「リンパ管」が外敵からからだを守り清掃する? リンパの驚くべき機能を再確認【親子で人体を学ぶ】

「リンパマッサージ」や「リンパの流れをよくする」などと言うように、「リンパ液」や「リンパ管」という言葉はよく耳にすることでしょう。でも、そもそもリンパ管とは何なのか、どこにあって、どんな成分でできていて、どんな役割があるのかご存じですか? 本記事ではそんなリンパ管の基本から、リンパを健康に保つためのポイントまでご紹介します。

リンパ管の基本:体内の清浄システム

「リンパマッサージ」という言葉があったり、「リンパの流れを良くしよう」などとよく言われますよね。そもそもリンパ管とはどんなものなのでしょうか?

リンパ管

リンパ管とは、「リンパ液」または「リンパ」が流れる管のこと。そしてリンパ液とは、私たちのからだの中にある細胞外の水分のことです。

人のからだの6~7割は水分でできています。そして、その60~70%は細胞の中にあるのですが、およそ3割は細胞の外にあります。この細胞の外にある水分のうち、血液以外のものがリンパ液です。

リンパ管の構造と配置

リンパ管は静脈にからみつくかたちで全身にはりめぐらされています。首のつけねや、鎖骨の下など、いくつかのリンパ管は太い管になっています。

リンパ液の流れはからだの末端から心臓に向かう一方通行です。それが逆流しないように、弁がついています。

また、血管は心臓がポンプの働きをして血液が流れるようになっていますが、リンパ管については周囲の筋肉がポンプの役割をしていて、中のリンパ液が流れるようになっています。

血管との違いと関係

血管がからだ中にはりめぐらされているのと同じく、リンパ管もからだのあちこちまではりめぐらされています。ただ、血管には血液が流れていてからだの隅々まで、酸素と栄養を届けています。それに対して、リンパ管はリンパ液を運ぶ役割。

毛細血管を通して運ばれた酸素と栄養は、水分とともに毛細血管から浸み出て、からだの隅々まで届けられます。そして血管が老廃物を回収していくのですが、血管では回収できない大きさのたんぱく質、脂肪などを水分とともにとりこんでいくのがリンパ液です。

リンパの流れとその重要性

リンパ液はどのようにからだを流れているのでしょうか?

リンパ液の起源と流れるルート

血液は、心臓からポンプのように押し出されて、全身に送り出されています。では、リンパ液はどこから流れているのでしょうか?

リンパ液のスタート地点となるのは、毛細血管から染み出た組織液。毛細血管はからだ中にはりめぐらされ、手や脚の指先などからだの末端まで、必要な栄養などが届くようになっています。つまりリンパ液は、そんなからだの隅々が起源となり、心臓まで流れているのです。

血管は、心臓から全身に向かって流れ、再び心臓まで流れていますが、リンパ液についてはからだの末端から心臓まで一方通行で流れています。

リンパ液は、体の末端から心臓に流れ込むのみの一方通行
リンパ液は、体の末端から心臓に流れ込むのみの一方通行

リンパ節とリンパの浄化

からだ中にはりめぐらされているリンパ管。その途中には、「リンパ節」と呼ばれる組織が存在しています。リンパ節は直径2~20㎜ほどの豆状の器官。中にはリンパ球が豊富に存在し、さらに白血球の一部である樹状細胞が存在しており、リンパ液の中の不要なものをろ過したり、細菌やウイルスなどの異物をとらえて、攻撃したりするのです。

全身の主なリンパ節の位置。図に示されている以外にも数百のリンパ節がある

リンパ節の働きをわかりやすく言うと、リンパ液のろ過とリンパ液に入り込んだ細菌やウイルスなどをせきとめて、外敵からからだを守ること。

リンパ節はからだの中に400~700個ほども存在し、主なリンパ節は、左右の脇の下、脚のつけね、膝などにあります。

リンパ液の成分と役割

リンパ液とは何でできていて、どんな役割があるのか、見てみましょう。

リンパ液に含まれる物質とその機能

リンパ液は、リンパ球、脂質、無機塩などが含まれています。リンパ液は、無色からやや黄色がかった淡黄色で、やや粘り気のある液体で、血液よりもゆっくりとリンパ液の中を流れていきます。

免疫システムとリンパ液の関係

私たちのからだは、細菌やウイルスなどに侵入されるリスクが常にあります。そして、私たちの免疫システムで重要な役割を担っているのが、リンパ球の存在。

リンパ球には、主にB細胞T細胞というものがあり、抗体を作り出したり、外敵を攻撃したりする働きを持っています。そしてリンパ球は全身をくまなく動きまわり、細菌やウイルスが侵入するとすぐにそれらを見つけ出して攻撃しているのです。さらに、リンパ液とともにリンパ節まで運ばれ、ここに豊富にあるリンパ球で細菌やウイルスは攻撃されているのです。

風邪を引いたときなど、リンパ節が腫れた経験がある方がいるかもしれません。これは、リンパ節が防衛基地となって外敵から頑張って守っているサインと言えるのです。

リンパ系の健康を保つコツ

全身をめぐっているリンパ液やリンパ管の存在。私たちの老廃物を流し、免疫機能も担っていて、とても大切であるとおわかりいただけましたか? そんな重要な存在だからこそ、リンパの流れを良くしたいですね。

リンパマッサージの効果

リンパマッサージは、リンパの流れを良くするひとつの効果的な方法です。リンパ液の流れを促すことで、リンパがスムーズに流れやすくなります。また、むくみが取れたり、免疫力がアップしたり、からだにとって嬉しいことがいっぱいです。

リンパマッサージを行ううえで注意しておきたいのは、リンパは一方通行で正しい向きに流してあげなければいけないこと。リンパ節に向かってリンパが流れるようにやさしくマッサージしましょう。ボディクリームをつけて、お風呂上りなどに、自分が気持ちいいと感じる程度の強さで、やさしくからだを撫でていってください。

ときにはプロによるリンパマッサージを受けることもいいですし、セルフでできるマッサージも毎日の習慣として取り入れてみてもいいですね。

リンパマッサージの流れ。矢印の方向にリンパ液を流すイメージ

食事や生活習慣でリンパ系をサポート

リンパは食事面でサポートすることもできます。特に覚えておきたいのは、むくみを引き起こしやすく避けたい食事。

ラーメン、梅干し、インスタント食品など塩分の多いもの、生野菜や南国のフルーツなどからだを冷やす食べ物、甘いお菓子やジュースなどの糖分、アルコールなどは、どうしてもむくみやすく、リンパの流れが滞りやすくなってしまいます。

栄養バランスのとれた食事を意識するといいでしょう。「まごわやさしい」のように、「ま=豆」「ご=ごま」「わ=わかめ」「や=野菜」「さ=魚」「し=しいたけ」「い=芋」を意識してみて。

健康的な食事
健康的な食事を意識

また、体を適度に動かして、お風呂はシャワーで済まさず湯舟に浸かってからだを温め、ストレッチなどを行うといった生活習慣もおすすめです。

からだの老廃物を流すリンパ管の働き

きれいな血液を届ける血管を水道に例えるなら、リンパ管はからだで出た老廃物を集めて運ぶ下水道のような存在。その流れが悪くなっては、老廃物がからだのあちこちに溜まってしまって不調をきたしてしまいます。リンパの流れを良くすることが、いかにからだにいいことかおわかりいただけましたか?

またリンパはからだの免疫機能も持っている大切な存在。細菌やウイルスが侵入しても、それを攻撃してからだを守ってくれているんです。

そんなリンパの重要な役割を知ると、リンパマッサージの大切さがわかってくるかもしれませんね。ぜひ食事や生活習慣も気を付けて、リンパの流れがいいからだを目指していきませんか?

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