台湾と日本の関係は?
日本が位置する東アジアは非常に複雑な環境です。日本の同盟国では米国ですが、当然ですが米国はアジアの国ではありません。東アジアには中国や北朝鮮、アジア国家ではありませんがロシアといった日本とは基本的な価値観を共有しない国々が多くあります。
日本と同じ自由や民主主義、人権といった価値観を共有する韓国の存在は、今後の東アジアの安全保障を考慮すれば極めて重要ですが、韓国は5年に1回大統領が変わり、それによって日韓関係は大きく左右されます。
そのような中、日本と長くわたって友好関係にあるのが台湾です。日本と台湾の関係が深まるきっかけとなったのは1895年の日清戦争で、これに勝利した日本は下関条約の締結によって台湾を割譲され、統治することになりました。日本の台湾統治は太平洋戦争の敗戦の時までおよそ50年続きました。
その間に台湾では日本によって交通や金融などの主要インフラが整備され、現在でも台湾の高齢者の方々の中には日本語を話すことができる人が少なくありません。その後、1952年に日華平和条約で締結され日本と台湾は国交を回復しましたが、1972年の日中国交正常化によって台湾との外交関係が解消され、現在に至ります。
今後より一層重要になる、日本と台湾の関係
そして、日本と台湾の関係は近年、そして今後さらに重要になることは間違いありません。日本と台湾が互いに重要なパートナーとの認識を深めている背景には、中国の存在があります。21世紀に入り、日本と台湾が共有する自由や民主主義、人権といった価値観と対立する中国は経済力と軍事力を身に付け、米国主導の安全保障秩序を変えようとしています。これは米国の同盟である日本、米国から長年軍事支援を受ける台湾にとっては大きな脅威となっており、対中国で日本と台湾の目的は一致します。
特に、中国による台湾への圧力は近年非常に強まっており、中国は台湾へ軍事的威嚇を仕掛けるだけでなく、台湾産のパイナップルや柑橘類などの輸入を突然ストップしたりするなど、経済的な圧力も加えています。しかし、中国に特産品のパイナップルを輸出できなくなった一方、日本が台湾産のパイナップルの多くを輸入するようになり、台湾のパイナップル産業は大きなダメージを回避できています。
日本が大地震や大洪水などの自然災害に直面した際、いつも先陣を切って日本をサポートしてくれたのが台湾であり、今年の台湾での大地震でも日本は積極的な支援を行いました。日本と台湾は自然災害や安全保障、貿易など多くの分野で重要なパートナーとなっています。今後の国際政治の変化を考えれば、その関係はいっそう深化していくことでしょう。
この記事のPOINT
- ①近年、日本と台湾が互いに重要なパートナーとの認識を深めている背景には、中国の存在がある。
②日本と台湾が共有する自由や民主主義、人権といった価値観と対立する中国は、米国主導の安全保障秩序を変えようとしている。 - ③日本と台湾は自然災害や安全保障、貿易など多くの分野でパートナーである。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。