『雪女』という物語を知っていますか? 全国各地で語り継がれる昔話であり、小泉八雲の『怪談』をきっかけに有名になったと言われています。怪談と聞くと怖い印象がありますが、実際はどのような物語なのでしょうか?
『雪女』って?
『雪女』とは、日本の昔話・怪談。大まかなあらすじは誰でも知っていそうな有名な物語ですよね。「雪女」というワードは目にする機会も多く、最近でも『雪女と蟹を食う』というドラマが放送されたり、杉野希妃による映画『雪女』が上映されました。
最近だけでなく、1968年には映画『怪談雪女郎』が上映され、藤村志保による名演技は今でもファンに語り継がれています。
物語のあらすじ
雪女は妖怪ということもあり、怖く不気味な描写もありますが、最後のシーンでは、悲しみや切なさなど、さまざまな想像を掻き立てる物語です。それでは、物語を結末まで見ていきましょう!
あらすじ
あるところに、年寄りの茂作と、若いみの吉というふたりの木こりがいました。ある日ふたりは一緒に山に入り、帰ろうとするとひどい吹雪に見舞われてしまいます。「今晩はここに泊まるしかない…」と、山小屋の中で一夜を明かすことにしたのでした。
真夜中、異様な寒さにみの吉が目をさますと、茂作に近くに、肌の白い、美しい女性が立っているのが見えました。驚いたみの吉が固まっていると、女性は茂作に近づき、ふっと息を吹きかけます。すると、茂作の顔は一気に白く冷たくなり、そのまま息を引き取ってしまいました。
みの吉は恐ろしくなり、「雪女だ!」と叫んで逃げようとしました。しかしそこへ雪女が近づいてきて、「お前はまだ若い。逃がしてやろう。しかし、このことを誰にも話してはいけないよ。もし話したら、お前を殺す」と言い残し、消えたのです。みの吉は翌日、村へ帰りましたが、雪女のことは誰にも話しませんでした。
一年後の吹雪の夜。みの吉の家に、ひとりの女性が訪ねてきました。お雪という名の、肌が白く美しいその女性は、「吹雪がひどいので今晩泊めてもらえませんか」と尋ねました。優しいみの吉は、女性を家に泊めてあげることにします。
吹雪は続き、その間にふたりは恋に落ちました。そして結婚し、たくさんの子どもが生まれ、幸せに暮らしたのです。
数年後、再び、吹雪の夜。みの吉は、外の吹雪を見て、茂作のことを思い出していました。「あの日も、こんな吹雪だった…」。みの吉は、これまで誰にも話さなかった雪女の話を、お雪に話し始めました。話が終わって顔を上げると、お雪は見たこともない恐ろしい表情をしており、みの吉はギョッと驚きます。
「あれほど話すなと言ったのに、約束を破ったな。お前を殺すと言ったが、子どもたちがいる。子どもたちを大切にしろ。さもなくば、いつでもお前を殺す」。そう言って、お雪は消えてしまいました。みの吉は、それから二度と、お雪に会うことはできませんでした。
あらすじを簡単にまとめると…
吹雪の夜、みの吉は茂作の命を奪う雪女に出会います。「このことを話したら殺す」と脅されたみの吉は、誰にもその話をしませんでした。その後、お雪という女性と出会い、たくさんの子どもに恵まれて幸せに暮らします。
しかしある吹雪の夜、みの吉はうっかりお雪に雪女の話をしてしまいました。実はお雪の正体は雪女。怒った雪女はみの吉を殺そうとしますが、子どもたちのために殺すのをやめ、「子どもたちを大切にしなかったら、殺す」と言い残して、消えてしまいました。
主な登場人物
有名な『雪女』ですが、あらためて登場人物を整理しておきましょう。登場人物は少ないですが、みの吉と茂作の名前が違ったり、2人は親子であるなど、物語によって違いはあるようです。
雪女
白い肌をした美しい女の姿をした妖怪。冷たい息を吹きかけて、人間の命を奪ってしまいます。
みの吉
心優しい木こり。雪女に2回出会いますが、命を奪われずに済みます。美しい妻のお雪やたくさんの子どもたちは、みの吉にとって自慢の存在でした。
お雪
肌が白い美人で、みの吉の妻。その正体は雪女で、みの吉が約束を破ったために姿を消してしまいます。
茂作
みの吉と一緒に山小屋に泊まり、雪女に命を奪われてしまった木こり。歳はみの吉よりもだいぶ上で、おじいさんでした。
絵本『雪女』を読むなら
有名な物語ということもあり、各出版社から絵本が出版されています。今回は、その中から子どもに読み聞かせたい絵本『雪女』を、3冊ピックアップ。おすすめポイントも紹介します。
『ゆきおんな』(小学館)
「文章と絵がマッチしていて物語に引き込まれる」「字も絵もはっきりしていて見やすく、読み聞かせにもってこい」など、作品レビューで好評な1冊。切なくも、子どもが怖がりすぎず、受け入れられやすい結末になっています。
『ゆきおんな』(金の星社)
いもとようこさんによる文と絵。怪談でありながら、作家の温かみのある柔らかいイラストが、その内容の恐ろしさを和らげてくれ、子どもにも読みやすい一冊です。
『ゆきおんな』(ポプラ社)
子どもが持ち運びしやすいサイズ感。ボリュームも程よく、価格も350円と手頃なのも嬉しい点。漢字やカタカナに全てルビがふってあり、1歳の読み聞かせから一人読みできる6歳まで成長に合わせて読むことができるなど、子ども向けの工夫が詰まった1冊。
『雪女』の魅力は?
『雪女』の最大の魅力は、最後に雪女が去って行くシーンで、彼女はどのような気持ちだったのだろうと、想像することではないでしょうか。それぞれの物語で細かい描写は違いますが、長年連れ添った夫と、たくさんの子どもたちを残して去って行く雪女。
雪女は、家族をどのように想っていたのか、なぜ殺すのをやめて自分が消えることを選んだのか、どんな気持ちで消えていったのか…。読み終わった後に、結末について子どもと話し合ってみると、物語の余韻を味わえそうです。
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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)