ミュージカルを学ぶことで身につく力とは? 30年間子どもたちの可能性を引き出し続ける児童劇団「大きな夢」に、その魅力を聞いた!

北海道から九州まで、日本各地で子どもミュージカル教室を展開している児童劇団「大きな夢」をご存じですか? 年長から高校生まで、約700名が在籍。プロの育成を目的にせず、子どもたちの可能性を引き出すため、30年もの間活動しているんです。そんな「大きな夢」の練習現場に伺い、ミュージカルを学ぶことで子どもたちにどんな力が身につくのか、お話を聞きました。

子どもの可能性を引き出すミュージカル教育

大人も子どももワクワクするミュージカル。劇場に観に行くのが好き! というご家庭は多いと思いますが、子どもの習い事として検討したことはありますか? 海外では学校教育の中に「演劇」を取り入れている国もあり、表現力やコミュニケーション力、集中力などを鍛えるために役立てているそう。

今回は、日本各地で子どもミュージカルを運営している「大きな夢」の皆さんを取材。公演を控えて練習に取り組む子どもたちの集中力や表現力に圧倒されましたので、ご紹介します!

児童劇団の目的は俳優の育成ではなく、あくまで「それぞれの子の成長」のため

児童劇団「大きな夢」は、1993年に代表の青砥洋先生が設立。劇団四季でミュージカル俳優として活動した経験を活かし、文化センターに子どもたちを集めてミュージカルをはじめたのがきっかけでした。

現在は10月末に控えた公演に向けて練習の真っ最中。振り付けや演出を行う中沢先生にお話しをお聞きしました。

ご縁が広がり、全国26カ所に教室を構える

 HugKum:現在、何名くらいのお子さんさんが所属しているのですか?

中沢先生:団員は、小学1年生から高校3年生まで、全国に700名以上います。北は北海道、南は九州まで26の教室があり、講師陣が全国を飛び回って指導をしています。

全国に拠点がある理由は、ちょっと変わっていて。劇団にいたお子さんが引っ越しで地方に行くということになり「引っ越し先でもミュージカルが続けられるように!」と現地で協力者を募って立ち上げた拠点が複数あります。また、劇団のチラシを見たダンスの先生が、協力したいと申し出てくださったこともありました。あらためて、ご縁によって広がってきた劇団だと思っています。

演出を担当する中沢千尋先生

HugKum:どんなきっかけで入団する子が多いのですか?

中沢先生:歌や踊り、お芝居が好きで入ってくる子は多いですが、親御さんがお子さんに協調性を学ばせたい積極的になって欲しい、などの想いをもって入団されるケースもあります。

表現することで、自分に自信がついてくる

HugKum:ミュージカルを学ぶことで、子どもたちにどんなことが身につくのでしょうか。

指導をする中沢先生。レッスンでは子どもたちと楽しむことを心がけているそう。

中沢先生:親御さんからは、劇団に入ってから積極的になり学校でも手を挙げて発言できるようになった、先生や様々なスタッフと関わるため、人とのコミュニケーションに抵抗がなくなったというお話をよくお聞きします。そのほか、声が大きくなって挨拶がしっかりできるようになったというお子さんもいますね。

最近では、低学年のお子さんで、稽古場に入ると泣いてしまうお子さんがいました。人前でセリフを言うことができず、歌も声が出ているのか分からない状態でした。しかし、初めての公演を踏んだ後、自信がついたのでしょう。次のレッスンでは自分から稽古場に入り、セリフを言えるようになったんです。

周りの子どもたちは「わー!セリフを言えた!」と大喜び。これまでの様子を見守ってきた父母の方々もみんなで涙する出来事がありました。舞台経験を積んだことで大きな成長を遂げたんですね。子どもたちが自信をつけて、お客様から拍手をもらう光景は私たちにとって本当に嬉しいものです。

役柄を演じることで、自分にない考え方を身につけて欲しい

HugKum:作品は全てオリジナルとお聞きしました。どんな作品なのでしょうか。

自分の出番を待っている子どもたちも真剣です

中沢先生:「大きな夢」で扱う作品は、愛とやさしさ、思いやりをテーマにした作品が多いのが特徴です。10月の公演で演じる『緑の村の物語』も、心温まるファンタジー。今は深い意味まで理解できていなくても、大人になって思い返したときこんなことを伝えたかったんだ、と気づいてもらいたいなと思っています。現実では言わないようなことも、役柄を疑似体験しながらセリフを言うことで、新しい考え方が学べるものです。温かい作品を通して、思いやりの心を育てていってほしいですね。

 親御さんのコメント:

幼稚園の年長のときから入団し、はじめの頃は緊張やプレッシャーではよく泣いていました。でも、優しい上級生たちが周りにいてくれたせいか、辛いとか辞めたいとか言ったことは一度もありませんでした。中学生になった現在、自分がお姉さんの立場として下の子たちの面倒をみているようです。劇団の活動を通じて社会性を身に着けることができたなと思っています

中学1年生の娘さんのお母さま

親御さんのコメント:

現在小学6年生の次女だけでなく、すでに卒団した大学生の長女もお世話になりました。

「大きな夢」では父母も一緒に公演の準備を行います。そのため、長女がいわゆる反抗期の時期も、劇団のことで共通の話題が常に尽きませんでした

また、今回のような大きな舞台では日本各地から子どもたちが集まってくるので、全国に友達ができるのも良いところ。子どもたちも、同じ日本に頑張っている仲間がいるんだと、感じていると思います。

小学6年生の娘さんのお母さま

ミュージカルを通じて、子どもたちが手に入れるもの

 最後に、劇団の代表である青砥洋先生にもコメントをいただきました。

代表の青砥洋先生

青砥先生:「大きな夢」は、スターを育てたり、メディアに出したりすることが目的の劇団ではありません。大きな声を出すことができなかった子が、素晴らしい声で歌えるようになったり、ダンスのステップが踏めなかった子があるときビックリするほど上手になったり。本人にとって素晴らしい成長があります。また、小さなお子さんは上級生と一緒に色んなことを経験し、上級生は下の子どもたちをかわいがりながら活動することで、とてもいい雰囲気が生まれます。

子どもたちは親から離れ、楽しい仲間と共に芝居をする。ひとつの作品を作り上げながら、自分自信の中身の開発がある。楽しいことがいっぱいあるのが劇団です。

10月の公演には、代表の青砥先生も出演

一生懸命な子どもたちの姿に感動

取材で練習風景を拝見し、子どもたちの演技力はさることながら、真剣に取り組む姿勢に驚かされました!。自分が演じていないときも静かに仲間の演技を見て、何かをメモしていたり、指導が入ったときに相手の目を見て真剣に聞いたり。子どもたちの一生懸命な様子に、なぜか泣けてきた筆者でした(涙)

『緑の村の物語』の公演は、20231028日(土)~1031日(火)に新国立劇場 小劇場で行われます。ご興味のある方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

児童劇団「大きな夢」のWEBサイトはこちら≫

『緑の村の物語』公演の詳細はこちら≫

 

構成/HugKum編集部 撮影/五十嵐美弥 取材・文/寒河江尚子

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