6月3日〜9日は世界夜尿症ウィーク
世界夜尿症ウィークは、「夜尿症が医師に相談できるもので、治療可能な疾患であること」を認識してもらうために制定されたものです。
今回は、夜尿症の専門家である順天堂大学医学部附属練馬病院の小児科科長で教授の大友 義之先生(以下、大友先生)と一般社団法人スクールセーフティネット・リサーチセンター 代表の田村 節子先生(以下、田村先生)に、夜尿症について教えてもらいました(フェリング・ファーマ株式会社開催メディア向け夜尿症啓発セミナーより)。
夜尿症は治療が必要なこともある
夜尿症とおねしょの違い
大友先生:5歳未満の子どもでは、おねしょ※(夜寝ている間の尿もれ)と言いますが、5歳以降で月1回以上のおねしょが3ヶ月以上続く場合は「夜尿症」と診断され、治療が必要な場合も。小学1年生ではクラスに3.5人いる試算。日本の小学校の低学年生は夜尿症でも受診しないことが多いとの報告があります。
※本記事では、5歳以降の夜寝ている間の尿もれもおねしょと表現しています。
なぜ夜尿症になるの?
大友先生:睡眠中に作られる尿の量が多すぎたり、膀胱に尿を十分にためられないことが関係しています。夜尿症の場合、膀胱が尿であふれそうになっても起きられないため、睡眠中に尿もれしてしまいます(他の病気の可能性もあり)。
夜尿症が親子に与える影響
大友先生:夜尿症は、子どもの自尊心を低下させ、自信喪失につながります。学校や友人関係に影響を与えることも。子どもにとって想像以上にトラウマとなる可能性があります。
田村先生:夜尿は親にとっても強いストレスや苛立ちの原因になります。二次障害として親子関係の悪化や不登校、いじめにつながることも。親自身の責任と思い込み、悩みを深刻化させるケースもあるので、親に対する心理的ケアも必要です。
夜尿症は子どもと親両方にとって辛いもの。家族だけで抱え込まず、医療機関に相談することが大切ですね。
夜尿症を治した親子の体験談
ここで田村先生から教えていただいた、夜尿症に悩む親子インタビューを紹介します。
「罪悪感がハンパなく、お母さんには相談できなかった」小学5年生Aさん
宿泊行事が心配だった。漏らしちゃってヤベってなって罪悪感がハンパなかった。お母さんには相談できず、他の人にバラすかなって心配になって、言いたくなかった。
夜尿症が治り、めっちゃ嬉しく、やっと周りと同じになって解放された感じ。早く受診すると楽になれると伝えたい。(Aさん)
他の人にバレたくない気持ちが子どもにあったのが意外。おねしょしたことに対する罪悪感や恥ずかしさはないと思っていた。
夜尿症が治らないので、病院を受診。おねしょしたときに怒らなかったが、イライラしている雰囲気を子どもが感じとって、顔色をうかがうようになった。今振り返ると、朝の忙しさがあったものの、ゆとりをもって接してあげればよかったなと。(Aさん母)
「おねしょが治って、授業にも集中できるようになった」小学3年生Bさん
治療を始めて、おねしょの回数が減り、旅行とかお泊りも大丈夫だなと思えるようになった。授業中の先生の話も頭にすぐ入ってくるし、トイレを我慢している感覚もなくなった。病院に行ったら治るんだよと教えてあげたい。(Bさん)
おむつが外れなくて、年長の時に気になり始めた。最初はどこに相談して良いかわからなくて調べているうちに時間が経ってしまった。初めての子育てで誰に相談していいかわからなかった。おねしょについて怒ってはいけないとWEBに書いてあったので、責めないようにしていた。
おねしょが治ってから、子どもが寝る前に水分を摂っても不安なく寝られるようになった。(Bさん母)
体験談から夜尿症(おねしょ)が治ることで、精神的に安定し、生活の質が向上したのがわかります。
夜尿症はどう治療する?
医療機関の受診の目安や治療方法などを教えてもらいました。
生活習慣の見直しだけで1-2割は治る
大友先生:こちらにおねしょをしにくくなる生活習慣を示します。朝食と昼食はしっかり食べ、夕食後から寝るまでの時間を2時間程度は空けるようにしましょう。夕食後から寝るまでの時間が短いと、おねしょをしやすくなります。
医療機関受診の目安
大友先生:生活習慣の見直しに1-2ヶ月間取り組んでも成果が見られない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。医療機関受診の目安を示します。特に、おねしょに加え、昼間におもらしがある場合は、医療機関を受診してください。
夜尿症の主な治療は薬物療法とアラーム療法
大友先生:薬物療法は、尿量を調節する薬、膀胱の収縮を抑える薬、体調を整える薬が使われる治療法。年齢や症状などに応じて使い分けたりしたりします。
一方、アラーム療法は、本人に夜尿を気づかせ、睡眠中にためられる尿の量を増やし、夜尿をしにくくする治療法。パンツや専用パッドにセンサーが付いていて、夜尿をすると音や光、バイブレーションによるアラームが出ます。アラーム療法は、毎日実践する必要があるので、本人のモチベーションと家族の協力が不可欠になりますね。
夜尿症は、早期の治療で治癒率が高いという報告があります。
また、田村先生より夜尿症診療に詳しい医師・施設が掲載されたサイト(おねしょ卒業!プロジェクト)を紹介してもらいました。
おねしょで子どもを怒ったり自分を責めないで
最後にお二人の先生のメッセージをご紹介します。
大友先生:おねしょは、子どもの性格や家族の育て方とは関係ないです。おねしょしたときに、子どもを怒ったり自分を責めたりしないでください。約束が守れたりおねしょがなかった日はしっかりとほめ、成功体験で自信をつけさせましょう。
田村先生:親子で夜尿について正しい知識をもち、解決が難しかったら早めに医療機関を受診してください。これが子どもが安心して可能性や夢を広げるために、私たちができることです。
今回のお話を聞いて、おねしょは病気の可能性があり、親子ともに心理的負担が大きいことがわかりました。子どもたちの未来のために、周囲の大人が協力して解決を目指すのが大切ですね。世界夜尿症ウィークを機に夜尿症についてぜひ考えてみませんか?
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取材・文 峯あきら