シクラメンの育て方
鮮やかな色合いの花がたくさん咲くシクラメンは、生活に彩りを添えてくれます。適切な手入れをすれば来年も花を楽しめる多年草の球根植物で、自宅で楽しむのはもちろんギフト用にもおすすめです。シクラメンを育てるためのポイントを見ていきましょう。
日当たりのよい場所に置く
シクラメンは室内・屋外にかかわらず、日当たりのよい場所で育てましょう。室内で育てるなら、窓辺に置くのがおすすめです。昼の間だけ外に出してもよいでしょう。屋外で育てる場合は、直接雨があたらない場所を選びます。
冬から春、秋はシクラメンにたっぷり日光を浴びさせるのがポイントです。梅雨から夏にかけては、直射日光を避けて風通しのよい半日陰や日陰に置きます。休眠中の球根は、雨がかからないよう特に注意が必要です。
寒さに弱いので温度に注意
シクラメンの開花時期は、秋から春の初めです。シクラメンは冬の花というイメージがあるかもしれませんが、実は寒さにあまり強くありません。
やや耐寒性があるとされるガーデンシクラメンも、外気温が10度を切るようになったら室内に入れた方が無難です。ただし、暖かければよいという訳でもありません。
シクラメンが理想とする温度は、10~15度とされています。室内に置く場合は、室温が高くなりすぎないようにしましょう。暖房器具の近くや電気カーペット・床暖房の上に置くのも避けます。
肥料や水の与え方
土の表面が乾いてきたら、葉をめくって水をやります。葉や球根に直接水がかかると「灰色カビ病」になる恐れがあるためです。水さし器や、先の細長いじょうろを使うと便利です。
鉢植えの場合は、鉢から水が流れ出すぐらいたっぷり与えます。底面給水タイプの鉢なら、常に受け皿に水がある状態を保ちましょう。
9月から5月の間は、1週間〜半月に一度くらいのペースで1,000倍に薄めた液体肥料を与えます。2,000倍以上に薄めたものなら、水代わりに与えてもよいでしょう。ただし、休眠期間は水も肥料も一切不要です。
シクラメンを長く楽しむコツ
シクラメンは、毎日のちょっとした手入れで花もちがよくなります。色鮮やかな花を、長く楽しむためのポイントを知っておきましょう。
花がら摘みと葉組み
咲き終わった花は、茎の根元から取り除きます。茎が途中で折れると、残った部分が腐る恐れがあるので注意しましょう。手でねじるようにして取るのがおすすめです。園芸ばさみを使うよりも簡単で、シクラメンに与えるダメージが少なくて済みます。枯れた葉も、しっかり摘み取っておきましょう。
また、シクラメンには「葉組み」という特有の手入れが必須です。シクラメンの葉は大きいので、そのままにしておくと球根への日当たりや通気性が悪くなるためです。
葉組みには、花を中央に集める効果もあります。中央から上へと生えてきた葉を外側へと寄せて、鉢の中央に日が当たるようにしましょう。
夏の越し方と手入れ方法
シクラメンの夏越しには、休眠法と非休眠法があります。休眠法は枯れた茎や葉を取り除き、球根だけの状態にする方法です。
4月から5月下旬になると、シクラメンの花の数が減ってきます。茎や葉が変色したり枯れてきたりするのも、休眠態勢に入っている証拠です。梅雨頃になり、完全に枯れたら、残っている茎や葉を手で優しくちぎります。
休眠中、一切水は与えません。風通しがよく雨のあたらない場所に置いておき、8月下旬以降気温が下がってきたら植え替えます。
非休眠法は、元気な葉だけを残して夏を越させる方法です。シクラメン初心者に適しています。半日陰~日陰に置いて、夏の間も水をやり続け、外気温が30度を超えるようになったら室内に移動させましょう。もし枯れてしまったら休眠法に移行します。
シクラメンを増やすには?
シクラメンは球根植物ですが、分球しないためそのままでは増やせません。好みのシクラメンを増やしたい場合は、2株用意して、人工授粉させてみましょう。
結実すれば、3~4カ月で種が取れます。うまく取れたら風通しのよい場所で乾燥させましょう。まき時は11~12月頃(ミニシクラメンは12~2月頃)です。季節が合わなければ、冷蔵庫の野菜室などの冷暗所で保管しておきます。
ただし、花が咲くまでには2~3年かかるとされているため、根気が必要かもしれません。
シクラメンの人気品種を紹介
シクラメンは花の色や形、咲き方が豊富です。品種が多すぎて、購入時に迷ってしまうかもしれません。選ぶ際の参考になるよう、ここではシクラメンの人気品種を紹介します。
ビクトリア
ビクトリアは、品種改良されていない「原種」に分類されるシクラメンです。多くの八重咲き品種の基になっています。白いフリンジ状の花びらには、ピンクやパープルの縁取りがあり、華やかな印象です。花がたくさん咲き、長持ちするため人気があります。
耐寒性があるため、鉢植えはもちろん屋外で育てるのにも適しています。庭や大きな鉢に、寄せ植えしてもよいでしょう。シクラメンを初めて育てる人にもおすすめです。
フェアリーピコ
フェアリーピコは、直径4cm以内の小さい花をつける「ミニシクラメン」の一種です。名前のとおり、妖精のように愛らしく小さな、半八重咲きの花がたくさん咲きます。こんもりとした可愛らしいシルエットと、ピンクのグラデーションが魅力の品種です。
フェアリーピコは花粉が出ないため種ができず、その分花が長持ちします。真冬でも次々に咲くだけでなく、春まで花が楽しめるのがメリットで、切り花で楽しむのもおすすめです。また、丈夫で育てやすいので、シクラメン初心者向けとしても人気があります。
シュトラウス
シクラメンというと、まず「赤い花」を思い浮かべる人も多いでしょう。シュトラウスはイメージそのままの、大きな赤い花が豪華な印象の品種です。真っ赤な花が密集して咲き誇るさまには、思わず目を引かれることでしょう。一つあるだけで、その場が華やかになりそうです。
シュトラウスは緑の葉とのコントラストが美しく、花もちもよいため、クリスマスから正月用の花として人気があります。お歳暮などのギフトはもちろん、自宅用として購入する人も少なくありません。
シクラメン栽培にそろえておきたいもの
シクラメンを育てるには、どのようなアイテムが必要なのでしょうか。肥料や培養土といった基本的なものに目がいきがちですが、そろえておくと便利なものも知っておきましょう。
鉢カバー
鉢カバーは、文字通り植物の入った鉢や器を覆うための鉢です。デザイン性が高いものが多く、室内に飾るときのインテリアとしても活躍します。素材もラタンや陶器など、さまざまな種類があるので、部屋の雰囲気に合わせて簡単におしゃれな印象を演出できます。
購入の際は、鉢のサイズを確認しておきましょう。鉢より一回り大きめのものを選ぶと、そのまま入れられます。もし鉢カバーが大きすぎた場合は、エアパッキンやビニールシートで調節してもよいでしょう。
殺虫殺菌剤
シクラメンの栽培には、病気や虫対策が必須です。屋外はもちろん、室内で育てていても虫がつくことがあるのでこまめにチェックしましょう。
シクラメンにつきやすいのは、アブラムシ類やナメクジです。アブラムシ類は、数が少なければセロハンテープなどで取り除けます。しかしたくさんついているときや、ナメクジがいたときは、やはり薬剤を使うのがおすすめです。
シクラメンの病気としては、灰色カビ病やうどんこ病、軟腐(なんぷ)病などが挙げられます。灰色カビ病やうどんこ病の原因はカビ、軟腐病は高温多湿です。見つけたらすぐに葉を取り除きましょう。軟腐病の予防には、葉に水をかけないことが大切です。
シクラメンを楽しみながら育てよう
シクラメンは、色鮮やかな花で毎日に彩りを添えてくれます。品種も豊富なため、多くの中から選ぶ楽しみもあるでしょう。花もちがよく、鉢植えを置いたり庭で地植えしたりと、好みや生活スタイルに合わせて楽しめるのも魅力です。
また、シクラメンは初心者でも育てやすく、枯れても手入れをしていれば来年以降も花が咲きます。手入れのポイントを押さえて、美しい花を長く楽しみましょう。
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構成・文/HugKum編集部