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子ども新聞は「新聞を読む習慣」をつくりやすい
新聞を読む習慣があると、言葉を覚えたり、活字を読むことが苦ではなくなったり、もちろん社会の出来事や世の中の流れを知ったり、さまざまな知識を得たり……と、大人はその効果を実感しています。親が「子どもにも読んでほしい」と願うのも自然なことでしょう。ただ、まだ語彙が少なく、字を読むことに慣れていない子どもや読書習慣のない子どもに新聞を毎日読ませるのは、少しハードルが高いかもしれません。
写真や図、イラストなどカラフルな紙面がいっそう興味を引き立てる
その点、子ども新聞は厳選されたニュースが子どもにわかりやすい文章で書かれているだけでなく、子どもの興味を引くテーマや流行の話題、学習マンガなど、読みたくなる記事が満載。写真や図、イラストなども多くカラフルで、子どもの目を引く工夫や仕掛けもたくさんあって、新聞を読む習慣をつくるのに最適です。
「家に子ども新聞が届くと、すぐに子どもは読んでいる」というケースもありますが、そうではない場合は親のちょっとしたサポートが効果的のようです。子どもが新聞を読む楽しさに気づき、自然と自分から読む姿勢ができていくといいですね。
知らないふりをして、子どもにニュースについて聞いてみよう
そこで子ども新聞を120%活用するコツを、読売KODOMO新聞編集長、石川剛さんに聞きました。
「良い意味で親が時々とぼけてみるといいと思いますね(笑)。子どもが〝子ども新聞のニュース面を読んだかな?〟というタイミングを見計らって、‶あのニュースってどういうことだったの?〟と知らないふりして聞いてみる。すると子どもは、読んでいれば理解したまま、感じたままのことを自分なりのまとめ方で親に話してくれるし、読んでいなければそこで読んでくれるでしょう。子どもはただ受動的に新聞を読むだけでなく、親に説明するためにしっかり理解しようと集中して読みますし、よく考えて自分の言葉で話そうという経験を重ねていけます。会話のきっかけにもなると思いますよ」と話します。
親は子どもの答えがどんなものでもうれしいもの。「へえ、そうだったんだ。驚きだね」「なるほど、よくわかったよ。ありがとう」など、子どもが一生懸命話してくれたことを認めるリアクションで、お互いに気持ちよく、楽しい会話が進められるといいですね。
同じテーマを親子で読み比べてみる
読売新聞本紙と読売KODOMO新聞には、毎月1回、連動企画として同じテーマの旬のニュースを取り上げる「New門」というコーナーがあります。
これはもともと読売新聞本紙の企画で「このニュースの土台って何なの?」という疑問に答える、ニュースの入門的な企画として始まりました。その後、読売KODOMO新聞と連動させて、同じテーマで「読み比べ」してもらうという企画になったといいます。
視点の違いが「New門」のおもしろいところ
「テーマは同じでも、ニュースを切り取る角度や文章の表現、取り上げる視点は違うので、内容も共通するところもあれば、違うところもあります。親子でそれぞれ‶こっちの新聞にはこんなことが書いてあったよ〟と話し合って、自由に読み比べてほしいですね。テーマについてより深く知り、考えることができると思います。子どもが大人の新聞に興味をもつきっかけにもなるでしょう」と石川さんは言います。
この日は「吹奏楽」がテーマ。KODOMO新聞は「吹奏楽の歴史や魅力」を中心に、写真入りの楽器の説明や吹奏楽部の高校生の声を入れるなど、ビジュアル的にも楽しいものになっています。本紙のほうは日本の吹奏楽の歩みを詳しく解説しながら、吹奏楽を描いた映画やアニメなどの作品の紹介、「最近は岐路に立たされている」という現状の問題点にも触れています。
記事に連動した「学習シート」で、時事問題に強くなる
読売KODOMO新聞のサービスには、記事のなかから大事なニュースや考えを深めてほしい社会問題をピックアップしてクイズ形式のプリントにまとめた「ウィークリー学習シート」もあり、インターネットからダウンロードできるようになっています。
「この‶ウィークリー学習シート〟は毎週土曜日にアップロードされるので、週末にプリントアウトして親子一緒に挑戦すれば、共通の話題で楽しみながら、時事問題の知識を深められるでしょう。親はKODOMO新聞を読まずに解けば、ちょうどいいハンデになると思いますよ」と石川編集長。
扱っているテーマは、新しい一万円札に描かれる「渋沢栄一」など中学入試対策にも役立ちそうなものも。問題数も4、5問くらいなので、気軽に取り組めそうです。
気になる記事をスクラップする
新聞活用術の定番ですが、読売KODOMO新聞はスクラップのしやすさにも配慮されています。本紙に比べて、「四角くまとまっている」ものが多く、切り抜きやすくなっています。
「子どもたちにはスクラップ作業を負担にしてほしくないので、楽しくなるような工夫をしています」と読売KODOMO新聞記者の染木彩さんは言います。例えば「時事ワード」のコーナーは、1つの言葉がカード大の統一された四角いスペースに収まっています。人気マンガのキャラクターの一言コメントもあり、スクラップしてコレクションしたくなるようなデザインです。
「中学受験生の読者のなかには、この時事ワードを切り取ってノートに貼り、関連する事柄を調べて書き足して、1年分を入試前に見直していると報告してくれる子どもが、毎年かなりいます。勉強の合間にそのノートを見てリラックスしてくれているといいなと思いますね」と染木さんは話します。
子ども新聞を置く場所を工夫してみよう
子どもの興味や関心を上手に引き付けてくれる子ども新聞ですが、それでも子どもが「届いてもなかなか読み始めない」ときは、どのような工夫をしたらいいのでしょうか?
「以前取材に行ったある学童保育所では、壁に4つのホルダーがあって、1カ月分の読売KODOMO新聞4セットが、それぞれ表紙が見えるように立てかけてありました。またある家庭では、新聞をリング留めにして、食卓サイドに掛けてありました。新聞を積んでおくとどうしても読みにくいので、子どもの目のつくところにさりげなく立てたり、掛けたりしておくというのは、いいアイデアだなと思います」と染木さんは教えてくれました。
いつの間にか子どもが勝手に読むように
また、読者のなかには「親が読んで気になった記事を一枚、トイレに貼っておく」という作戦を実行している人も少なくないと言います。
いずれにしても、親から「新聞を読みなさい!」と言われているようなプレッシャーをかけられると、子どもはまず読みません。「無理強いはしないけど、つねに子ども新聞を見えるようにしておく」と、子どもはいつの間にか勝手に読むようになることが多いようです。
親子で子ども新聞をおもしろがってほしい
読売KODOMO新聞は、一部の記事をこのHugKumサイトを制作している小学館も請け負って作っています。毎号20ページのなかで、時事ニュース記事以外の特集やファッションページ、マンガなどのページを、石川編集長と話し合いながらバランスを決めて、記事を作っていくのです。小学館の「読売KODOMO新聞編集」担当の明石修一さんは、子ども新聞を楽しむコツをこう話します。
知ることが新鮮な喜びになってほしい
「社会ニュースというと身構えてしまいがちだけど、たとえば時事ワードのコーナーを読んでそこから派生して、自分にとってのおもしろいことを見つけられることもあるでしょう。私たちは読売KODOMO新聞を‶知ること〟に対して新鮮な喜びを感じるものであるようにと考えて作っています。知らなくてはいけない、ではなく、知っているともっとおもしろい、と発展的に好奇心を広げてほしいですね。本紙よりもKODOMO新聞を先に読むという大人もいます。大人にも便利なので、ぜひ親子でおもしろがってほしいですね」
二児の母でもある記者の染木さんは、「読売KODOMO新聞はマンガも多いです。でも親は子どもに‶マンガばっかり見て!〟と目くじらを立てないで、子どもが関心をもったところを大事にしてあげてほしいですね。掲載中の歴史4コママンガが大好きで‶日本史の歴史上の人物はみんな覚えちゃった〟と手紙をくれた小2の男の子もいました。子どもはどこからどんな興味を広げるかわからないので、親子の会話のなかで、それを見逃さずに興味の芽を伸ばしてあげられるといいなと思います」と話してくれました。
◆お話を伺ったのは・・・
「読売KODOMO新聞」は2011年3月創刊、毎週木曜日発売の週刊子ども新聞で、現在の発行部数は20万部、国内の子ども新聞の人気ナンバーワンになっている。購読料は1カ月550円。本紙用の原稿を子ども向けにリライトするのではなく、現役社会部記者が子ども目線の疑問をもってゼロから取材し、子どもにわかりやすい記事作りをしているのが特長。大手進学塾と提携した学習ページや中学受験に役立つ内容も毎号掲載。
前編はこちら
取材・文/船木麻里 撮影/五十嵐美弥