時間も食費も大幅節約できる「冷凍貯金」がスゴイ! 冷凍王子が教える最強の家事テクとは? 秋の味覚 きのこを使って徹底解説!

安売りの食材を多めに買ったはいいけれど、うっかり腐らせてしまった…という経験はないでしょうか?物価高騰の中、そんな無駄なお金を使っている場合ではありません(笑)! 家計を守るべく、冷凍王子こと西川剛史さんに今すぐできる“冷凍術”をさっそく教えていただきましょう。

時間もお金も得する裏技「冷凍貯金」って?

学生の頃から冷凍の魅力にハマって、気がつけば「冷凍王子」と呼ばれていたという西川剛史さん(以下、西川さん略)。ご著書でも「冷凍できない食材はない」のが理解できるほど数々の冷凍食材を掲載されています。王子おすすめの冷凍テクニックについて聞いてみました。

西川さん:冷凍することで長期保存が可能になるばかりでなく、さらに美味しく便利に活用できます。しかも、いろいろと貯まるコツがあるのです。ぜひ、「冷凍貯金」を試して欲しいですね。

―「冷凍貯金」は、あまり聞きなれないワードですが、どのような貯金につながるのでしょうか?

西川さん:私は食材を冷凍することで得られるメリットを大きく3つに分けています。1つは、冷凍食材を常備しておくことで、日常の調理時間が減らせるため「時間を貯める」ことができます

食材を1から切ったり下処理を省けるため、1か月単位では大幅時短に!
食材を1から切ったり下処理を省けるため、1か月単位では大幅時短に!

西川さん:また食材を冷凍して無駄なく使い切ることによって節約も可能にします。


通常時と比較して1か月では1万円近い節約ができることが分かりました。冷凍は食材を腐らせずに食べ切ることが出来るため食品ロスの削減にもつながります。他にも、食材を少しずつ冷凍することで栄養面でも貯金ができるんです!

―栄養での貯金ですか? それは一体、どういう意味でしょうか??

西川さん:たとえばですね。普段、余りそうな食材を少しずつ冷凍保存しておきます冷凍保存の目安は美味しく食べられる期間として約1か月を想定してます。そのため、1か月毎に冷凍保存している食材を全部使い切るようにカレーやスープなどに入れればいいのです。食材の栄養素は、それぞれ個性があります料理1品にはならない少量の食材でも数種類を合わせることで、さまざまな栄養素が知らずに摂れるわけです

―なるほど~。それは面白い発想ですね。ほんの少しでも冷凍食材が保存してあれば、カレーやスープなどに加えるだけ。気がつけば食物繊維が摂れてしまうという考え方ですか?

西川さん:そうです。もう1つ、食材を冷凍することで栄養価の減少をゆるやかにすることができます。常温や冷蔵よりは冷凍保存をおすすめする理由です。

さっそく、西川さんの提唱する「冷凍貯金3か条」の考え方を生活にとりいれたいですね

秋の味覚 きのこで「冷凍貯金」をしよう!

中でもイチオシは、「冷凍きのこ」だとか。その理由は、きのこの特性にあるようです。早速、きのこを冷凍することで得られるメリットについて詳しく解説してもらいました。

西川さんきのこは、冷凍することで“旨味”がアップする大変レアな食材です。まずは、きのこ内でも特徴的なまいたけを冷凍した場合で紹介してみると・・・。

1)うま味成分量がアップ!
冷凍することでうま味成分であるグアニル酸がアップ。さらに冷凍による氷結晶によって組織が壊れるので、うま味が外に出やすくもなります。冷蔵と比べてグアニル酸量は、約2倍に(※)。
2)長期保存が可能
常温や冷蔵だと傷みが早いのですが、冷凍することで約1ヶ月の保存が可能。
3)料理に活用しやすい
きのこが冷凍庫に常備してあることで、凍ったまますぐに使えて便利。
4) 下味冷凍で美味しさキープ
肉ときのこと合わせて下味後に冷凍することで、美味しさも長持ち。特に、まいたけは肉を柔らかくするタンパク質分解酵素が含まれているためお肉も柔らかくする効果も(※)。
※雪国まいたけ調べ

西川さんこのように、まいたけを「冷凍貯金」するだけで嬉しいギフトがたくさんあるのです。

冷凍きのこの正しい食べ方

―食材を冷凍することでのメリットの方が多すぎますね! 「冷凍貯金」をしない方がもったいないというのが理解できました。よく、「きのこは解凍しないで凍ったまま調理に使う方がいい」という話を聞くのですが、それは本当なのでしょうか?

西川さん:冷凍きのこを美味しく食べるためには、2つの調理法があります。1つは、凍ったまま使う加熱調理。あとは、味噌汁や炊込みご飯など解凍しながら使う方法です。凍ったままの状態で使う場合は、炒め物など高めの火力でさっと火を通すこと。一気に水分が出てきますので、水分を飛ばしてから味つけをするのがコツです。汁物や炊込みご飯などの場合は、水からじわじわと火をかけることでグアニル酸が増えます。というのも、核酸からグアニル酸に分解する酵素が活性化しやすいのが、70℃から80℃くらいの温度帯なのです。煮出すことでいい出汁が出ますし、炊込みご飯などは旨味がご飯に染みやすくなります。料理によって加熱法を変えるのがポイントですね。

冷凍きのこをスープに使う場合は、水からコトコト煮るのが美味しさの秘訣!

―必ずしも凍ったまま調理するのが不可欠ではないのですね。ちなみに、冷凍きのこは、1種類よりは複数まとめて入れた方が美味しくなるのでしょうか。

西川さん:はい、その通りです。きのこによってうま味成分のバランスが異なりますので、いろいろな種類のきのこを一緒に冷凍しておくと便利です。きのこのうま味成分であるグアニル酸は、冷凍後に加熱調理することで増えることが分かっているので、複数のきのこをまとめて冷凍して加熱調理することで美味しさが増します

きのこは数種類を合わせて冷凍する「きのこミックス」が最強!

必見! 冷凍室内の整理術

―食材を冷凍しているご家庭では、よくあることだと思うのですが…。冷凍した食材を奥に追いやって忘れてしまうがち。気がつけば乾燥してカピカピなんてことも(笑)。もし冷凍室内の整理の仕方について、冷凍のコツなどあれば教えてください。

分類ごとに整理された冷凍室

西川さんよくあるお悩みですね()。特に重要なのは、細々とした使いかけの食材スペースを作ることです。上の写真のように、食品保存容器などに入れて自分が分かりやすくしておくのが良いです。1か月を目安に、その使いかけ食材から全部使い切るイメージですね。結局、使いかけの食材は空気も入って乾燥もしていますので、酸化しやすい状態でもあります。そういうものを1か所に集めておいて目立つようにし、優先的に使うのがいいですね。

冷凍王子オススメ 激旨きのこレシピ

―数々の冷凍レシピを世に生み出している西川さんがHugKum読者の方に作ってみて欲しい絶品「きのこ料理」があれば教えていただけますでしょうか?

西川さん:やはり「下味冷凍」ですかね。「まいたけと鶏肉の塩麹漬け」をご紹介します。味付けは塩麹ですが、塩麹に含まれている酵素(プロテアーゼ)は、お肉を柔らかくする効果があります。加えてまいたけも同様の酵素が含まれているのです。一緒に漬け込むことで、しっとりとジューシーな鶏肉を味わうことができますよ。

まいたけと鶏肉の塩麹漬け

【材料(作りやすい分量)】

  • 雪国まいたけ極 1
  • 鶏モモ肉(皮付) 200g
  • 塩麹 大さじ2

【作り方】

  • 1.まいたけは食べやすい大きさにさく。鶏肉は1~2㎝大に切る。
  • 2.冷凍用保存袋に①と塩麹を入れ、手で揉んでなじませる。
  • 3.②の空気をなるべく抜いてジッパーを閉め、冷凍保存する。
ジップロック フリーザーバックMサイズが丁度いい大きさ。「冷凍用保存袋の方がしっかりと厚みがあり、Wジッパーのものだとより、冷凍室内の乾燥を防ぐ効果が高いです」。
    • 西川さん「まいたけと鶏肉の塩麹漬け」を下味冷凍して食べる時は、ただ焼くだけでもオッケーです。または炊込みご飯にしても美味しく食べられますので、活用レシピも特別にお伝えしますね。

    まいたけと塩麹の炊込みご飯

    【材料】(2~3人分)

    • 下味冷凍した「まいたけと鶏肉の塩麴漬け」…1袋
    • 人参(短冊切り)…1/3本
    • 米…2合
    • バター…10g
    • 小ねぎ、三つ葉…お好み

    【調味料】

    • つゆの素(4倍濃縮)…大さじ3
    • 酒…大さじ1

    【作り方】

    • 1.下味冷凍した「まいたけと鶏肉の塩麹漬け」を解凍し、漬けだれは切る。
      2.炊飯器に研いで浸水しておいた米と①、人参、調味料を加えたら水(2合の目安まで)注ぎ、よく混ぜ合わせてから通常通り炊飯する。
      3.炊き上がったら、バター10gを加えて全体を切るように混ぜ合わせて器に盛り、小口切りした小ねぎや好みで三つ葉を散らして完成!

    西川さんお肉は、そのまま冷凍しただけですと乾燥しやすいので「下味冷凍」が1番です。塩麹以外でも保水性のある糖分と、油分などでコーティングしてあげることで、冷凍してもしっとり感を維持してくれるのです。

     時短ではなく、「時産」

    ―西川さんのお話を伺って、食材を冷凍するには、ちょっとしたコツが大切なのが分かりました。今後、冷凍王子としてどのような活動を志していますか?

    西川さん:時間がない日常の中でも健康で豊かで楽しい食生活を送って欲しいというのが私の活動理念なんです。いままでお話してきたように、冷凍を味方につけることで、それが叶うということをもっと広く伝えていきたいです。特にご家庭で料理を作るのが大変で、日々の献立作りや調理が悩みという方も多いので冷凍テクニックで軽減してあげたいです。時短ではなく、「時産」という考え方ですね。冷凍食材で時間を産み、各ご家庭で楽しんでもらえるところまで浸透していくことが目標です。

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    お話を伺ったのは・・・

    西川 剛史(にしかわ たかし)|冷凍王子
    冷凍生活アドバイザー養成講座 監修・講師/野菜ソムリエプロ/ベフロティ株式会社 代表取締役/ゆとりうむプロジェクト理事/「冷凍貯金ラボ」アンバサダー。大学で食品栄養学を専攻し、学生時代から冷凍食品に魅了される。冷凍食品メーカー、冷凍食品販売会社の商品開発部門などで勤務。冷凍食品会社で経験したことや独学での実験に基づく知識を活かし、現在は冷凍に関する第一人者として、テレビ・雑誌・ラジオなどでも幅広く活躍。

    構成・文/川越光笑

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