オリンピック金メダル選手の幼少期の過ごし方
-子どものころ好きだった遊びや運動はありますか?
谷本さん:保育園がリトミックを盛んに取り入れており、遊びの中に運動神経を研ぎ澄ますような動きを0歳の頃からしていたようです。物心ついた頃から戦いごっこや外遊びなど、友だちや兄妹と体を動かして遊ぶことが好きでした。父は、いろんな運動に挑戦させ、この子に向いている競技は柔道だと思ったようです(笑)。
私が柔道を始めたのは9歳からなのですが、同時に陸上の走り幅跳びにのめり込み、小学校では県大会で優勝することもありました。両親が少年野球の監督をやっていたので、球拾いやバッティングもよくやっていましたね。
最初からひとつのことに特化して、これをしたらこうなると決めていたのではなく、いろんなことをしていたら柔道に繋がっていったのだと思います。
-ご両親のスポーツに対する向き合い方、関わり方はいかがでしたか?
谷本さん:私は子どもの頃、父や母に褒められたことしかなかったんです。何をしても「すごいね!よくやったね!がんばったね!」とその気になる言葉を掛けてもらい「自分はできる!」と思えるように育ててもらったことが大きかったと思います。
父は私をどんどん褒めてくれました。母は悩み事があれば聞いてくれるようなサポートをしてくれました。
父は、私が柔道の練習をしている間は板の間で正座をしてずっと見ているんですよ。これは子どもながらに、頑張れとか言われなくても伝わってくるものがありました。例え私が手を抜いて練習をしたとしても、「今日も頑張ったな」って言ってくれるんです。そんなとき心の中に罪悪感が生まれて、次はちゃんと頑張ろうと思いましたね。
-スポーツをやっていてよかったと思うことはありますか?
谷本さん:国語・算数・理科・社会・体育・柔道。私の中で柔道はひとつの科目ですよね。
柔道からは、それくらい学ぶものがすごく多くて、負けた悔しさ、勝った喜び、仲間と信じあえた瞬間の感動、そういうものを全部スポーツから学びました。
アスリートだからこそ子育てで意識していること
-お子さんと遊ぶときに意識していることはありますか?
谷本さん:わが家は夫もアスリートなので、運動あそびをしていると私たち親が真剣になってしまうんですよ。私は球技が苦手なので、一緒に遊んでも既に敵わないのですが…(笑)。
子どもは創造力があるので、それに対してルールが多少変わってもいいのかなと思っています。その子の考え方や良さ、キャラクターがあるので、ひとまず好きなように楽しめる環境をつくるように意識しています。
-お子さんがいま挑戦しているスポーツはありますか?
谷本さん:本人がやりたいこと、好きなことを選んでほしいと思い、幼少期にさまざまなスポーツに触れる機会をつくりましたが、なかなか夢中になれるものに出会いませんでした。
最近ようやく、高学年のお兄ちゃんが自分から興味を持って始めたのが競技ドッジボールなんです。きっかけはなんだろうと考えると、小さい頃に二重跳びが何回できたとか目標を達成した後のご褒美に「なにやりたい?」と聞くと、『なかあて』(ドッジボールをもっとシンプルなルールにしたようなもの)がやりたいと言ってやっていたことを思い出しました。そうやって好きでやっていた遊びが、挑戦したいスポーツへと繋がるんですね。
-子育てで大切にしていることは、ありますか?
谷本さん:私たちはアスリート夫婦なので、子どもの能力やセンスを見て、向いている競技や伸びる練習法がだいたいわかるんですよ。ですが、挑戦したいことは子どもに選んでほしいので、私たちの考えで型にはめないように気を付けています。
誘導すればそれなりに育つとは思うんですけど、そうすると子どもたちの生き方を親が決めつけてしまうので、基本的にはいろいろな競技に触れて、本人がやりたいことを見つけてほしいと思っています。
でも、小学生で競技スポーツを本気でやるのってやっぱり厳しいんですよ。一度やりたいと言ったとしても本当に夢中になるタイミングはそれぞれなので、努力が足りなかったりうまくできなかったり、思い通りに進まないことも多々あります。ですが子どもの気持ちの本音のところを大切にしてあげたいなと。「子どもじゃ決められないでしょ」って言う人もいますが、子どもはちゃんと自分で決められるんです。
子どもたちに私たち親ができること
-子どもの外遊びが減少していると言われていますが、子どもたちの遊びの変化で気になることはありますか?
谷本さん:子どもたちの問題ではなく、私たち親が制限をしすぎているのではないかと思います。例えば、サッカーが好きな子どもたちってボールがあれば1日中遊んでいられるんですよ。それが、好きって才能なんですよね。
いま子どもたちは、そういうことに出会う時間が無かったり、なんでそんな事ばっかりやってるの?って親が辞めさせてしまったり……。子どもが一生懸命頑張ってるものを私たち親が否定したり、子どもたちの好きっていう気持ちを消してしまっているのではないかと感じています。
子どもが成長する段階で、先回りしてつい答えを出してあげたくなってしまいますが、子どもにはチャンスを与えることが大切だと思います。子どもたちが自分で考えて、工夫をして、できることを積み重ねていく経験を私たちが奪わないように。
親御さんが一生懸命やってくれるというのは、子どもにとって励みになるのでいいことなのですが、親ばかりが行き過ぎてしまわないように、子どもがどうしたいのか対話をしていくことが大切だと思っています。
幼少期に運動あそびを通して学ぶこと
幼少期は、一生の中でも特に体の使い方を吸収する時期・集団生活の中での社交性が芽生える時期といわれています。この時期に運動あそびを通して多様な動きを経験することや、子ども同士が関わりあう体験をすることが、心と体の発達の基礎に影響してきます。
今回ミズノ マルチスポーツ体験会にお子さんと一緒に参加した谷本さん。
子どもたちの話しに耳を傾け、運動あそびを楽しんでいる姿が印象的でした。インタビューでは、子どもたちの「やってみたい!」という気持ちを見守ることの大切さを教えてくれました。
現在は、日本オリンピック委員会理事を務めている谷本さんの今後の活躍も楽しみです!
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取材・文/やまさきけいこ