ウクライナ侵攻は日常生活にどんな影響を与えているか
テレビで見ると対岸の火事?
ウクライナ戦争から1年半が経過しますが、戦争が起きているのはウクライナであり、日本から8000キロも離れた場所で起こっていることはなかなか現実の問題として認識しにくいかも知れません。ウクライナ戦争によって多大な影響を受けていると感じている人もかなり限定的なのではないでしょうか。しかし、経済のグローバル化が広がり、経済の相互依存が基本な今日の世界において、ウクライナ戦争による影響は我々の身近なところにまで迫っています。
欧州に行きにくくなった
コロナ禍も終わり、訪日する外国人観光客が再び激増するのと同様に、日本人の海外渡航も活気を取り戻しています。依然としてハワイや台湾、ソウルなどが人気ですが、英国やフランスなど欧州へ渡航する日本人も増加傾向にあります。その欧州渡航に、ウクライナ戦争による影響が直撃しています。ロシアによるウクライナ侵攻以降、日本は欧米と足並みを揃える形でロシア非難、制裁を強化し、今日日露関係は極めて悪化しています。それによって、ロシア上空を飛行できなくなっているのです。
成田や羽田、関空から欧州各都市に向かう場合、通常は最短ルートとなるロシア上空を通過し、12時間程度で結んでいましたが、ロシア上空を避けてアラスカを通過する北回り、中央アジア上空を通過する南回りなどを余儀なくされ、飛行時間もこれまでより3時間から4時間も掛かり、その分燃料費も膨れ上がり、時間的にも経済的にも大きな制限が出ています。
また、それによって輸送も大きな影響を受けています。手紙など軽いものはそれほど金額的に大きな影響は出てないと思われますが、小包や段ボールなど大きな荷物を送る場合には、これまでより金額が高くなり、到着する日数も長く掛かるようになっています。
世界的な物価高に拍車が
そして、最も身近な問題としては、やはり物価高でしょう。ウクライナ侵攻から1年半の間で、あらゆる物、商品の値上げが相次いでいます。たとえば、大きな問題の1つが小麦です。ウクライナ侵攻によってウクライナ産の小麦が輸出できなくなり、それに依存してきた南アジアや中東、アフリカや中南米の国々では小麦の値段が跳ね上がり、地元住民がそれを買えなくなり、抗議デモや衝突、略奪などが相次ぎ、治安が悪化しました。
デモなどで情勢が混乱する国も
たとえば、南米のペルーではそれに耐えかねた市民による抗議デモが全土に拡大し、飲食店が放火されたり商店が略奪行為にあったり、公共交通機関が一時ストップしたりするなど、ペルー政府が非常事態宣言を発令する事態となりました。同様の事態はイラクやスリランカなどでみられ、イギリスやベルギーなど欧州でも大規模な抗議デモが発生しました。
日本はウクライナやロシア産の小麦に依存していないので直接的な影響は出ていませんが、ウクライナ産小麦の輸出停止などによって需要と供給のバランスが不安定化し、世界的に小麦価格が上昇しました。それによって、日本各地のうどん屋やパン屋、ケーキ屋など小麦を材料とする品々では値上げが相次ぎました。
こういった影響はまだまだ続く
残念ですが、以下の状況が改善に向かう兆しは現在のところ全く見えません。ウクライナの戦況では、これまでウクライナ優勢が続いてきたものの、ロシアも粘っており、一進一退の状況が続いています。ウクライナは2014年にロシアによって占領されたクリミア半島までも奪還する姿勢を貫いていますが、ロシアも奪還阻止のため最大限戦力を投入すると思われます。プーチン大統領もロシア軍の撤退、戦争の終結などは全く想定しておらず、戦争の長期化は避けられない状況です。よって、我々の日常生活への影響は長期化する可能性が濃厚で、今の状況が日常となることも考えられます。
ポイント解説:ロシアとウクライナの戦争で我々日本人に影響が出ていること
・世界的な物価の上昇(特に小麦など)
・ヨーロッパの渡航に3-4時間も長くかかる
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記事執筆:国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。