「ASEAN」の加盟国はどこ? 発足のきっかけや日本との関係性も解説【親子で学ぶ現代社会】

ASEAN(東南アジア諸国連合)は東南アジアの国々から構成される組織です。いつ、どのような目的で設立され、現在何カ国が加盟しているのでしょうか? ASEANの特徴や意思決定のルール、日本とのつながりについて解説します。

ASEANとは?

テレビのニュースや新聞などで、「ASEAN(アセアン)」という言葉を目にする人は多いでしょう。ASEANは、国際的な地域協力機構の一つで、現状は10カ国が加盟しています。加盟国の一覧や発足のきっかけなど、ASEANの基本情報をチェックしましょう。

東南アジア諸国による地域協力機構

ASEANは、「Association of Southeast Asian Nations」の略で、日本語では「東南アジア諸国連合」と訳されます。

東南アジアの10カ国から成る地域協力機構であり、「経済成長および社会・文化的発展の促進」「政治・経済的安定の確保」「域内諸問題に関する協力」が設立の目的です。

2024年2月時点における加盟国は以下の通りです。

●インドネシア
●マレーシア
●フィリピン
●シンガポール
●タイ
●ブルネイ
●ベトナム
●ラオス
●ミャンマー
●カンボジア

正式加盟国は10カ国ですが、2022年11月のASEAN首脳会談にて「東ティモール」のASEAN原則加盟が認められました。東ティモールは、全ての会合にオブザーバーとして参加が認められています。

バンコク宣言がきっかけで発足

ASEANが発足したきっかけは、「バンコク宣言」です。正式名称を「ASEAN設立宣言」といい、1967年にタイのバンコクで採択されました。

ASEAN以前の東南アジアには、東南アジア連合(ASA)と呼ばれる機構が存在していましたが、冷戦やベトナム戦争を背景に、地域協力の動きが活発化します。

1967年8月、5カ国(インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ)の外相による会議が開催され、ASEAN設立宣言の採択によってASEANが発足しました。

以降、1984年にはブルネイが、1900年代にベトナム・ラオス・ミャンマー・カンボジアが順次加盟しています。

出典:
ASEANとは? | ASEANPEDIA – アセアンペディア ASEANまるわかり
東ティモール基礎データ|外務省
ASEANの設立経緯と背景|外務省

ASEANの主な特徴

ASEAN加盟国の国旗

ASEANを構成する国々は、文化や宗教、政治体制などが異なります。多様な国々が一つの組織として機能するために、どのようなルールが存在しているのでしょうか? ASEANの三つの大きな特徴を解説します。

ASEANが1つの経済圏

ASEANは、2015年に「ASEAN共同体」を設立し、「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の側面で、共同体となることを宣言しました。

経済面に関しては、ASEAN加盟国を一つの巨大な経済圏として見なす「ASEAN経済共同体(AEC)」を発足させます。関税の撤廃やサービス・投資の自由化などにより、ヒト・モノ・カネの行き来を促し、経済成長につなげるのが目的です。

経済の統合というと、EUのような仕組みを思い浮かべる人もいますが、国家主権の一部をASEANに委譲するルールはなく、共通通貨も導入されていません。

意思決定は協議とコンセンサスに基づく

ASEANの基礎となる諸原則は「ASEAN憲章」に記載されています。ASEAN憲章によると、意思決定は協議とコンセンサスに基づくのが原則です。

コンセンサス(Consensus)は、合意や同意を意味します。ASEANの意思決定は、話し合いによる全会一致によって行われ、1カ国でも反対すれば、案件は採択されないのが基本です。

コンセンサスに至らない重要事項があれば、ASEANの最高意思決定機関である「ASEAN首脳会議(ASEANサミット)」に決定が委ねられます。

内政には干渉しない

ASEANには、「内政不干渉の原則」があります。一国の政治は、その国の国民が決めることであり、他国は干渉してはならないとするルールです。

過去の戦争・紛争を見ても、内政干渉が争いの引き金となったケースは少なくありません。ASEAN加盟国は、言語・民族・政治・風土などが大きく異なるため、相手国の事情にはお互い干渉せず、共通の利益のために協力するスタンスを取っています。

ただし、関係性が緊密化すればするほど、他国の内政を見て見ぬふりができなくなることもあるでしょう。2021年にミャンマー国軍がクーデターを起こした際は、ミャンマーへの対応について、ASEAN加盟国の間で意見が割れました。

出典:
ASEAN(東南アジア諸国連合)概況|外務省
ASEAN憲章 |国際機関日本アセアンセンター

日本とASEANのつながりは?

地理的には遠く離れていますが、日本とASEANは、あらゆる分野においてパートナーシップを築いています。具体的にどのようなつながりがあるのかを見ていきましょう。

日本は第4の貿易相手国

2022年におけるASEANの貿易総額の構成比は、ASEAN域内が22.3%、中国が18.8%、アメリカが10.9%、EU27が7.7%、日本が7.0%、韓国が5.8%です。ASEANにとって日本は世界第4位の貿易相手国であり、かけがえのないビジネスパートナーであることが分かるでしょう。

かつての日本の貿易は、ASEAN諸国から原材料や農水産物を輸入し、製品を輸出するパターンが主流でした。しかし現在ではASEAN諸国から家電や衣料品など、さまざまな製品を輸入するようになっています。

資源の輸入量も多く、特にパーム油や天然ゴムは、99%以上がASEAN諸国からの輸入です。

対ASEAN外交の基本は「福田ドクトリン」

日本はASEANに対して、友好関係の維持に努めています。太平洋戦争中、日本は「大東亜共栄圏(だいとうあきょうえいけん)」を掲げ、東南アジア諸国に軍事侵攻を開始しました。「欧米の支配から抜け出し、アジアの国々が共存共栄すること」を主張しましたが、侵略戦争の美化だといわれています。

1977年にフィリピンを訪問した福田赳夫(ふくだだけお)総理大臣は、その後の対ASEAN外交の原則となる「福田ドクトリン」を発表しました。

●日本は軍事大国にならない
●心と心の触れ合う友好関係を確立する
●対等なパートナー関係を築く

2013年には、安倍晋三(あべしんぞう)総理大臣が「対ASEAN外交5原則」を発表しています。

政府開発援助(ODA)による支援も多い

東南アジア諸国の中には、産業や経済の発展が十分ではない「開発途上国」があります。日本は、政府開発援助(以下、ODA)を通じ、開発途上国にさまざまな開発協力を行っています。2021年度におけるASEANへのODA支出額は、約38億米ドルでした。

ODAは、国際機関を通じて支援する「多国間援助」と、相手国を直接的に支援する「二国間援助」に大別されます。二国間協力には、お金を貸し付ける「有償資金協力(円借款)」のほかに、資金を贈与する「無償資金協力」や技術を教える「技術協力」があります。

出典:
ASEANの貿易と投資 | ASEAN – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ
データで見る日本とASEANの今 | ASEANPEDIA – アセアンペディア ASEANまるわかり
日本とASEAN|外務省
目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料-|アジア大洋州局地域政策参事官室

ASEANが参加する地域協力の枠組み

世界には、ASEAN以外にもさまざまな地域協力の枠組みがあります。ASEANが参加している枠組みの一例として、「ASEAN+3」「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」「東アジア首脳会議(EAS)」を紹介します。

ASEAN+3

「ASEAN+3(アセアンプラススリー)」は、ASEAN加盟国とアジアの3カ国(日本・中国・韓国)による枠組みです。1997年の「アジア通貨・経済危機」を契機に、日本・中国・韓国の首脳がASEAN首脳会議に招待されたのがきっかけで、以降はASEAN首脳会議に合わせて定期的に開催されています。

首脳会議のほか、外務大臣会議・財務大臣会議・観光大臣会議・環境大臣会議といった「閣僚レベルの会議(会合)」が開かれ、各国の大臣が政策協調や国際協力に向けた意見交換を行っています。

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定

「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」は、ASEAN加盟国と自由貿易協定(FTA)のパートナー国(日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランド)の間で結ばれています。

貿易および投資の促進やサプライチェーンの効率化が主な目的で、貿易・投資・税関手続き・知的財産・電子商取引などのあらゆる分野において、ルールを規定しています。

当初はインドも交渉に参加していましたが、2019年11月に離脱を表明します。復帰を働きかけるも姿勢は変わらず、2020年11月にインドを除く15カ国でRCEPの署名がなされました。

東アジア首脳会議(EAS)

「東アジア首脳会議(EAS)」は、ASEAN加盟国・日本・中国・韓国・インド・オーストラリア・ニュージーランド・アメリカ・ロシアによる首脳会議です。「東アジアサミット」とも呼ばれ、「東アジア共同体」という共同体の構築を視野に開催されています。

第1回EASの開催は、2004年11月に行われた「ASEAN+3首脳会議」の中で正式決定されました。第1回EASへの参加の条件として、ASEAN側は「東南アジア友好協力条約(TAC)の締結国である(または締結の意図がある)」「ASEANの完全な対話パートナーである」「ASEANと実質的な関係を有する」の三つを挙げています。

出典:
ASEAN+3(日中韓)協力|外務省
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定|外務省
東アジア首脳会議(EAS)|外務省

ASEANに関するQ&A

「ASEANの旗の意味は?」「東ティモールの加盟が遅れたのはなぜ?」など、ASEANについての疑問をQ&Aで紹介します。ASEANへの理解をもう一歩深めましょう。

ASEANの旗にはどんな意味があるの?

各国に国旗があるように、ASEANにもシンボルとなる旗があります。ASEANの旗は、青の背景に赤い円を配置し、さらにその中にエンブレムを描いたものです。旗に使用されているのは、青・赤・白・黄の4色で、次のような意味があります。

●青:平和・安定
●赤:勇気・活力
●白:純粋
●黄色:繁栄

中央のエンブレムは「10本の稲の茎の束」で、ASEANが友好と結束で結ばれた東南アジアの国々から構成されていることを表します。一見、日の丸のように見えますが、日本の国旗とは関連性がありません。エンブレムを囲む円は「結束」を意味します。

ASEANの旗

東ティモールの加盟が遅れた理由は?

東ティモールのASEAN加盟が遅れた背景には、ポルトガルの植民地支配やインドネシアによる併合の歴史が関係しています。

長年にわたり、東ティモールはポルトガルの植民地でしたが、ポルトガルの主権放棄によって1975年に独立を宣言しました。しかし、すぐにインドネシアによって軍事介入され、2002年まで併合が続きます。

インドネシアからの独立後、2011年にASEANへの加盟を申請しましたが、不安定な財政状況などから加盟が先送りされ、2022年のASEAN首脳会議で原則加盟の承認を得る結果となりました。

東ティモールは、インドネシアの東部、小スンダ諸島に位置するティモール島東半分とインドネシア領西ティモール内の飛び地のオエクシ県からなる小国

ASEANについて親子で話し合ってみよう

ASEANは、東南アジアの10カ国から構成される地域協力機構で、経済成長の促進や地域の安定などを目的としています。2022年11月に東ティモールの加盟が原則認められたため、今後は11カ国体制で歩みを進めていくことになるでしょう。

資源の少ない日本にとって、ASEANは大切なビジネスパートナーです。ビジネスだけでなく、文化面での交流も盛んで、民間ではさまざまな友好協力が行われています。国際情勢への理解を深めるためにも、ASEANについて親子で話す機会を設けてみてはいかがでしょうか。

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構成・文/HugKum編集部

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