モラハラの種はどこにでもある
モラルハラスメント、「モラハラ」とは、相手の尊厳を言葉や態度などで傷つけたり、執拗に精神を痛めつける行為のこと。特に、家庭内でのモラハラは「精神的DV」ともいわれ、子どもたちの心を直接的間接的に深く傷つけます。
親子関係カウンセラーの川島崇照さんによると、モラハラを引き起こすのは加害者側の心の問題。具体的には親の中にある「強い不安感」や「コンプレックス」が暴発して子どもに向かい、それが繰り返され、日常化していくことで精神的虐待化してしまうのです。
テストシートで診断する家庭内モラハラ度
モラハラの種は、どこにでも落ちています。それを避けられるかどうかはあなた次第。モラハラの当事者にならないために、また当事者かもしれない自分自身に気づくために、あなたの心理状態をチェックしてみませんか?
(テストシート制作「おとなの親子関係相談所」川島崇照さん)
親のタイプ別・親子モラハラ度テスト
- 【親のコンプレックスタイプ】失う不安を感じている(過干渉)
❶ 親の願望が「幸せにしてもらいたい」型
□ 子育てを生きがいのように感じている
□ 特に何も起こっていないのに子どもが事故に遭っているのではないか、事件に巻き込まれているのではないかと思って不安になることがある
❷ 親の願望が「相手のすべてが知りたい」型
□ 常に子どものすべてを知っておきたいと思う
□ 子どもの学校での様子、交友関係などを知っておきたい
❸ 親の願望が「相手のすべてが欲しい」型
□ 子どもが隠し事をしているのではないかと思って不安になることがある
□ 休日はどこにでも子どもと一緒に出かけたい
❹ 親の願望が「相手の愛を確認したい」型
□ 子どもから感謝の言葉を言ってもらえないと悲しくなる
□ 子どもが自分のことをどのように思っているのかがわからなくて不安になる
【親のコンプレックスタイプ】孤独・孤立への不安がある(依存)
❺ 親の願望が「私のことを支えてほしい」型
□ 子どもにはいつでも自分のそばにいてもらいたいと思う
□ 大人になっても親のそばを離れていかないでほしいと思う
❻ 親の願望が「私のことを世話してほしい」型
□ 子どもに他人の愚痴や悪口を聞いてもらいたくなる
□ 老後は子どもに面倒をみてほしいと思う
❼ 親の願望が「私のことを大事にしてほしい」型
□ 子どものために苦労しているのだから親(自分)をもっと大事にしてほしい
□ 子どもが従ってくれないと冷たくされているように感じる
❽ 親の願望が「私の気持ちをわかってほしい」型
□ 子どものことをどれだけ思っているのか親の気持ちをわかってほしい
□ 子どもが従ってくれないと否定されたような気持ちになる
【親のコンプレックスタイプ】無価値・無能への不安がある(劣等感)
❾ 親の願望が「敬ってもらいたい」型
□ 親は子どものために頑張っているのだから、子どもはもっと尊敬するべきだと思う
❿ 親の願望が「褒めてもらいたい」型
□ 親は子どものために働いているのだからもっと感謝してもらわないと割に合わないと思う
⓫ 親の願望が「価値を上げたい」型
□ 子どもにはレベルの高い学校に行ってもらいたい
□ 成績の悪い子とは関わらないでほしいと思う
⓬ 親の願望が「成功を見たい」型
□ 子どもが良い成績や高い順位を取ることにこだわってしまう
□ 子どもがいくら努力をしても結果が悪いなら意味がないと感じる
⓭ 親の願望が「正しさを証明したい」型
□ 子どもが少しくらいつらい思いをしても、失敗しない人生に導いてあげることのほうがはるかに重要だと思う
□ 今がつらくても子どもはいつか親に感謝するはずだし、親の気持ちを理解するに違いないと思っている
⓮ 親の願望が「利益を得たい」型
□ 今までに子どもにかけてきたお金や時間、労力の分ぐらいは成果を上げてもらいたいと思っている
□ 親(自分)に恩返しをしてもらいたい
⓯ 親の願望が「勝ちたい」型
□ 近所の子よりも良い成績をとってもらいたいと思う
□ あの子だけには負けないでほしいと思うことがある
【親のコンプレックスタイプ】自由を奪われる不安がある(精神未成熟)
⓰ 親の願望が「嫌なことは誰かに任せたい」型
□ 子どもにお金をかけるのはもったいないと思う
□ 煩わしいから子どもの話を聞きたくない
⓱ 親の願望が「一人で自由に生きたい」型
□ 子どもと関わっていると自由な時間が減るからもったいないと思う
⓲ 親の願望が「好きなことだけやっていたい」型
□ 子どもに関わるよりも自分の趣味を楽しみたいと思う
⓳ 親の願望が「頑張らないで楽して生きたい」型
□ 子どもに興味関心を持てない、感じられない
□ 子どもが苦しんでいても他人事のように感じてしまう
常に振り返る気持ちをもち続けて
いかがでしたか?
該当する項目が0個なら、あなたの中のモラハラの種はほとんどないでしょう。子どもとの関係もいままで通りで大丈夫でしょう。
1~3個の人は注意が必要です。何かの拍子にモラハラの種が芽を出すかもしれません。普段意識していることや口癖になっている言葉などを振り返って、子どものせいにしていないか検証してみましょう。
4個〜7個の人は、すでにモラハラの種を持っていて、子どもの心を傷つけていることがあるかもしれません。子どもとの関係に問題がないか、しっかりと見直してください。誰かに相談してもよいかもしれません。
8個以上の人は、すでに子どもの心を傷つけてしまっている可能性が高いはずです。自身の問題を振り返り、子どもの心のケアに取り組む必要があるかもしれません。さらに、もう二度と子どもの心を傷つけないように改善に取り組まなければいけないかもしれません。
* * *
ハラスメントを起こさない親であり続けるために、これからも心に余裕をもって、子どもたちとしっかり向き合っていきましょう。
▼親のモラハラ「あるある発言」と対処法をチェック
話を伺ったのは
1974年生まれ。幼い頃、家庭内では日常的に怒鳴り声が飛び交っており、ストレスを抱えた親から毎日のように否定や罵倒を受けていた。2011年にカウンセラーとして独立した後『おとなの親子関係相談所』を設立。今までにサポートしてきた相談者数は延べ4万人。日々毒親との関係に悩む人たちのカウンセリングを行いながら、毒親の支配や依存から脱出していくためのサポートや傷つけられた心の回復を目指すためのトレーニングなどを実施している。
著書に『嫌いな親との離れ方』(すばる舎)、YouTubeやポッドキャストで『親子の悩み解決ラジオ』を配信。
Facebook:毒親脱出の専門家 川島たかあき≪
X:毒親脱出専門家 川島崇照≪
川島崇照さんの著書
4万人以上の悩みを解決してきた親子関係の専門家/川島崇照が、自身の経験や相談事例等を挙げながら、様々な問題を抱える親について解説。そうした親との間に「境界線」を引くことの大切さやその境界線の引き方、自分の人生の歩み方、心のケアの仕方なども、わかりやすく詳しく紹介されている。
構成・文/増田ひとみ