「二重になりたい」子どもに言われたら?容姿の悩みで自己肯定感を下げない親の対応【性の赤裸々相談室】

高校や小学校の保健室の先生を経て、現在はフリーランスの性教育講師、思春期保健相談士として各地の学校や講演会で活動しているにじいろさん。小学生ママたちの打ち明けにくい性に関するお悩みや疑問にお答えいただきました。 前回も大反響だった【性の赤裸々相談室】シリーズの続編。今回は、容姿や体型など見た目でその価値をつけることを意味する“ルッキズム”について、お話を聞きました。

子どもから容姿や体型の悩みを打ち明けられたら

Q 小学5年の娘は、毎日のように「二重に生まれたかった」言うので、どうリアクションすればいいか悩みます。

「二重に生まれたかった」真剣に悩む娘にどう声をかける?

にじいろさん(以下:にじいろ) 「鼻が丸いのが嫌だ」「もっと脚が長ければいいのに」など、容姿や体型に関して、悩んでいるような発言をする子どももいますよね。例えば「目が小さいのが嫌!」という子どもに対し、どのようにリアクションするのがいいと思いますか?

―「そんなことないよ! あなたの目はパパに似ていて、とっても魅力的!」などと、子どもの容姿や体型を褒めるかもしれません。

にじいろ そうですよね。もちろん、褒めてあげることはとてもいいことだと思います。親としては、なんとか励ましてあげたい、フォローしたいという思いから「そんなことない!」と、まず一言目に言ってしまいがちですよね。ですが、子どもは「目が小さい」ということに悩んでいます。そのため、この否定的な言葉を否定で返さずに、まずは一度受け止めてあげましょう。
「目が大きくなりたかったんだね。でも、ママはあなたの目はとても魅力的な目だと思っているよ」
こんな風に一度受け止めた上で、褒めたり、励ましたりするポジティブな声かけをしてあげるといいですね。

―なるほど。「受け止める」ことが大事なんですね。

にじいろ そうなんです。悩んでいる子どもに対して自信をつけさせたいあまり、過剰に褒めることは逆効果になる場合があります。子どもの悩みは受け止めつつ、さりげなく褒めてあげるのがいいですね。容姿や体型に対しての自信は、日々の積み重ねでついて来るものだと思います。「ママやパパは自分のことを受け入れてくれている」と子どもが感じることで、少しずつ自分に自信がついてきますよ。

親が何気なく言ってしまっているルッキズム発言

Q 「どうせ僕はかっこよくない」「どうせ走ってもビリだ」など、ネガティブな発言が目立ちます。

容姿に対して自信が持てずネガティブな発言が目立ったら?

にじいろ 自分に自信が持てなくなっている時、どう対応したらいいか悩むことがありますよね。家庭内だけではないと思いますが、以下のような価値観は世の中にあふれているのではないでしょうか? もしかしたら、このような価値観と自分を比べて、自信をなくしているのかもしれません。

「目がぱっちりしているから、絶対にモテる」
「〇〇ちゃんは、色白で“女の子”って感じ」
「脚がスラっと長くて、モデルさんみたい」
「あの子は足が速いから体育の成績がいいだろうね」

―はい、身に覚えのある発言が並んでいます……。

にじいろ 子どもに対してだけではなく、大人同士の会話の中でも何気なく発言してしまうことがありますよね。このような発言は、子どもにとって「その逆だったらだめ」という価値観を植え付けてしまっているかもしれないのです。子どもの友達やメディアに出ている人に対して、外見をジャッジするような発言を控える意識をするだけでも変わってきます。

―自信をなくしている子どもにしてあげる具体的な声かけは、どんなものがありますか?

にじいろ 容姿や体型などの見た目のことなどの生まれ持った部分ではなく、その子が選んだものやセンスの部分にスポットライトを当てて、声かけをしてあげるのがおすすめです。

「(自画像を描いた子どもに)髪の毛に5色も使って塗ったんだね。細かいところまでよく見てて上手に塗れてる!」
「(学校に来ていく洋服を選んだ子どもに)青いTシャツに黒のスカートの組み合わせ、すごくおしゃれに見えるよ」
「(片づけをした子どもに)ここにペンを立てるのはいいアイデア!きれいにしてくれてありがとう」

にじいろ このように、子どもが選んだものやセンス、努力によって変えたものなどにフォーカスしたポジティブな声かけを心がけるといいですね。

健康被害がないものなら子どもの要望を叶えてあげてもOK?

Q  眉毛の形を気にしている娘。いつから整えてあげたらいいでしょうか?

眉毛の形に子どもが悩むことも。手入れはいつから?

にじいろ 例えば、子どもが「眉毛が太いのが気になる」と言ってきたとします。その時に、二重になりたかったのお悩み同様、「そんなことないよ」「太い方がかわいいよ」などと、否定的な言葉を否定で返さずに、まずは受け止めてあげましょう。眉毛の形を整えることは、健康被害があったり、お金がかかることでもないので、個人的にはやってあげても良いのではないかと思います。そうすることで、本人が少しでも前向きになったり、生きやすくなるならいいですよね。
しかし、本人が気にしていないのに「もうちょっと眉毛を整えたら?」「ムダ毛は剃った方がいいんじゃない?」などと、大人の方から言っていくのはあまりおすすめできません。本人が気になったタイミングで、ムダ毛処理の方法を教えたり、一緒に調べてみたりするのがいいですね。

「髪の毛を金髪にしたい」

「ピアスを開けたい」

「永久脱毛をしたい」

にじいろ もし、このようなことを子どもが言った場合は、健康上のリスクが伴うことでもあるので、慎重に考えていきたいですね。金髪にするのは難しいけど、ヘアアレンジでおしゃれを楽しむ。ピアスではなく、イヤリングをしてみる。永久脱毛ではなく、カミソリの安全な使い方を教える。こんな風に、より安全な打開策を考えて、子どものお悩みに向き合ってあげられるといいですね。

―容姿や体型についての子どもの悩みに寄りそってあげることが大切なんですね。

にじいろ そうですね。「このままで大丈夫!」と言ってあげることも良いのですが、現状悩んでいることに対して、「そこが気になっているんだね」と、受け止めてあげることが何よりも大切だと思います。

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記事監修

にじいろ|性教育講師・思春期保健相談士
元保健室の先生であるにじいろさんが性教育を行う対象は子どもだけではなく、保護者や教員など様々。現場の声と知識を活かして、多岐にわたる活動をしている。昨年出版した著書「10代の妊娠」(合同出版)では、10代の子どもの妊娠や出産、中絶など、リアルな性の悩みを紹介し話題となっている。

 取材/本間綾

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