【サイエンスまんが】桜はなぜ一斉に咲くの?を科学的に解説!桜の開花の謎は「クローン」にあった!〈ゆーまん博士の最新科学CatchUP〉

科学の常識は日々更新されています。パパママの時代の常識が、令和の子どもたちには「過去の学説」となっていることも。最新の理科の常識を大人たちが知り、子どもたちに伝えることで、よりビビットで楽しい科学の世界を探求できます。「ゆーまん博士」の漫画で、最新科学をキャッチアップしましょう!

「桜の開花日」っていうけど…桜はなぜ一斉に咲くの?

ゆーまん博士の「説明しよう!」

桜がなぜ春になると一斉に咲くのだろうか? その秘密は温度と遺伝子にあるんだ。

まず温度の話をしよう。桜が花の赤ちゃんである「花芽」を作り始めるのはなんと前年の8月下旬ごろ。9月中旬には、桜の花芽は花を咲かせる準備を完了している。

夏の終わりに咲く準備ができているのなら、暖かい秋に桜の花が咲くはずだよね。しかし桜の花は秋には咲かず、春を待つ。桜はどのようにして花が咲くのを止めているんだろう?

桜に限らず、冬を越して花が咲く植物は、花が咲かないように花芽の成長を抑える「アブシシン酸」と花芽を花に成長させる「ジベレリン」という2つの化学物質を作りだす。

最初に花芽ができた時、花芽にはアブシシン酸がたっぷり含まれている。アブシシン酸が花芽の成長を抑えるため、アブシシン酸が多い時は、気温が高くても花は咲かない。夏に花芽はできているのに、秋に花が咲かない理由は花芽にアブシシン酸が多いだめだ。アブシシン酸は気温が下がるとどんどん量が減っていく。代わりに増えるのがジベレニンだ。

ジベレニンは花芽を成長させ、花を咲かせる物質だ。真冬でも花芽にジベレニンを塗ると花が咲くほどだ。

花芽は冬を越すことでアブシシン酸が減り、春になり暖かくなるとジベレニンが増えて花が咲くんだ。

ソメイヨシノ。九州・四国地方や東京では例年3月下旬~4月はじめに咲き始める

では桜の花が一斉に咲くのはなぜだろう?  人間にも背の高い人も低い人もいるように、桜の木だって違いはあるだろう。花が咲くタイミングがまったく一緒になるのはおかしな気がする。桜の花が咲くタイミングがまったくズレないのには、どんな理由が?

私たちが桜と呼んでいるのは、ほとんどがソメイヨシノだ(もちろんヤマザクラや八重桜なども他品種あるが数は少ない)。5つの花弁を持つ、桜らしい桜だね。ソメイヨシノは江戸時代の終わりにエドヒガンとオオシマザクラを交雑させて作られた人工的な種だと言われている。

ソメイヨシノは他の桜と交雑を避けるため、種子ではなく、接ぎ木や挿し木で増やしてきた。そのため、現在のソメイヨシノはすべて遺伝的にほぼ同じ遺伝子を持つ、いわばクローンだ。そのため同じ気温なら同じタイミングで花が咲くわけだ。

一時期、ソメイヨシノが寿命を迎え、全国の桜は一斉に枯れるのでは?  と話題になった。すべてクローンなので寿命も同じだからだ。心配をよそに、問題になるほど桜が枯れることはなかった。丁寧な管理が桜の寿命を延ばしたのだろうね。

ゆーまん博士のワンポイント

●桜が春に咲くのは、暖かくなるとジベレリンが増えるから

●桜が一斉に咲くのはみんなクローンだから

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構成・文/川口友万 漫画/まめこ

参考:「植物学「超」入門 キーワードから学ぶ不思議なパワーと魅力」(田中修/サイエンス・アイ新書)

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