺胞の科学│酸素と二酸化炭素の交換のしくみ

肺胞は、呼吸によって取り入れる酸素と、体外に排出する二酸化炭素を交換する器官です。では、具体的にどんなしくみで、それが行われているのでしょうか?

ガス交換の原理│ヘモグロビンとの関係

呼吸で体内に取り込まれた酸素と、体内で生まれて体外に排出する二酸化炭素は、どちらも血液に入って全身に運ばれていきます。このとき、鍵になるのが「ヘモグロビン」という物質。ヘモグロビンは血液の中に含まれているタンパク質で、赤色の色素を持っています。

血液の主成分である赤血球にふくまれるヘモグロビン(上図のHb)が、酸素(O2)を運んでいるイメージ図

ヘモグロビンは、酸素と二酸化炭素を運ぶ運搬屋さんの役目を担っています。酸素が多い肺ではヘモグロビンが酸素と結びつき、からだのさまざまな部位で酸素が少ない部分に行くと酸素を離し、代わりに二酸化炭素と結びつきます。こうして、血液を通して酸素と二酸化炭素が運ばれていくのです。

肺胞と血管│密接なつながり

先にご紹介したように、肺胞は表面積がとても大きく、そこに網の目のように毛細血管がはりめぐらされています。呼吸して、からだの外から酸素を取り入れると、その酸素はすぐに肺胞の毛細血管に取り込まれ、代わりに二酸化炭素を離します。

このように、酸素と二酸化炭素の交換が肺胞の毛細血管で行われ、私たちは呼吸しているのです、

睡眠中の肺│深呼吸の重要性

私たちは、寝ているときは呼吸が深くなります。

通常、人がアクティブに活動しているときや興奮しているときは「交感神経」が優位となりますが、リラックスして心も落ち着いているときは「副交感神経」が優位になります。夜の睡眠中は副交感神経が優位となるので、健康的な状態なら自然と深呼吸するようになります。

しかし、慌ただしい生活を送っていたり大きなストレスを感じていたりすると、睡眠中でも呼吸が浅くなってしまうこともあります。

交感神経と副交感神経のバランスのイメージ図

深い呼吸と浅い呼吸を比べると、深呼吸のほうがからだに取り込める酸素の量はずっと多いもの。からだを健康な状態に維持するためには、からだと心をしっかり休めて、深い呼吸をすることが大切です。

肺胞を守る方法│健康な呼吸のために

私たちは呼吸して酸素を取り込まないと生きていけず、そのときに必要なのが肺胞の存在です。では、肺胞を守って健康なからだを維持するためには、どんなことに気を付けたらいいでしょうか?

禁煙と肺胞│タバコが肺胞に与える影響

肺や肺胞の健康を守るために避けたいのが、喫煙。「タバコを吸い続けると、肺が真っ黒になる」などと言われているように、タバコはとくに肺に悪影響をもたらします。

起こりやすい病気としては、喘息のほか、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」があります。COPDには、「肺気腫」と「慢性気管支炎」があり、肺気腫は肺胞が破壊されて肺の中が空洞化し、空気がたまってしまう病気です。現代の医療では治らない病気のひとつで、壊されてしまった肺胞は元に戻ることはないと言われているのです。

空気のクオリティ│清潔な空気で健康な肺胞

肺胞は、肺の構造の95%を以上を占めている器官のため、肺胞が健康であることは、肺が元気にいることにつながります。

汚い空気ばかりを吸っていると、それは肺にも影響を及ぼすと想像できますよね。実際、大気汚染された場所で暮らしていると、喘息など肺の健康に影響が出やすいと言われています。

深呼吸とストレッチ│肺胞の健康を促す習慣

同じ呼吸でも、活発に動いているときと、静かにしているときとでは、とりこめる酸素の量は異なります。

たくさんの酸素をからだに取り入れるためには、大きく、深く呼吸することが大切。深呼吸を繰り返せば、こころが落ち着いてきてリラックスでき、それも健康効果につながります。

ぜひ、風呂上りなどに、ストレッチとあわせて深呼吸を行う習慣を取り入れてみましょう。

私たちは1日2万回以上呼吸している

私たちが行う呼吸の回数は、1日2万回から2万5000回。それだけの数「息を吸って、吐いて」という行為を繰り返し、肺にある肺胞が酸素を取り入れて、二酸化炭素を外に吐き出しています。

私たちが元気に毎日生きているのは、そんな肺胞の働きのおかげです。ふだん、肺胞の存在を意識することはないかもしれませんが、呼吸のしくみを理解すると、深呼吸の大切さや肺を健康に維持する重要性にもっと気づくきっかけになるでしょう。

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